さようなら
作 LynX
ドウシテアタシハココニイルノ?
今アタシは結婚式に出席している。
結婚するのはシンジと・・・マナ。
ホントは出席するのもイヤだった。
でも、アタシはここにいる。
シンジの晴れ姿を見るために。
最後にシンジの笑顔を目に焼き付けていきたいから。
「マナ姫と結婚することになったよ・・・。」
「・・・。」
「何も言ってくれないんだね、アスカ。」
「・・・。」
「どうして!どうして何も言ってくれないんだ!」
「・・・!」
「・・・ごめんよ。・・・そうだね。アスカは
声が出ないんだったね・・・ごめん。」
「・・・・・・。」
「そんな悲しい顔をしないで。結婚しても僕は
ここにいる。アスカもここにいてくれるよね?」
アタシはうなずいた。でも・・・。
「よかった。ありがとう。」
シンジの笑顔にアタシも笑顔を返した。
「でも・・・。」
「・・・?」
「でも・・・僕、ホントは・・・。」
コンコン
「はい。」
「シンジ様、お父上様がお呼びです。」
「フゥ。わかったよ。じゃあね、アスカ。」
バタン
シンジはこんなアタシに対しても優しい。
シンジは毎日アタシの部屋に来て話をしてくれる。
アタシはシンジが好き。
初めて会ったときからずっと変わらない。
いや、この思いはシンジのお城に一緒に住むことに
なってシンジと毎日を過ごしているうちに
どんどん強くなっている。
でもアタシには声がない。
シンジに対する思いを口にすることもできない。
マナ姫は隣国の王女様。
シンジを助けたのが縁でシンジと知り合い、
それをきっかけに王様同士が話をして
マナ姫とシンジ王子の結婚が決まってしまった。
アタシはシンジを追いかけてここにたどりついた。
声は失ってしまったけど、シンジと一緒に
いられるならかまわない。
そう思っていたけど。
今日ほど声が出ないのがつらかったことはない。
アタシはシンジが出ていった部屋で静かに泣いた。
結婚式は明日になっていた。
アタシは一人で海に来ていた。
遠く海の彼方を見つめる。
明日、結婚式が終わったらアタシは・・・。
・・・!
人の気配がして振り向くとそこには懐かしい顔が。
リツコ・・・姉さん。
「アスカ、ひさしぶりね・・・。」
「・・・。」
「話は知っているわ。明日が結婚式ね。」
「・・・。」
「アスカ、わかってるの?結婚式が終わったら
あなたは・・・。」
アタシは首をゆっくり、静かに横に振った。
「そう・・・。でもアスカ、1つだけ方法があるわ。」
「・・・?」
「これよ。」
そう言って渡されたのは短剣だった。
「それで王子を殺してしまいなさい。
そうすればあなたは・・・。」
アタシは短剣を持ったまま青ざめた。
これでシンジを・・・・。
「・・・どうするかはアナタが決めることだわ。
悔いのないようにしなさい。」
そう言ってリツコは帰っていった。
アタシはしばらくその場にいた。
動けなかった。
シンジを殺す・・・。
そのことだけが頭の中をめぐっていた。
そして夜になった。
もうみんな寝てしまったのか、城内は静まり返っている。
アタシはゆっくりとベッドから起きあがった。
そして物音をたてぬよう、細心の注意を払い、
部屋を出て、廊下を歩き、ある部屋に着いた。
そこはシンジの部屋。
意を決して中に入る。
奥のベッドから規則正しい寝息が聞こえる。
アタシはそこに忍び足で近づいていく。
シンジは心地よさそうに寝ていた。
アタシはその寝顔をしばらく眺めていた。
できることならずっとこうしてシンジを見ていたかった。
でも。
アタシは忍ばせてきた短剣を取り出した。
ゆっくり鞘から剣を抜く。
それは月の光を反射して光って見えた。
アタシは剣を両手で持ち、ゆっくりと頭上に振りかざした。
その時だった。
シンジが寝返りをうった。
月明かりでシンジの顔がはっきりと見えるようになった。
今、目を開けられたら。
心臓の鼓動が速くなるのが分かる。
「・・・カ・・・。」
シンジが何か言った。よく聞こえない。
「アスカ・・・好き・・・。」
え?今なんて・・・?
好き?アタシのことが・・・?
