こんなにそばにいるのに
第3話
作 LynX
ミサト 「アスカ〜、いいかげんに起きなさ〜い。」
アスカ 「う・・・ん。今何時ぃ?」
ミサト 「もう12時よ。昼ごはんできてるわよ。」
アスカ 「え・・・ごはん・・・?え!ごはん?
ミ、ミサトがつくったの?」
ミサト 「アスカ・・・どういう意味かしら?」
アスカ 「え・・・いや・・・。」
ミサト 「まあ、いいわ。ごはんはシンちゃんが作って行ったわ。。」
アスカ 「作って・・・行った?」
ミサト 「ええ。朝ごはんのあとすぐに。シンちゃんが起こさないで
おいてくれって言ったから起こさなかったのよ、アスカ。」
アスカ 「・・・そう。」
ミサト 「昨日何かあったの?シンちゃんもあまり寝てなかったみたい
だったし。」
アスカ 「何でも・・・ないわ。」
ミサト 「・・・そう。なら何も聞かないわ。とにかく起きて。
私、もう出かけるから。」
アスカ 「・・・わかったわ。」
ミサト 「あ、私、明日の夜まで帰れないと思うから。
シンちゃんにも言っておいてね。」
アスカ 「・・・うん。」
ミサト 「アスカ。」
アスカ 「な、なによ。」
ミサト 「仲なおりするのよ。」
アスカ 「な、なに言ってんのよ!」
ミサト 「がんばりなさいよ。じゃ、行ってくるわね。」
アスカ 「いってらっしゃい・・・。」
何が「がんばりなさいよ」よ。わかったようなこと言って。
もう・・・遅いのよ・・・。
シンジ・・・。どこに行ったのかしら・・・。
あの娘と・・・デートかしら・・・。
考えるのはやめよう。自分が嫌になるだけ。
シンジが作ったごはん・・・おいしい。
特にこの卵焼きなんて最高だわ・・・。
さすがシンジ・・・さすがよ・・・。
なんで涙が出てくるのよ・・・。
シンジのこと考えると・・・。シンジ・・・大好きなのに。
どうして・・・どうして「好き」って言えないの?
アタシってバカだな・・・世界一のバカだわ。
ご飯を食べて。
何をするわけでもない。ただソファに座ってテレビを見るだけ。
でも何を見てるのかわからない。
・・・何してるのかしら、アタシ。
プルルルルルル
電話だ。シンジかしら。
出る気はあまり起こらないけど・・・出るしかないわね。
アスカ 「はい、もしもし。」
ヒカリ 「あ、アスカ?わたし。ヒカリ。」
アスカ 「なんだ。どうしたのよ。」
ヒカリ 「なんだとはごあいさつね。碇くんかと思った?」
アスカ 「な、何でアイツが・・・ってどうしてアイツが
家にいないこと知ってんのよ?」
ヒカリ 「え?だってさっきデパートで会ったもの。
そういえば碇くん元気なかったわね。喧嘩でもしたの?
だめよ、仲直りしなくちゃ。。」
アスカ 「な・・・何言ってんのよ!」
ヒカリ 「あ、それで、明日なんだけど、ヒマ・・・じゃないわよね。」
アスカ 「なんで決めつけるのよ。なによ?」
ヒカリ 「いや・・・明日うちでホームパーティーやるんだけど
来ないかなって思って・・・。でも来ないわよね。」
アスカ 「だからなんで決めつけるのよ。来てほしくないわけ?」
ヒカリ 「そんなわけないじゃない!でも碇くんが何か用事があるって
言ってたから・・・。」
アスカ 「シンジが?・・・アタシは予定はないわよ。第一、トウジと
ケンスケも呼ぶんでしょ?アタシがいないと困るのは
ヒカリじゃないの?」
ヒカリ 「う・・・まあ、その・・・。」
アスカ 「図星みたいね。いいわ、アタシ行くから。」
ヒカリ 「ごめんね、アスカ。でも今日の夜にでも予定ができたら
断りの電話を入れてくれればいいから。」
アスカ 「いったい何の予定ができるっていうのよ!
