こんなにそばにいるのに

第7話(最終話)
                                    作 LynX


高校生活が始まった。
シンジはイギリス、アタシは日本。
あまりにも遠すぎるアタシ達の距離・・・。

シンジとの接点は、1週間に1度くらいのe-mailと
1ヶ月に1度くらいの手紙、そしてごくまれに
かかってくる電話だけ。
この間届いた手紙に同封してあった写真には
友達らしき数人と一緒に写ったシンジの笑顔があった。

友達・・・できたんだね。
よかった。シンジのことだからいじめられてるんじゃ
ないかって心配してたのよ。

そんなことをメールに書いて送ったら
「僕ってそんなにいじめられそうに見える?」
だって。

シンジは細身で女の子みたいだから、体格的に大きい
ヨーロッパ人の中では弱々しく見えそうよね。
でも、シンジほど強くて、頼りになる男の子は
他にはいない。

シンジ、がんばってね。
アタシもがんばるから。

ヒカリ 「アスカ、右手の薬指にはめてるそれって・・・。」

アスカ 「え?ああ、これね。シンジからのプレゼントよ。」

ヒカリ 「やっぱり・・・。」

アスカ 「校則に触れてるのは知ってるわよ。でも・・・。」

ヒカリ 「分かってるわよ、アスカ。」

アスカ 「ありがと、ヒカリ。」

ヒカリ 「かわいそうなのはアスカに言い寄ってきてる
     男の子達ね。」

アスカ 「いいのよ。どれだけ言っても分からないみたいだし。」

ヒカリ 「毎日ラブレター攻めよね。」

アスカ 「まったく、紙とエネルギーの無駄遣いよねぇ。」

ヒカリ 「ホント。アスカは碇くんだけなのにね。」

アスカ 「人のことからかっていないで、ヒカリの方は
     どうなのよ?あいつとはうまくいってんの?」

ヒカリ 「え・・・ま、まあ、ぼちぼち・・・。」

アスカ 「高校が別々になっちゃってさみしいでしょ?」

ヒカリ 「なっ・・・べ、別に何ともないわよ。」

アスカ 「ふんふん。どうせ毎日会ってるもんね。」

ヒカリ 「ど、どうしてそれを・・・。ってアスカ〜!」

アスカ 「フフフ。ひっかかったわね、ヒカリ。」

ヒカリ 「最近アスカにしてやられることが多くなったわね。」

アスカ 「フフ。ヒカリも素直になりなさい。」

ヒカリ 「それをアスカの口から聞くようになるとはね。」

アスカ 「そういえば昔はよくヒカリに言われてたわね。」

ヒカリ 「そうよ。変われば変わるものねぇ。」

アスカ 「愛の力よ。」

ヒカリ 「はいはい。で、もうすぐ夏休みだけど愛しの
     碇くんは帰ってくるの?」

アスカ 「ううん。あっちで忙しいらしくて。」

ヒカリ 「そう、残念ね。いつ帰ってくるって?」

アスカ 「う〜ん、クリスマスまでは無理なんじゃない?」

ヒカリ 「そっか・・・。だいぶ先ね・・・。」

アスカ 「あっという間よ。」

ヒカリ 「アスカ・・・寂しくないの?」

アスカ 「寂しいわよ。でも、シンジはあっちでちゃんと
     がんばってるわ。だからアタシもがんばるのよ。」

ヒカリ 「アスカ・・・。」

アスカ 「しんみりしないでよ、ヒカリ。」

ヒカリ 「うん・・・。」

アスカ 「さあさあ、授業も始まるわよ。ヒカリ、クラス
     隣でしょ。早く。」

ヒカリ 「うん、じゃあ放課後また。」

アスカ 「うん。」

クリスマスにはきっとシンジに会える。
シンジに会って、そして・・・。




今年も12月になると冷え込むようになってきた。
そんな中、アタシの誕生日に小包が届いた。
もちろんシンジから。
赤いマフラーだった。

シンジの手作りかしら。
アイツもまめね・・・。
シンジが編み物をしてる姿を思い浮かべて可笑しくなった。
小包には手紙が入っていた。

『アスカさんへ
 
 お誕生日おめでとう。
 いろいろ考えたけどマフラーを編んでみました。
 何しろ初めてなものであんまり上手じゃないけど・・・。
 よかったら貰ってください。

 今度のクリスマスには日本に帰れると思います。
 会えるのを楽しみにしています。
 それでは、体に気をつけて。
               碇 シンジ      』

