こんなにそばにいるのに
第1話
作 LynX
今年もクリスマスが近くなってきた。
使徒との戦いが終わってから、もう1年以上が過ぎた。
街は少しずつ、かつてのにぎやかさを取り戻しつつある。
人間ってしぶといな。
そう思って苦笑する僕。
・・・あの最後の戦いの中、あきらめずに戦った僕。
そしてみんな。
よく生き残れたものだと今さら思う。実際、何人かは未だに
消息不明なのだ。・・・そう、父さんも。
でも僕はあんまり悲しくなかった。なぜだろう?
これがもしアスカだったら、僕は間違いなく、
気が狂っていただろう。
アスカは死ななかった。そして。
アスカは今、僕のそばにいる。
なんて言うとアスカの鉄拳がとんできそうだ。
正確には、「今も同じ家に住んでいる」だけなんだ。
もっとも、僕は「だけ」とは思っていないけど。
・・・っと、ヤバい、ヤバい。アスカに聞かれたら大変だ。
「何言ってんのよ、バカシンジ!」って、どんな仕打ちに
遭うかわかったもんじゃない。
戦いが終わってもアスカはドイツに帰る様子もなく、相変わらず
一緒に暮らすことになったんだ。
あ、もちろん、ミサトさんも一緒にいるけどね。
一緒に暮らせてうらやましい?甘いよ。
自分で言うのもなんだけど、きついよ・・・正直。
だってアスカ、食事も、洗濯も、掃除も、家事全般全部
僕にやらせるんだもの・・・。え?ミサトさん?言わなくても
わかるだろ。あの人は・・・(ガン!)・・・いて!・・・何だ?
・・・げ!エビチュの缶が・・・。
あ、ミ、ミサトさんは仕事が忙しいらしくて。あはは・・・。
ミサトさん、まだNERVに勤めてるんだ。と言ってもNERVは
今は国連の正式機関になったけど。いろんなやっかいごとの
整理ばっかりよ、ってミサトさんは言ってた。
話を戻して、こんなきつい状況でも身がもつのは、やっぱり、
「愛」の力かな。えへへ・・・。(ん?何か殺気が・・・?)
この一年の思い出っていうと・・・。
やっぱり去年のクリスマスかなぁ。
去年の12月24日。クリスマスプレゼント買いに行くわよ、
って言ってアスカに連れ出されたんだ。さんざんプレゼント
買わされてへとへとになって帰る途中、たまたまある公園の
前を通った。噴水がライトアップされていた。アスカはそれが
えらく気に入ったみたいでそこで一休みすることになった。
ライトアップの光の中で見るアスカは・・・その・・・とっても
綺麗だった。このころはまだ季節が戻っていなかったから
クリスマスって言っても暖かかった。普段の制服姿に
慣れていたせいかな。白のワンピース姿のアスカに
ドキッとしてしまった。
思わず僕はアスカを抱きしめ、そっと唇に唇を重ねた。もっと
抵抗されると思ったのに、なぜかアスカは抵抗しなかった。
ほんの数秒だったと思う。
唇を離すと何だか急に恥ずかしくなった。アスカもそう
だったんだろうか。そっと体を離しながらアスカは言った。
「来年もここに来られるといいわね。」って。
暗くてよく見えなかったけど、何だかアスカの顔、赤かった
ような・・・。でもなぁ。それっきりだしなぁ。
僕のこと、どう思ってるんだろう?聞きたいけど、聞いたら
「あんた、バカァ?」って言うんだろうなぁ・・・。
あれ、結構傷つくんだよなぁ。でも口じゃかなわないし・・・。
それに手も出てきそうだし・・・。
アスカ 「・・・ちょっと、バカシンジ?」
シンジ 「・・・え!ア、アスカ、いたの?」
アスカ 「今通りかかったら何かブツブツ言ってるから。
・・・って何よ?いちゃ悪いことでもあるの?」
シンジ 「い、いや・・・、そういうわけじゃ・・・。あ、アスカ、
僕、買い物に行かなくちゃいけないから。じ、じゃぁ。」
アスカ 「あ、ちょ、ちょっと!待ちなさいよバカシンジ!こら!」
・・・まったく。すぐ逃げるんだから。何言ってたのかしら。どうせ
また私の悪口でしょうけど。
・・・はぁ。何であんな奴のこと、好きになったのかしら。おまけに
鈍いから気づいてないんでしょうね。ホント、バカよね、シンジって。
こんな絶世の美女が好きになってあげてるっていうのに。ねぇ。
・・・ん?ちょっと!誰よ、今うなずいた奴は!出てきなさい!
よりによってアタシのシンジをバカですって?
その根性、アタシが叩き直してあげるわ!
え?アタシが言ったって?・・・これは言葉のアヤってやつよ。
日本でも言うじゃない。
「蓼(たで)食う虫も好き好き」って。(・・・違うぞ、全然。)
な、なによ、今のツッコミは。と、ともかく、シンジにバカって
言えるのはこのアタシだけ。分かった?
ああ見えてもね、シンジってとっても頼りになるのよ。
最後の戦いの時だって、アタシをずっと支えてくれてた。
あの頃からかしら。アタシが、シンジのこと好きだって
気づいたのは。
いざという時は頼りになって、普段は優しくて、料理は上手。
これ以上の男がいたら見てみたいもんだわ。
こんなに好きなんだから、たまに(『たまに』?)いじめるのも
ありよね。
そういえばもうすぐクリスマスよね・・・。(何か話題が急に・・・。)
去年のクリスマスはよかったわ。あの日のシンジは何だか
強気だったわね・・・。「一緒にプレゼントを買いに行こうか。」
なんて言ってくれたし。(あれ?)帰りには公園でせまって
くるし。そしてあの唇の感触・・・。フフフ。
でも、ちょっと短かったわね・・・。もうちょっと情熱的に・・・
こう・・・舌を・・・・・・ゴホン。
はぁ。今年のクリスマスもあの場所で・・・。今度は「好き」
って言ってくれるかしら?まだシンジに「好き」って言って
もらったことはないのよ。
え?嫌いかもしれないだろう、ですって?ちょっと!
何言ってるのよ!相手はこのアタシなのよ!
嫌いなはずないじゃない!そうよ。嫌いじゃないはずよ。
でも・・・好き・・・なのかなぁ・・・。
ねえ、シンジ・・・、好きって言って。
私は大好きよ、シンジ・・・。
シンジ 「アスカ、誰に向かって話してるのかな・・・。
なんだか・・・怖い。」
・・・そうやって物陰からこっそり見てるお前も怖いぞ。
つづく・・・。
<筆者から>
はじめまして。LynXと申します。第1話、いかがでしたか?
映画の終わり方とはやや違う終わり方をした上での、その続き
なので、映画を観ていない方も楽しめることでしょう。
何よりも僕が観てないですから。(笑)
アスカ様、素直にならないとだめですよ。
アスカ様はきっと「何でアタシがシンジなんかと!」と
おっしゃるでしょうが、話が進むとそんなことは言えなくなると
思いますよ。(穏やかな笑い)
それにしてもアスカ様、「へっぽこ」ですねぇ・・・。
・・・と。これ以上言うと命の保証がない・・・。
に〜げよ。
それでは、今回は失礼します。
ご感想をお待ちしております。
LynXさん、本当にありがとうございました!!
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