何なら今すぐ断ってもいいのよ?」
ヒカリ 「それは・・・その・・・困る。」
アスカ 「素直でよろしい。何時に行けばいいの?」
ヒカリ 「お昼頃に来てくれればいいわ。どうせあいつらは
いつも通り遅刻でしょうし。」
アスカ 「わかったわ。じゃあ明日。」
ヒカリ 「うん。本当に悪いわね。」
アスカ 「だからぁ。そんなこと言ってると行かないわよ。」
ヒカリ 「あっ、ごめんなさぁい、アスカ様ぁ〜。」
アスカ 「うふふ。じゃあ明日。」
ヒカリ 「うん、明日。じゃあね。」
ガチャ。
ふう。クリスマス、か・・・。
シンジの用事って何かしら。やっぱりあの娘と・・・。
ああもう!考えるのはやめ!
シンジはシンジ、アタシはアタシよ。
そう、シンジはシンジの好きなように・・・。
シンジ・・・。
シンジ 「アスカ、ごはんできたよ。」
アスカ 「わかった。」
シンジが帰ってきたのは夕方だった。ミサトが帰らないことを言ったら
「そう。」と一言だけ言った。
シンジが作った夕食を前にアタシ達は向かい合って座った。
・・・会話が一言もない。食器の音がときどきするだけ。
そういえばシンジの顔が少し赤いような・・・。
アスカ 「シンジ・・・何だか顔が赤いけど・・・。」
シンジ 「そ・そう?」
アスカ 「熱でもあるんじゃないの?」
シンジ 「き、気のせいだよ、たぶん。」
アスカ 「そうね。バカは風邪ひかないもんね。」
シンジ 「アスカ・・・。」
アスカ 「なによ・・・。」
シンジ 「明日のパーティー、行くの?」
アスカ 「なんであんたがそのこと知ってんのよ。」
シンジ 「いや・・・洞木さんに会ったから・・・。」
アスカ 「どこで会ったの?」
シンジ 「いや・・・あ、道でたまたま。」
アスカ 「そう。」
シンジのバカ。どうしてウソつくのよ。
・・・あの娘と一緒にいたのかも。
そんな・・・シンジ・・・。
シンジ 「それで明日だけど・・・。」
アスカ 「行くわよ。何か文句あんの?」
シンジ 「い、いや・・・。」
アスカ 「あ、アンタは行かないんだったわね。あの娘とデート?」
シンジ 「ち、違うよ、アスカ。僕は・・・。」
アスカ 「アタシのことなら気にしなくていいわよ。
ヒカリ達と楽しく過ごすから。それとも何?
アタシにいてほしいとか?」
シンジ 「い、いや、僕は・・・。」
アスカ 「なによ、違うんならいったいなんなのよ!」
シンジ 「僕は・・・。」
アスカ 「まったく、男のくせにウジウジと。だから嫌なのよ、
シンジは。だいたいアンタは・・・。」
バン!
アスカ 「なによ・・・。テーブルたたいて。お味噌汁が
こぼれるでしょ。」
シンジ 「アスカ。」
アスカ 「な、なによ。」
シンジ 「・・・いや、なんでもない。・・・気分が悪いから
部屋に戻らせてもらうよ。」
アスカ 「ちょ、ちょっと。待ちなさいよ。」
シンジ 「後かたづけなら後でちゃんとやるよ。流しに
置いといてくれればいいから。」
そう言ってシンジは部屋に戻ってしまった。
アタシってどうしてあんなことしか言えないんだろ。
シンジのこと、大好きなのに・・・。
シンジ、ごめんなさい。
この一言が言えたら・・・。
シンジ、いったい何を言いたかったんだろう。
この後アタシとシンジは一言も話さなかった。
シンジはずっと部屋の中。
アタシはシャワーを浴びて自分の部屋へ。
シンジのことが気になったが声をかける勇気もない。
明かりを消して、寝ることにした。
静かだ。やけに静かだ。
時々シンジが咳をするのが聞こえた。
大丈夫かな・・・?