シンジ、帰ってくるんだ。
シンジに会えるんだ・・・。

ミサト 「どうしたの、アスカ、やたらとうれしそうね。」

アスカ 「あったりまえよ!シンジが帰ってくるのよ!」

ミサト 「え、ホント?いつ?」

アスカ 「クリスマスには帰ってくるって。」

ミサト 「そう。じゃあごちそう作らなくちゃね。」

アスカ 「作るのはアタシでしょ。」

ミサト 「あら、洞木さんもいるじゃない。ついでに鈴原くんや
     相田くんも呼んでパーティにしましょ。」

アスカ 「はいはい。ミサトが作ると大変だからね。」

ミサト 「ちょっと、どういう意味?」

アスカ 「そのままの意味よ。ちょっとは料理覚えなさいよ。」

ミサト 「大丈夫よ、飢え死にすることはないわ。」

アスカ 「・・・食あたりで死ぬわよ。」

ミサト 「ん?何ですって?」

アスカ 「いえいえ。シンジに早く会いたいわね〜。」

ミサト 「ごまかしたわね・・・。」

もうすぐ。もうすぐシンジ会える。
プレゼントも、買っておかなくちゃ。
そして、会ったら、言うのよ・・・。



シンジからは24日に帰るってメールがあった。
その日が待ち遠しくて仕方なかった。
そして、カレンダーに大きな赤い丸を付けたその日が
翌日となった、その日の夜だった。

アスカ 「ミサト、明日はそうする?」

ミサト 「シンちゃんはお昼すぎに空港に着くそうだから
     アタシが迎えに行くわ。」

アスカ 「じゃあその間にアタシはごちそうの用意でも
     してるわ。事故らないでよ。」

ミサト 「だ〜いじょうぶよん。これでもアタシ、無事故
     なのよ。」

アスカ 「どうもここの警察は甘いわね・・・。」

ミサト 「失礼ね〜。」

 RRRRRRR...

ミサト 「あら、シンちゃんかしら。出ちゃお〜。」

アスカ 「あ、ミサト、ずるいわよ。」

ミサト 「ふふ〜んだ。はい、もしもし。葛城です。」

アスカ 「ああ〜。ミサトぉ〜!」

ミサト 「...Hello, I am Katsuragi....Yes....」

アスカ 「ど、どうしたの、ミサト?」

ミサト 「......Really?......Then, how is he?...」

口調からしてただごとではないことが分かる。
シンジの身に何かが・・・。
1年前のことが思い出される。

ミサト 「...I understand.We'll go there soon....
     Thank you...」

アスカ 「い、いったいどうしたの?」

ミサト 「アスカ、今すぐイギリスに行くわよ。
     仕度しなさい。」

アスカ 「だからどうしたのよ?」

ミサト 「移動しながら話すわ。早く。」


飛行機の中で聞かされたことは。
シンジが旧ロンドン郊外の公園で突然激しい頭痛を訴え、
そのまま昏睡状態に陥ったこと。
そして今第3ロンドン市内の病院に収容されていること。

アタシは震えを抑えられなかった。
1年前の、あの出来事がはっきりと思い出される。
神様がいるのならば、きっとアタシ達のことを引き離そうと
しているに違いない。そう思った。

