こんなにそばにいるのに
第5話
作 LynX
ミサト 「アスカ、今日も?」
アスカ 「当たり前じゃない。」
ミサト 「アスカ、自分の体にも気を遣わないと。」
アスカ 「わかってるわ。」
ミサト 「何だったら私が替わるわよ?」
アスカ 「大丈夫だってば!自分の体のことぐらい分かるわよ。
それにアタシが好きでやってるんだから。」
ミサト 「ふ〜ん。つまり愛しのシンジにはさわらせないわよ!
ということね。」
アスカ 「どどど、どうしてそういうことになるのよ!」
ミサト 「あ〜ら、だってアスカは『好きで』毎日シンちゃんに
会いに行ってるんでしょ?」
アスカ 「なっ、だ、第一シンジの意識はまだ戻ってないじゃない。
会いに行くも何も・・・。」
ミサト 「と言ってこんな朝早くから準備してるのは誰かしらぁ?」
アスカ 「う、うるさいわね。あ、もうこんな時間。行かなきゃ。」
ミサト 「ちょっとアスカ、面会時間はまだ・・・。」
アスカ 「いいのよ、向こうで待ってるから。」
ミサト 「・・・はいはい。気をつけて行ってらっしゃい。私も
後で行くから。」
アスカ 「じゃ、いってきます。」
ミサトの言うとおり、面会時間まではだいぶある。
面会は午前8時から。今はまだ7時にもなっていない。
ゆっくり歩いても間に合うのについつい早足になる。
1分でも1秒でもはやくシンジの顔が見たい。
もう意識が戻っているかもしれない・・・。
アタシは意識的に歩く速度を落とす。
早く着いても中に入れてもらえないし。(リツコめ・・・。)
そういえばもう何日目だろう・・・。
シンジが集中治療室から出たのは以外に早かった。
入院して3日目には個室に移された。
リツコの話では、もう命の危険はないらしい。
アタシはホッとした。
「死なせない」なんて言ったけどやっぱり不安だった。
意識はまだ戻らないけど、アタシは毎日シンジに会いに行っている。
面会時間いっぱい。
シンジが目覚めたとき、そばにいたいから。
誰よりも先にアタシを見てほしいから。
そんなことを考えていたらやっぱり早足になっていたらしい。
まだ7時30分にもなっていない。
いつもどおり、当直の看護婦さんに挨拶する。
アスカ 「おはようございます!」
看護婦 「あら、アスカちゃん、今日も早いのね。」
アスカ 「日課みたいなもんですから。」
看護婦 「うふふ。シンジ君うらやましいわねぇ。」
アスカ 「い、いえ、そんな・・・。」
看護婦 「そうそう、アスカちゃん明日からは学校でしょ?
だから、今日は特別。時間まだだけど病室に
行ってもいいわよ。」
アスカ 「え?本当ですか?」
看護婦 「ええ。赤木先生には内緒よ。それと、
他の患者さんの迷惑にならないようにね。」
アスカ 「ありがとうございます!それじゃ。」
看護婦 「あ、廊下は走っちゃダメよ!」
アスカ 「は〜い。」
看護婦 「いいわねえ。若いって。」
そうか、明日からはもう学校か。
シンジ・・・結局冬休み中意識が戻らない。
シンジのいない冬休みは寂しかった。
お正月も「おめでとう」なんてとても言えなかった。
シンジ・・・早く戻ってきて。
早く・・・シンジと話したいよ。
コンコン
ドアをノックする。
返事が返ってくることを期待して。
もちろん、シンジの返事を。
だが・・・やっぱり返事はない。
ドアの横のボタンを押してドアを開ける。
中でシンジは眠っていた。
アタシは近寄ってしばらくシンジの顔を眺めた後、
いつものようにシンジのベッドの横のイスに座った。
ずっとシンジのそばにいる。
それが今のアタシの全て。
今朝ミサトが言っていたようなことは
ヒカリやリツコにも言われた。
でも、これだけはゆずれない。
ヒカリや三バカの2人は何度もお見舞いに来てくれた。
事情もだいたいは話した。
3人とも責任を感じているみたいだったけど、
気にしないように言っておいた。
今回のことは全てアタシが悪いんだから。
