いっしょにいようね。
前編
作 LynX
アスカ 「シンジ〜、早く来なさいよ。おいてくわよ。」
僕は今、スキーに来ている。僕の意に反して。
なのにどうしてこうなったのか。話は少しさかのぼる。
アスカ 「シンジ、今度の土日、スキーに行くわよ。」
シンジ 「へ?」
アスカ 「へ?じゃないわよ。行くわよ。」
シンジ 「今度の土曜って・・・明後日じゃないか!」
アスカ 「そうよ。今年から富士山に大きなスキー場ができたの、
アンタも知ってるでしょ?」
シンジ 「知ってるけど・・・いつオープンだったっけ?」
アスカ 「12月1日、つまり昨日よ。」
シンジ 「何もそんなにあわてて行かなくても・・・。」
アスカ 「甘いわね。オープンしたばかりのスキー場に1番乗りで
行く。これがいいのよ。」
シンジ 「じゃあ、昨日行けば良かったじゃないか・・・。」
アスカ 「う、うるさいわね!学校を休むわけにはいかないでしょ!
とにかく、行くわよ!」
シンジ 「はあ・・・わかったよ・・・。」
・・・とまあ、こういうわけ。
簡単にいえばアスカに無理矢理連れて来られたわけだけど。
でも、ミサトさんはともかく、なんで加持さんまで・・・?
アスカ 「シンジ〜、早く〜。チェックインするわよ!」
シンジ 「今行くよ・・・。」
フロント 「では、2組様ともエンジェルプランご利用ですね。」
シンジ 「・・・?なんですか、それ?」
フロント 「はい。当ホテルでは富士パノラマスキー場のオープンを
記念いたしまして、今月のみ、カップルのお客様の料金を
半額にさせていただいております。他にもいろいろと
サービスがございますが、詳しくはこちらをどうぞ。」
僕は渡されたパンフレットを見た。なるほど、そういうことか・・・。
アスカを見るとアスカは満面の笑みだ。
はあ・・・。僕はため息をついた。
アスカ 「わあ、結構いい部屋ね〜。」
シンジ 「アスカ・・・。」
アスカ 「なによ、シンジ?」
シンジ 「これはどういうこと?」
アスカ 「何?うまく利用されたとか思ってる?」
シンジ 「いや・・・それはいいんだけど・・・。」
アスカ 「じゃ何よ?」
シンジ 「僕たち・・・同じ・・・部屋なの・・・?」
アスカ 「当たり前でしょ。仮にも恋人同士ってことになってる
んだから。あ、それとも不安なの?」
シンジ 「な、何がだよ。」
アスカ 「一緒の部屋じゃムラムラして寝られないよ〜とか。」
シンジ 「な・・・。」
アスカ 「夜中に襲われちゃうかもしれないわね。」
シンジ 「そ、そんなわけ・・・。」
アスカ 「ああ、美しいって罪ね〜。でも、おあいにくさま。
夜は加持さんと交代してもらうわ。」
シンジ 「そうか・・・。」
アスカ 「あ、でもミサトと交代ってのもいいかもね〜。」
シンジ 「・・・・・・。」
アスカ 「と、とにかく、早く滑りに行くわよ。」
シンジ 「僕は・・・部屋で休んでるよ・・・。」
アスカ 「はあ?どうしてよ?」
シンジ 「少し体がだるいんだ・・・。アスカだけで行って
くれないかな?」
アスカ 「え〜、せっかく・・・。」
シンジ 「ごめん・・・。」
アスカ 「・・・わかったわ。でも、午後からは一緒に滑るわよ。」
シンジ 「うん・・・。」
アスカ 「お昼にホテルのロビーに来なさい。わかったわね?」
シンジ 「わかったよ。」
アスカ 「じゃあアタシは着替えるから外に出てて。」
シンジ 「は?」
アスカ 「は・や・く!それとも着替えるとこ見てる?」
シンジ 「な・・・何言ってんだよ!」
アスカ 「じゃあ早く外に出なさいよ。」
シンジ 「わかったよ、もう・・・。」
バタン
ふう、まったくもう。アスカは勝手なんだから・・・。
休みたいって言ってるのに外に追い出すかなあ、ふつう。
アスカ 「シンジ、もういいわよ。」
やれやれ、これでやっと休めるよ・・・。
アスカ 「どう?このウェア、似合ってる?」
シンジ 「ん?」
僕はアスカの方を見た。そして驚いた。
アスカのウェアは下は白、上は赤を基調として極彩色を散らした
デザインのものだった。スキー場ではよく見かけるタイプのウェアだ。
だけど、着る人が変わるとこんなにも違うものなのか。
何と表現して良いものか・・・。
僕は自分の語彙の少なさを痛感した。
アスカ 「何とか言いなさいよ、シンジ!」
シンジ 「え?いや、その・・・きれいだなって・・・。」
結局出てきたのはこんなありきたりの言葉だった。
アスカ 「あ、ありがと・・・。」
シンジ 「い、いや・・・。」
アスカ 「じゃ、じゃあアタシ、行ってくるわね。」
シンジ 「あ、ああ。気を付けて。」
バタン
アスカが出ていった後、僕はベッドに寝そべった。
ここ・・・ダブルベッドなんだな・・・。
ここでアスカと一緒に・・・なんてね・・・。
ふう、何だか眠いや・・・。朝早かったからなあ・・・。
・・・・・・
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
時計を見ると12時10分になっていた。
まずい。急いで着替えてロビーに行かなくちゃ。
ハアハア・・・
ロビーに着いて辺りを見回す。アスカはどこだろう。
あ、いたいた・・・。・・・え?