アタシはミサトに抱きかかえられて空港に、そして
病院へと向かった。

 プシュー

ドアを開けると医師と看護婦と、シンジの友達らしき
数人がいた。たぶん写真に写っていた彼らだろう。
1人がイスを譲ってくれたので軽くおじぎして
シンジのそばのそのイスに座った。

ミサトは医師となにやら話しているようだ。
ちらちら聞こえてくる話ではどうやら心因性の
ショック状態らしい。

病室には重苦しい雰囲気で誰も特に話そうとしない。
シンジを心配している、その気持ちだけが感じられる。
あたしもずっとシンジを見ていた・・・。


いつの間にか夜になっていた。
時差があるから23日の夜だ。
シンジの友達はシンジのことを気にかけつつ帰っていき、
今はアタシだけ。

 プシュー

ミサト 「アスカ、少し休みなさい。」

アスカ 「・・・。」

ミサト 「何かあったら起こしてあげるわ。」

アスカ 「・・・。」

ミサト 「このままじゃあなたが参ってしまうわ。
     2・3時間でもいいから。ね?」

アスカ 「うん・・・。」

実際、かなりの疲労はあった。
3時間たったら起こしてもらうということで
アタシは休むことにした。
目をつぶるとき、これが夢だったら、と考えたりして。


・・・目が覚めるともう朝だった。
あわてて病室に行くと、ミサトはアタシを見て
首を横に振った。
どうやら一晩中起きていたみたいだった。
アタシはミサトと交代した。

その日、24日もシンジの友達が何人も来てくれた。
シンジはだいぶ人気があったようだ。
シンジのことについていろいろ聞いてみた。

シンジはがんばっていたようだ。
勉強もスポーツもこなし、外見も目立つから女の子の
間では噂の的だったらしい。
でも、誰とも付き合おうとしなかったらしい。
実際、交際を求められたりもしていたらしいのに。

「日本に彼女がいるんだろう。」
そう言われていたらしい。
「たぶん君のことだよ。」
何人かがアタシに向かって言った。

そうだとしたら。
再び気持ちがつながりかけたのにまたこんな目に
遭ってしまった。
アタシ達は結ばれない運命なんだろうか。

そしてまた夜になった。
今夜は2人きりにさせてほしい。
そう言ったらミサトは許してくれた。

夜が更けていく。
1年前のことを思い出す。
あの日にもっと素直になれていたら。
シンジとアタシの気持ちは通じ合っていただろう。

アタシ達はずっとずっとそばにいた。
2人とも似たもの同士だったのかもしれない。
2人とも臆病だった。アタシはさらに素直じゃなかったし。
もうすれ違いはイヤ。

時計が午前0時を指した。
「メリークリスマス、シンジ。」
アタシはポケットから小さな箱を取り出した。
そして箱を開け、リングを取り出した。
1年前にシンジがくれたのと同じデザイン。
内側には『From Asuka To Shinji』と彫ってある。

アタシはシンジの右手を取り、そのリングを薬指に
そっとはめてあげた。
そしてアタシの両手でシンジの右手を包んだ。

「シンジ、大好きよ。世界中で一番。」

「本当は1年前から、いえ、もっと前からずっと好きだったわ。」

「でも、言えなかった。だめね、アタシって・・・。」

「今日こそは言おうって決めてたの。アタシの気持ち。」

「シンジ・・・起きてよ・・・。」

また涙が出てきてしまった。
シンジのことで泣くのは何度目だろう。
唇を噛んで我慢しても、止まらない。

「アタシのこと忘れててもいい・・・。起きて・・・。」

「もう・・・独りは・・・イヤなの・・・。」

「シンジ・・・。」

その時。
シンジの右手が動いた。

アスカ 「シンジ・・・?」

シンジ 「・・・・・・・カ?」

アスカ 「シンジ、シンジ!」

シンジ 「・・・スカ?」

アスカ 「シンジ!気がついたの?」

シンジ 「アスカ、アスカなの?どうして・・・。」

アスカ 「シンジィ〜〜〜!!!」

アタシはシンジに抱きついた。
そして泣いた。
どんな顔になっているか分からないけど。
とにかくシンジが気がついたことがうれしかった。
シンジはそんなアタシを優しくなでてくれた。