シンジを信じてあげられなかったアタシが。
午後からはその3人やミサト、加持さんが来てくれて
病室はにぎやかになった。
いろんな人がシンジを待っている。
早く起きて、シンジ・・・。
でも、結局その日もシンジは起きてくれなかった。
アスカ 「いってきま〜す。」
ミサト 「気をつけてねぇ。」
学校なんて本当は行きたくない。
病院に行ってシンジのそばにいたい。
でも、ミサトがそれを許してくれなかった。
今日は始業式で午前で終わるから、終わったら行こう。
退屈な始業式が終わり、教室に戻る途中、携帯が鳴った。
アスカ 「もしもし?」
ミサト 「あ、アスカ?早く、病院に行くわよ。シンちゃん
起きたって。」
アスカ 「え?ホント?今すぐ行くわ!」
ミサト 「私も今から家を出るんだけど、アスカ、
どうする?学校は?」
アスカ 「そんなものどうだっていいわ。アタシも
今すぐ学校から出て直接行くわ。」
ミサト 「そう。じゃあ後で。」
ピッ
ヒカリ 「何だったの?」
アスカ 「シンジが起きたのよ。すぐ行くから先生に
よろしくね。」
ヒカリ 「だめよ。」
アスカ 「そ、そんなぁ。」
ヒカリ 「誰か他の人に言わないと。私も行くから。」
アスカ 「さっすが、ヒカリ。」
トウジ 「わしらも行くで。」
ケンスケ 「当然だよ。な、委員長。」
ヒカリ 「まあ、この場合は仕方ないわね。行きましょうか。」
アスカ 「早く早く!」
ヒカリ 「はいはい。」
ハアハアハアハア
ヒカリ 「ま、待ってよー、アスカ。」
アスカ 「遅いわよー。先に行くわよー。」
トウジ 「な、何も全速力で走らんでも・・・。」
ケンスケ 「し、仕方ないよ。感動の(ハアハア)再会だし。」
トウジ 「せやな・・・。」
アスカ 「は・や・く〜!」
ヒカリ 「はいはい・・・。」
コンコン
シンジ 「はい・・・。」
シュー
病室には既にリツコとミサトがいた。
くっ、シンジが目覚めて最初に見るのはアタシ
だったはずなのに。
まあいいわ。シンジが目覚めたから。
でもリツコとミサト、アタシの顔を見たとたんに
表情を変えた。なんだろう?
アタシ達と入れ違いに病室を出ていったとき、
リツコが「しっかりね。」って言った。
なんだろう?茶化してるわけではなさそうだった。
トウジ 「センセ!久しぶりやなあ。」
ケンスケ 「シンジ、よかったな。元気になって。」
ヒカリ 「碇くん、よかったわね。」
シンジ 「トウジにケンスケに洞木さん。ありがとう。」
トウジ 「ホンマよかったわ。冬休み中寝とったからのう。」
ケンスケ 「本当だよ。シンジ、これから宿題地獄があるぞ。」
トウジ 「ま、わしもやがな。」
ケンスケ 「おいおい、トウジは入院してないだろ?」
トウジ 「ま、ええやんけ。センセ、一緒にがんばろや。」
シンジ 「ありがとう、トウジ。」
ヒカリ 「ほらほら、あんたたち。」
トウジ 「な、なんや、いいんちょー?」
ヒカリ 「お邪魔でしょ。出るの。」
トウジ 「へ?」
ケンスケ 「なるほどね。」
トウジ 「あ、感動のご対面ちゅーやつか。」
ヒカリ 「は・や・く!」
トウジ 「はい・・・。」
アタシはずっとシンジを見つめていた。
あまりにもうれしくて。
何と言っていいか分からなかった。
ヒカリが気を利かせてくれなければいつまでも
シンジに見とれていたに違いない。
今、この部屋にはシンジとアタシの2人きり。
心臓が高鳴る・・・。
な、何か言わなくちゃ・・・。
アスカ 「あ・・・。」
シンジ 「あのう・・・いいですか?」
アスカ 「な、何?」
シンジ 「あのう・・・失礼ですがどなたですか?」
アスカ 「・・・・・・・・・・・え?」
シンジ 「すみません。こんなかわいい知り合いの子が
いたの、覚えてなくて・・・。あの・・・?」
頭の中がグルグル回っている。
冗談じゃないことぐらいアタシには分かる。
そんな・・・リツコの言ってたのってこのこと?