ロビーのソファには栗色の髪の女の子がいた。
朝に見せてくれたあのスキーウェア姿で。
でも。最初は気づかなかったけど。
隣に男性が座っていた。知らない人だ。
そして2人は楽しそうに話をしている・・・。
僕は動けなかった。そんな・・・アスカ・・・。
そして次の瞬間だった。男の腕が女の子の肩にまわり・・・
2人は・・・キスしていた・・・。
バタン・・・ドサッ
僕は無我夢中で部屋に戻った。そしてベッドに体を投げた。
目から熱いものがこぼれ、シーツに落ちた。
僕はいったい何を期待していたんだろう?
アスカと一緒にスキーに来て。それから・・・。それから?
アスカは僕を利用していただけだったんだ。
そう、そう思っていたはずなのに。
分かっていたはずなのに。
どうして僕は泣いているんだろう・・・?
コンコン
アスカ 「シンジ〜、入るわよ。」
ん?アスカ・・・戻ってきたのか・・・。
また僕は寝ていたみたいだ。ベッドから起きあがろうとする。
とたんにひどい悪寒がした。少し頭痛もする。
汗をかいてそのまま寝ていたせいだろうか・・・。
ガチャッ・・・バタン
アスカ 「シンジ具合は・・・ってアンタ、どうしてスキーウェア
着てるのよ?」
シンジ 「ん・・・?ああ・・・。」
アスカ 「アンタ、お昼にも来なかったでしょ?せっかく
待っててあげたのに。」
『待ってた』だって?よく言うよ・・・。
隠さなくたって僕は知ってるのに・・・。
アスカ 「ちょっと、どうしたのよ?」
シンジ 「あ・・・ごめん。行こうと思ったんだけど体調が
ちょっとね・・・。」
アスカ 「ふーん。大丈夫なの?」
シンジ 「あんまり・・・。」
アスカ 「そう・・・。あ、そうだ、シンジ、アタシ今日ナンパ
されちゃった・・・。」
胸がズキンと痛くなる。
シンジ 「そう・・・それで・・・?」
アスカ 「気になる?」
シンジ 「別に・・・。」
アスカ 「全部断ったんだけどね。もう次から次へと大変だったわ。
やっぱり美しいって罪なのね〜。」
別にウソつかなくてもいいのに・・・。
シンジ 「そう・・・よかったね・・・。」
アスカ 「あ、そういえばもうすぐ夕食だけどどうする?」
シンジ 「食べたくない・・・。」
アスカ 「そう・・・。じゃあアタシは行ってくるけど、ちゃんと
着替えて寝てなさいよ。」
シンジ 「わかってるよ・・・。」
アスカ 「そう言えばここのスキー場ってナイタースキーもできるのよ。」
シンジ 「そう・・・。」
アスカ 「でも安心しなさい。アタシは行かないから。」
シンジ 「どうして?」
アスカ 「どうしてってそりゃあ・・・。」
シンジ 「行けばいいじゃないか。僕のことなんて気にしないで。」
アスカ 「で、でも・・・。」
シンジ 「行っておいでよ。僕がいない方がいいんだろ?」
アスカ 「ちょっと、それ、どういう意味よ・・・?」
シンジ 「さあね。アスカが一番よく分かってるんじゃない?」
アスカ 「何を訳の分からない・・・。」
シンジ 「もう出ていってくれる?もう寝るから。」
アスカ 「・・・・・・。」
シンジ 「アスカ?」
アスカ 「・・・シンジの、バカ!アンタなんか知らないわ!