そんなことを考えているうちに眠ってしまったらしい。
リリリリリリリリ
翌朝アタシは目覚ましに起こされた。朝の10時。
昨日のシンジとの会話がよみがえる。
仲直りしよう。せっかくのクリスマスだし。
そう、ちょっと素直になればいいだけ。
決心してふすまを開けた。
が、人の気配がない。
「シンジ・・・?」
テーブルの上に書き置きがあった。
「アスカへ 食事の用意をしておきました。」
シンジ・・・出かけたのか。アタシを置いて。
そうよね・・・アタシはシンジの彼女でもなんでもないし。
・・・アタシも出かけなくちゃ。
シャワーを浴びて朝ごはん。
シンジの作るごはんは相変わらずおいしい。
でも・・・一人で食べるごはんはおいしくない。
シンジはいらないなんて言っておいて、いなくなって
一番困るのはアタシ自身。
アタシは苦笑した。
着替えをする。
今日は長袖の白いワンピース。首のところに赤いリボン。
これを着るのは今日が初めて。
ホントは・・・ホントはシンジに見てもらいたかった。
これを着てデートしたかった。
「かわいいね。」って言ってもらいたかった。
でも・・・シンジは・・・。
赤いコートを着て鏡の前に立つ。
セカンドインパクト前のサンタクロースみたい。
時計を見ると11時30分を過ぎていた。
そろそろ出かけよう。
出る前にシンジの部屋の前に立った。
「シンジ・・・。」
呼んでみても返事はない。
アタシは家を出た。
ピンポーン
アスカ 「メリークリスマス、ヒカリ。」
ヒカリ 「あ、アスカ。メリークリスマス。
あいつらまだ来てないのよ。さ、あがって。」
アスカ 「おじゃましま〜す。」
ヒカリ 「あれ?碇くんは一緒じゃないの?」
アスカ 「な、なんでアイツと一緒じゃなくちゃ
なんないのよ!」
ヒカリ 「アスカ、まだ喧嘩してるの?だめよ。
クリスマスぐらい素直にならなくちゃ。」
アスカ 「だからそんなんじゃないってば。
アイツなんて・・・どうでも・・・いいのよ。」
シンジとあの娘が一緒にいる姿を想像してしまった。
ヤバ・・・涙が出そう・・・。
ヒカリ 「そう・・・。でも、『どうでもいい』なんて
言っちゃだめ。アスカにとって碇くんはその程度の
人じゃないでしょう?」
アスカ 「うん・・・。」
ヒカリ 「だったらその気持ちを素直に伝えるのよ。
これで帰ったら仲直りできるわね。」
アスカ 「うん・・・ありがと、ヒカリ。」
ヒカリ 「別にいいのよ。さ、早く奥に入って。
ごちそういっぱい作ったのよ。」
アスカ 「うん・・・。」
ヒカリ 「ほら、元気出して。『薄幸の美少女』はアスカには
似合わないわよ。」
アスカ 「うん・・・ん?ちょっとヒカリ、アタシのような
美少女は何をしてても様になるって相場が
決まってんのよ!」
ヒカリ 「はぁ。やっと元気になったわね。よかったわ。」
アスカ 「ちょっと、何笑ってんのよ!」
ヒカリ 「はいはい、よかったわね。」
アスカ 「ちょっと、ヒカリ!」
ピンポーン
ヒカリ 「はぁい!ほらほらアスカ、奥に入って。
遅刻常習犯がやっと来たみたいだから。」
アスカ 「くっ・・・逃げたわね。」
トウジ&ケンスケ 「「メリークリスマス!!」」
パパパーン!!!
ヒカリ 「キャ!・・・ってす・ず・は・らぁ〜!
おどかさないでよ!」
トウジ 「まあまあ、いいんちょ。クリスマスやさかい
大目に見といてや。」
ヒカリ 「それに!お・そ・い!」
トウジ 「ま、まあ、それもクリスマスやさかいに・・・。」
ケンスケ 「言い訳になってないぞ、トウジ・・・。」
アスカ 「アンタ達は遅刻常習犯だもんね。ヒカリ、そんなの
ほっといてごちそういただきましょ。」
トウジ 「なに、ごちそうやと?そら大変や。ほな、いいんちょ、
おじゃまするわ。」
ケンスケ 「おじゃましま〜す。」
ヒカリ 「もう。しょうがないわね。」
メリ〜クリスマ〜ス!!!!