そんな・・・そんな・・・。
アタシは出てくる涙を抑えられなかった。
シンジ 「あ、あの・・・あっ。」
アタシは病室から出た。
そのままヒカリ達に見向きもしないで出口へ向かった。
涙はとめどなく出てくる。
ヒカリ 「碇くん、いったいアスカに何を!あ、アスカ!」
ミサト 「アスカの方は私が行くわ。シンジ君を・・・
お願い。」
ヒカリ 「え・・・。」
リツコ 「あなた達には私から説明するわ。シンジ君にもね。
ミサト、後でアスカも連れてきて。」
ミサト 「ええ、わかったわ。」
アタシは病院の外へ出た。
ここまで走ってきたせいか、走る力がもうない。
アタシはよろよろと病院の中庭の方へ歩いていった。
ベンチに座って手で顔を覆う。
シンジ・・・アタシのこと・・・覚えて・・・ない。
アタシのことだけ・・・。
アスカ 「うっ、うっ、うっ・・・。」
我慢しても止まらない。
隣に人が座る気配がした。ミサトだ。
アスカ 「ミ、ミサト・・・。」
ミサト 「アスカ・・・ごめんなさい。」
アスカ 「ミサト・・・?」
ミサト 「私、保護者面して結局何もできなかったわ。
アスカもシンジ君も傷つけて。」
アスカ 「ミサト・・・。」
ミサト 「あなた達は強いわ。私なんかよりも。
私だったらとっくに逃げてた・・・。」
アスカ 「・・・・・・。」
ミサト 「アスカ・・・シンジ君のこと、好き?」
アスカ 「うん・・・。」
ミサト 「そう。それなら大丈夫よ。きっと。
シンちゃんを信じてあげるのよ。今は
記憶がないかもしれないけど、いつか・・・。」
アスカ 「大丈夫よ。アタシ、シンジのこと、大好きだから。」
ミサト 「アスカ・・・。」
アスカ 「シンジもアタシのこと好きだって言ってくれた。
だから、大丈夫。」
ミサト 「アスカ・・・。」
アスカ 「さ、行きましょ。どうせリツコの説明が
あるんでしょ?」
ミサト 「アスカ・・・やっぱり強いわね。」
アスカ 「信じるものがあるもの。アタシの気持ち。
シンジを好きな気持ちは変わらない。」
ミサト 「そうね・・・。行きましょうか。」
アスカ 「ええ・・・。」
・・・・・・
アスカ 「・・・それで?」
リツコ 「つまりね、あまりにも強い想いに対して、
自己防衛をとったのよ。」
アスカ 「それって、ブレーカーが落ちたようなもの?」
リツコ 「そうね。アスカに対する想いが強すぎて
このままでは脳の神経細胞がやられてしまう、
だから強制的に回路を遮断したの。」
アスカ 「治るの?」
リツコ 「わからないわ。何らかの刺激で戻る可能性も
あるし、戻らない可能性もあるわ。さらに、
たとえ戻るとしてもいつになるか・・・。」
アスカ 「じゃあ、治るのね。」
ミサト 「だから、アスカ・・・。」
アスカ 「少しでも治る可能性があるならやってみる
しかないじゃない。第一、使徒を倒す時
なんてもっと成功確率低かったでしょ?」
ミサト 「まあ、たしかに・・・。」
アスカ 「で、何をしたらいいの?」
リツコ 「無理に刺激を与えるのは良くないわ。
だから、シンジ君が退院したら以前と同じ
ように生活してほしいの。」
アスカ 「つまり、偶然に頼るしかないと・・・。」
リツコ 「そうなるわね。でも、有利な条件があるわ。」
アスカ 「何よ?」
リツコ 「アスカ、あなたよ。普通はあそこまで強く
他人を想うことはないわ。過去に例もないわ。
つまり、そこまでさせるだけのあなたがそばに
いるから・・・。」
ミサト 「あれ、アスカ?顔赤いわよ。」
アスカ 「シンジって、アタシのこと、そこまで・・・。」
リツコ 「やれやれ。意外と大丈夫かもね。」
ミサト 「そうね。」
アスカ 「やるしかないわね。」
リツコ 「そうよ、がんばって。手助けはするから。」
ミサト 「にしても、シンちゃん、うらやましいわね〜。」
アスカ 「私のだからね。」
ミサト 「はいはい。」
シンジ・・・待ってるからね・・・。
つづく
(筆者より)
第5話、いかがでしたか?LynXです。
アスカ様、強いですねぇ。
人間、精神的に強いことが何より大切なのかもしれません。
この先はどうなるんでしょう。
続きをお楽しみに。
感想お待ちしております。
LynXさん、本当にありがとうございました!!
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