シンジ 「アスカ・・・ごめんね・・・。」

アスカ 「シンジィ〜。(ヒック)」

シンジ 「ごめんね・・・。戻ってきたよ、アスカ。」

アスカ 「・・・?シンジ・・・今『アスカ』って・・・。」

シンジ 「うん。ちょうど1年ぶりかな?って、ちょ、アスカ、
     叩かないでよ!」

アスカ 「バカバカバカバカ。この1年アタシがどんな気持ち
     だったか知らないで。」

シンジ 「ちょ、アスカってば。ごめんって。」

アスカ 「バカバカバカバカ。」

シンジ 「アスカの気持ち、さっき確かに受け取ったよ。」

アスカ 「え・・・?起きてたの?」

シンジ 「いや・・・夢かと思ってたんだけど右手を見たら・・・。」

聞かれていたと思うととたんに恥ずかしくなった。
顔に血が上っていくのが分かる。

アスカ 「もう!知らない!」

シンジ 「僕があげたリング、つけてくれてたんだね。
     ありがとう、アスカ。」

アスカ 「知らない知らない!」

シンジ 「アスカ。」

アスカ 「何よ。キャ!」

突然シンジに引っ張られてシンジの胸の上に倒れる格好に
なった。シンジ・・・あったかい。

シンジ 「アスカ・・・大好きだよ。」

アスカ 「シンジ・・・アタシも大好き。」

そしてアタシとシンジは見つめ合い、ゆっくりと唇を重ねた。
夢にまで見た瞬間だった。
幸せな時間だった。
ゆっくりと唇を離す・・・。

アスカ 「おかえり、シンジ。」

シンジ 「ただいま、アスカ。」








今日から高校2年生だ。

アスカ 「シンジィ〜、起きなさい。遅刻するわよ。」

シンジ 「う〜ん、時差ボケが・・・。」

アスカ 「何言ってんの。何日前に帰ってきたと思ってるのよ。」

シンジ 「うう〜ん。」

アスカ 「アンタ、編入初日から遅刻する気?」

シンジ 「う〜ん、わかったよぉ。」

アスカ 「朝食できてるから早く!」

シンジ 「ふあ〜い。」



アスカ 「いってきま〜す。」

シンジ 「ミサトさん、寝たままだけどいいの?」

アスカ 「起きないアイツが悪いのよ。アタシ達まで遅刻しちゃうわ。」

シンジ 「とは言っても・・・。」

アスカ 「ほらほら、時間ないわよ。」

シンジ 「アスカ、手、引っ張らないでよ。いってきま〜す。」

アスカ 「ほらほら。」

シンジ 「分かってるってば。そんなに引っ張らなくても。」

アスカ 「シンジ・・・。」

シンジ 「なに?アスカ?」

アスカ 「この手・・・離さないでね・・・。」

シンジ 「うん・・・。絶対に離さないよ。」

アスカ 「ずっと・・・そばにいてね。」

シンジ 「ずっとそばにいるよ。」

アスカ 「・・・ありがと。行きましょうか。」

シンジ 「うん。」

アスカ 「学校中にシンジを自慢してやるんだから。」

シンジ 「え〜。やだなぁ。」

アスカ 「つべこべ言わないの。行くわよ。」

シンジ 「わかったよ〜。」



空は今日も青く澄んでいた。





おわり





   (筆者より)

最終話いかがでしたか?LynXです。
どんなにつらくても心を信じていける。
この2人のようなカップルになれたら幸せですね。

アスカ様もシンジ君ももう大人ですね。
これからもがんばっていってくださいね。


ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございました。


感想お待ちしております。


LynXさん、本当にありがとうございました!!

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「喫茶りんくす」へ戻ります。