トウジ 「いや〜、こらホンマうまいわあ。これみんないいんちょーが
作ったんか?」
ヒカリ 「そ、そうだけど・・・。」
トウジ 「いや〜、ごっつーうまいわ。いいんちょーはいい嫁はんに
なるやろなぁ。」
ヒカリ 「あ、ありがと・・・。」
ヒカリ・・・顔が真っ赤よ・・・。
まったくアイツは鈍いわね。自分で何言ってるか分かってんのかしら。
鈍いと言えば・・・シンジ・・・
今頃何してるのかな・・・。
ケンスケ 「ホント、おいしいね。まったくシンジも
もったいないことするよなぁ。」
トウジ 「ホンマや。こんなうまいもんより大事な用事ちゅうのは
いったい何やねん。」
アスカ 「え・・・?」
ヒカリ 「鈴原、それ、どういうこと?」
トウジ 「な、なんや、いいんちょ。急に・・・。」
ヒカリ 「碇くんに会ったの?」
トウジ 「ここに来る途中に会うたんやけど・・・どないしたんや?」
ケンスケ 「パーティーのこと聞いたら『大事な用事があるから』って
言ってたんだよ。な、なぁ、トウジ。」
ヒカリ 「へ、へぇ。と、ところでさあ、アスカ。」
アスカ 「鈴原!」
トウジ 「な、なんや?」
アスカ 「シンジ・・・その・・・一人・・・だった?」
ケンスケ 「あ、も、もちろん一人だったよ。なぁ、トウジ。」
トウジ 「何言うとんねん、何やかわいらしい子と一緒におったやろ。
ああ、『大事な用事』ちゅうんはそれか。
ええの〜。わしも・・・。」
ヒカリ 「鈴原!!」
ケンスケ 「トウジ!!」
トウジ 「な、なんやねん・・・。」
ヒカリ 「ア、アスカ?」
アスカ 「・・・ごめん、ヒカリ。アタシ・・・帰る。」
ヒカリ 「アスカ・・・。」
アスカ 「ごめんね・・・。それじゃ。」
・・・・・・
ヒカリ&ケンスケ 「鈴原(トウジ)のバカ!!!」
アタシは走った。涙で前がぼやけて何度もつまづいた。
でも走らずにはいられなかった。
苦しい。息が苦しい。でも。心はもっと苦しい・・・。
シンジが・・・シンジが・・・あの娘と・・・。
イヤ、イヤ、イヤ!
シンジ・・・私を置いていかないで。
シンジ・・・私を捨てないで。
シンジ・・・シンジ・・・。
大好きなシンジ・・・!
あたしは泣いていた。
部屋のベッドの上で。
泣いて。泣いて。涙が出なくなっても。
アタシはずっと泣き続けていた。
「ただいまぁ」
ん・・・?アタシ、いつの間にか眠ってたみたい。
誰・・・?シンジが・・・帰ってきたのかしら?
どんな顔して会えばいいの・・・?
「ただいまぁ。って、あら?真っ暗じゃない。
シンちゃん?アスカ?いないの〜?」
なんだ、ミサトか・・・。ほっとしたような、悲しいような・・・。
外は真っ暗になってる。今何時なのかしら。
・・・う・・・さ、さむ・・・。
クシュン!
ミサト 「あら?アスカ?いるの?入るわよ?」
アスカ 「(グズッ)ちょ、ちょっと待って!」
ミサト 「ん?なによ、明かりもつけないで。・・・シンちゃんは?