アタシはアタシの好きなようにさせてもらうわ!」
バタン
アスカ・・・怒らせちゃったな・・・。
でも・・・これでいいんだ・・・僕なんて・・・いない方が・・・。
・・・・・・
ドンドンドン
ミサト 「アスカ、シンちゃん、いる?」
シンジ 「ん・・・?あ、ミサトさん、今開けます・・・。」
ガチャリ
ミサト 「あ、シンちゃん、アスカ、いる?」
シンジ 「僕だけですけど・・・どうかしたんですか・・・?」
ミサト 「ここにもいないか・・・。」
シンジ 「ミサトさん、アスカがどうかしたんですか?」
ミサト 「いないのよ・・・。」
シンジ 「は?」
ミサト 「アスカが・・・どこにもいないの。」
シンジ 「ナイタースキーにでも行ったんじゃ・・・。」
ミサト 「ええ。夕食の時にアスカもそう言ってたわ。」
シンジ 「じゃあ・・・。」
ミサト 「でも、今、外は猛吹雪なのよ・・・。」
シンジ 「じゃあどこか別のロッジとかに・・・。」
ミサト 「今からフロントで聞いてみるわ・・・。シンちゃんは
ここで待っててくれる?」
シンジ 「いえ、僕も行きます。」
ミサト 「そう。じゃあ行くわよ。」
フロントの人に頼んでこのスキー場近辺の全てのロッジに連絡を
とってもらった。だが結果は・・・。
フロント 「どこにもそれらしき方は来ておられないそうです。」
ミサト 「それじゃ、まだゲレンデにいるかもしれないってこと?」
フロント 「おそらくそれはないと思いますが・・・。」
ミサト 「どうしてそう思うのよ!捜索を出しなさい!」
フロント 「このような悪天候ですので、捜索隊の出動は無理
ではないかと・・・。」
ミサト 「そこをなんとかしなさい!」
加持 「まあまあ、葛城・・・もっと冷静になれ。」
ミサト 「この状況でどうやって冷静になれって言うのよ!」
加持 「まあとにかく、部屋に戻ろう。シンジくんも。」
シンジ 「はい・・・。」
部屋に戻ろうとしたとき、僕は見覚えのある顔を見つけた。
昼間、ロビーで・・・そう、アスカとキスしていた男だ。
僕は考えるよりも先に動いていた。
加持 「おい、シンジくんどこ行くんだい?」
シンジ 「おいっ!」
男性 「ん?何だ?」
シンジ 「お前、アスカをどこへやった!」
男性 「はあ?アスカ?誰だそりゃ?」
シンジ 「とぼけるな!昼にロビーでお前と一緒にいた子だ!」
男性 「はあ?昼?ロビー?・・・ああ、あの子のことか。」
シンジ 「どこへやった!」
男性 「おいおい、でもあの子はアスカなんて名前じゃなかったぞ。」
シンジ 「何だと!」
男性 「ちょうどいい。論より証拠だ。彼女が来たぞ。」
シンジ 「え・・・?」
男性 「お〜い、ナンシー。」
女性 「ハァ〜イ、ジュンヤ〜。ひどい吹雪ね〜。」
男性 「昼に一緒にいたのはこの子だけど・・・?」
シンジ 「そんな・・・じゃあアスカは・・・。」
男性 「たぶん君の勘違い・・・って、おい、どこに行くんだ?
外は吹雪だぞ?」
シンジ 「そんな・・・アスカ・・・。」
女性 「彼、どうしたの?」
男性 「さあ・・・?」
僕は走り出していた。ホテルの外へ。
僕はアスカにひどいことを言ってしまった。
僕は・・・僕は・・・。
「アスカァ〜!!」
僕の声は吹雪にかき消された。
ものすごい吹雪で周りがまったく見えない。
そのうち、どこをどう進んでいるのか分からなくなってきた。
「アスカァ〜!!」
アスカにはまだ言わなきゃならないことがたくさんある。
アスカと一緒にやりたいこともたくさんある。
こんなところで、こんなことで・・・。
「アスカァ〜!!」
僕の声は届かないんだろうか・・・。
ああ・・・何だか体が動かなくなってきた・・・。
ここはどこ・・・?寒い・・・助けて・・・。
助けてよ・・・アスカ・・・。
「アスカ・・・。」
ドサッ
僕は雪の上に倒れた・・・ようだ。
体が・・・冷たい・・・。
涙が出てきた。
こんなところで・・・僕はダメだね。アスカ・・・ごめんね・・・。
僕は目を閉じた・・・。
つづく
(筆者より)
ま〜くさん、100000HITおめでとうございます!
ついに桁違いの大ページですね。
せっかくなのでお祝い小説も奮発(?)させてもらいます。
ということで、この小説は「第1弾」(の前編)です。
つまり第2弾もあるという・・・。
まずは後編をお楽しみに。シンジくん、どうなるんでしょう?
「ま〜くの落書き部屋」のますますのご発展をお祈り申し上げます。
LynXでした。
感想お待ちしています。
LynXさん、本当にありがとうございました!!
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