アスカと一緒じゃ・・・なさそうね、その顔じゃ。」
アスカ 「え・・・ど、どうなってるの?」
ミサト 「目は真っ赤で、腫れてて、顔には涙の跡と枕の跡。
髪型も乱れてて、おまけにせっかくのかわいい服は
しわだらけ。それ見りゃ誰だってわかるわよ。」
アスカ 「そう・・・。」
ミサト 「シンちゃんはまだ帰ってないみたいね。
何してるのかしら。もう10時だっていうのに。」
アスカ 「え・・・10時?」
ミサト 「そうよ。・・・アスカ、ひょっとして夕食は?」
アスカ 「食べて・・・ないわ。」
ミサト 「そう。じゃあ少し遅いけどごはん食べましょうか。」
アスカ 「うん・・・。」
ミサト 「それと、さっきくしゃみしてたわね。だめよ、
そんな薄着じゃ。今夜は一段と冷えるわよ。
雪も降ってきたから。」
アスカ 「うん・・・え・・・!雪?」
ミサト 「ええ。1時間くらい前から。ホワイトクリスマスなんて
何年ぶりかしら。」
アスカ 「・・・・・・。」
ミサト 「ほらほら、そこにあるコートを羽織るだけでもいいから。
それ着てこっちに来なさい。今暖房つけるから。」
アスカ 「うん・・・ありがと・・・。」
ミサト 「何言ってんの、アスカらしくもない。
シンちゃんの作ったのの残りがあるみたいだから、それを
あっためて食べましょ。」
アスカ 「うん・・・。」
ミサト 「それにしてもシンちゃん遅いわねえ。ケーキも
買ってきたのに。ま、とにかくごはんよ。アスカ。」
アスカ 「うん・・・。」
・・・・・・
ミサト 「ほんっと、シンちゃん遅いわねぇ。もう11時なのに。
携帯にも出ないし。何してるのかしら。」
アスカ 「アタシ・・・もう・・・寝る・・・。」
ミサト 「だめよ、アスカ。せっかくのクリスマスなのよ。
家族で過ごさないと。」
アスカ 「でも・・・。」
ミサト 「アスカ。私ね、家族でクリスマスを迎えたことがないの。
どんなプレゼントを貰ってもちっともうれしくなかったわ。
一人きりのクリスマス。私はクリスマスが嫌いだったわ。
あなたたちにはそんな想いはしてほしくないの。だから
今日は何としてでも・・・。」
アスカ 「ミサト・・・。」
ミサト 「それに、あなたたちの仲直りも見たいし。」
アスカ 「ミサト・・・ひょっとしてそれが狙いなんじゃ・・・。」
ミサト 「(ギクッ!)や、やあねえ。そんなことないわよぉ・・・。」
アスカ 「本当かしら。怪しいもんだわ・・・。」
プルルルル
ミサト 「あ、電話だわ。きっとシンちゃんね。まったくもう・・・。」
アスカ 「逃げたわね・・・。」
ミサト 『はい、葛城です。・・・はい・・・・・・そうですが・・・
はい・・・・・・わかりました。少々お待ち下さい。』
「アスカ、小田さんから電話よ。」
アスカ 「は?誰それ?」
ミサト 「知らないわよ。後輩の子みたいよ。とにかくかわって。」
アスカ 「わかったわ・・・。」
アスカ 「もしもし、お電話かわりました。」
ルミ 「あ、もしもし。夜分遅くすみません。はじめまして。
私、小田ルミっていいます。」
アスカ 「はあ?」
ルミ 「あ、すみません、惣流先輩。え〜と、私、碇先輩に
告白した者です。」
アスカ 「え!ア、アンタが?・・・で、何の用?」
ルミ 「え?碇先輩から聞いておられませんか、やっぱり。」
アスカ 「なによ、やっぱりって。第一、アイツはまだ
帰ってきてないわよ。」
ルミ 「あれ?おかしいなあ、あれは確かお昼すぎだし・・・。」
アスカ 「ちょっと、どういうことよ。」
ルミ 「あ、すみません。えっと・・・私・・・ふられたんです。」
アスカ 「は?」
ルミ 「私、今日、碇先輩と強引に約束して連れ出したんです。
クリスマスに乗じて・・・あわよくば・・・って。
でも、ダメでした。碇先輩、『やっぱり僕はキミとは
付き合えない。僕はアスカが好きなんだ』って。」
アスカ 「・・・・・・。」
ルミ 「で、碇先輩、泣き出すんですよ。『ごめん』って
言いながら・・・。泣きたいのは・・・私なのに・・・。」
アスカ 「アンタ・・・。」
ルミ 「す、すみません。こんなこと言うつもりじゃ・・・。
ただ・・・碇先輩を・・・お願いします・・・。
私じゃ・・・ダメ・・・みたいで・・・す・・・。」
アスカ 「・・・・・・。」
ルミ 「すみません。これだけ、これだけ話したかったんです。
それじゃ・・・どうか・・・お幸せに。」
カチャ ツーツーツー
ミサト 「何の話だったの?」
アスカ 「ん・・・別に・・・何でもないわ。」
何だかほっとした。あの娘には悪いけど。
全部アタシの勘違いだった。
シンジは優しいから。きっと断るのにも苦労したんだろう。
そうか・・・あたしのこと・・・好き・・・なのか。
ミサト 「アスカ・・・何ニヤニヤしてるの?」
アスカ 「へ?ななな何でもないわよ!」
ミサト 「ははーん。これはシンちゃんがらみね。」
アスカ 「ななな何でアタシがアイツなんか・・・。」
ミサト 「はいはい、うらやましいこと。それにしても
シンちゃん遅いわねぇ。もうすぐ0時よ。」
アスカ 「ま、まったく、どこほっつき歩いてるのかしら。」
ミサト 「アスカ、心当たりはないの?」
アスカ 「あるはずないでしょ、そんなの。あったら・・・。」
ミサト 「ん?どしたの、アスカ?」
アスカ 「そこ・・・。」
アタシはテレビの画面を指した。
クリスマスの中継と称した番組で映っているのは・・・。
そう、あの噴水。
ライトアップされた噴水は雪の中で神秘的に見えた。
カップルらしき姿がちらほら。そしてあれは・・・?
アスカ 「ミサト、車出せる?」
ミサト 「何、急に?出せなくはないけど雪が積もっている上に
タイヤはノーマル・・・。」
アスカ 「どうでもいいわ!早く!この噴水まで!」
ミサト 「・・・わかったわ。ちゃんとあったかい格好しなさい。」
ブロロロ〜!!
いつもなら死の恐怖と戦っているはずのミサトの運転(雪で滑って
さらに怖いはず。)なのに、今はなんでもない。
それどころかもっと速くならないのかと思う。
アタシはバカだ。シンジはアタシを信じて、1年前のアタシの言葉を
忘れないで、あたしを待っていてくれた。
なのに、アタシは・・・アタシは・・・。
アタシはシンジが好き。誰よりも好き。
アタシは素直じゃなかった。拒まれるのが怖かった。
アタシは臆病だった・・・。
シンジ・・・。
ミサト 「着いたわ、アスカ。」
5分ぐらいだったろうか。それでもアタシには長く感じられた。
ミサト 「ここからは、アスカ、がんばるのよ。」
アタシはうなずいて噴水に向かって歩いていった。
噴水の縁にうつむいて腰かけている少年。
近づくにつれわかってくる。
いいえ、どんなに離れていてもアタシにはわかる。
アタシの大好きな人・・・シンジ。
いつからいたのだろう?肩や頭に雪が積もっている。
シンジ・・・シンジ・・・。
距離が少しずつ縮まり、ついに、シンジの前まで来た。
「シンジ・・・。」
名前を呼んでみる。愛しい人。
でも彼はうつむいたまま。
もう一歩近づく。
「シンジ・・・。」
少し大きな声で。
でもまだうつむいたまま。
気づかないのかしら。おかしいわね。
よーし。じゃあ・・・。
アタシはシンジに近づき、シンジの肩の雪を払い、そのまま
肩に手を置いてシンジの頬に唇を近づけていった。
ゆっくりと。
顔が火照ってくる。
あと数センチ。
と、その時。
アタシの視界から。アタシの手から。
シンジがいなくなった。
少なくともアタシはそう感じた。
ドサッ
何が起こったのか一瞬わからなかった。
シンジが・・・雪の上に・・・倒れていた。
「シンジィ〜〜!!!!!」
どこかで0時を告げる鐘が鳴った。
つづく
(筆者より)
第3話、いかがでしたか?LynXです。
好きなのにすれ違っている2人。
二人の気持ちが通じ合うときが来るのでしょうか。
このお話はまだまだ続きます。
感想をお待ちしております。
LynXさん、本当にありがとうございました!!
Lynxさんへの感想メールを!
Hisashi.Nakamura@ma3.seikyou.ne.jp
までお願いします。