もう何も見えなくなっていた。
涙はあとからあとからあふれてきた。
もう、自分のことなんて・・・いい。
シンジ・・・アタシも・・・大好き。
アタシはゆっくりと剣を下ろし、鞘におさめた。
あふれた涙を拭い、シンジの頬にそっとキスした。
その時涙が一滴、シンジの頬に落ちたが
シンジは眠ったままだった。
さようなら・・・。
アタシは心の中でつぶやいて部屋を出た。
そしてアタシは今、結婚式に出席している。
シンジ・・・かっこいいわ。お幸せに。
マナ・・・悔しいけどきれい。シンジをよろしくね。
まもなく誓いの言葉が交わされる。
「マナ姫、あなたはシンジ王子を一生愛し、
幸せにすることを誓いますか?」
「はい。誓います。」
当然よ。
幸せにならなかったら許さないわよ。」
「シンジ王子、あなたはマナ姫を一生愛し、
幸せにすることを誓いますか?」
アタシは目を閉じた。
シンジが誓いの言葉を言った瞬間、アタシは
泡になって消えてしまうから。
最後にシンジの姿を思い浮かべながら。
さようなら、シンジ・・・。
・・・・・・・・・・
・・・・・・おかしいわね?
「シンジ王子?」
「僕は・・・僕は・・・。」
「「「「?」」」」
「僕は誓いません。僕が好きなのはアスカだけです。」
「「「「は?」」」」
「シンちゃん?」
「ごめん、マナ。でも、僕は自分の気持ちに
ウソをつきたくないんだ。」
「ちょっと、落ち着いて。」
「アスカ、僕が好きなのはアスカだけなんだ。
僕はアスカと結婚したいんだ。」
「ちょっとシンジ?」
「だめかな・・・アスカ・・・?」
「そういうことじゃないわよ。アンタ、これは
劇なのよ?わかってんの?」
「わかってるよ。でも・・・僕は自分の気持ちに
正直でいたいんだ。」
「アンタねぇ・・・。」
「アスカ・・・返事は・・・?」
「ああもう!わかったわよ!イヤなはずないでしょ!」
「ありがとうアスカ。じゃあ劇の続きをしよう。」
「は?続き?って、ちょっと、どこ連れてくのよ?」
「ほらほら、神父さん。」
「へ?あ、そ、そやな。えーと。シ、シンジ王子は
アスカ姫を一生愛し、幸せにすることを誓いますか?」
「はい、誓います。」
「えーではアスカ姫、あなたはシンジ王子を一生
愛し、幸せにすることを誓いますか?」
シンジがアタシをじっと見ている。
こんなたくさんの人の前で・・・言うの?
「アスカ?」
「ち、誓います。」
会場全体が静まり返った。
パチパチパチパチ
誰かが拍手をした。
振り向くと、マナだった。
半分呆れたような顔で。でも、笑っていた。
それにつられて会場からも徐々に拍手が生まれていった。
アタシは・・・なんだかうれしかった。
涙が出そうになった。
目をつぶってこらえようとしたその時。
唇に一瞬、温かい感触があった。
目を開けると、目の前にシンジの顔があった。
拍手が一瞬にしてやんだ。
「シンジ・・・何したの?」
「え?誓いのキスだけど・・・。」
「アアアンタ、バカァ?」
「イヤだった・・・かな?」
「イ、イヤなはずないでしょ・・・。」
「よかった。」
「シンジ、顔が真っ赤よ。」
「アスカだって。」
「シンジ・・・。」
「何?アスカ?」
「ありがとう・・・。」
「そんな。こちらこそ、ありがとう、アスカ。」
「いつかホントにこうやって結婚式したいな・・・。」
「できるよ。僕はずっとアスカのことが好きだもの。」
「アタシもよ、シンジ。」
「アスカ・・・。」
「シンジ・・・。」
こうして本来のシナリオを完全に無視して
シンジたちのクラスの劇は終わっていった・・・。
(筆者より)
ま〜くさん、60000HITおめでとうございます!
今回は童話「人魚姫」を利用して書いてみました。
わかってもらえましたか?
ところでアスカ様、なんでマナのやってた隣国のお姫様の
役を取らなかったんですかねぇ?シンジくんと結婚できるのに。
どうせアスカ様のことだから「人魚姫」を知らなくて
シンジくんが王子様、自分はヒロインだから2人は
結ばれるだろうなんて思ってたんでしょうね・・・。
へっぽこだなぁ・・・(笑)。
っと、何か飛んできた。あぶない・・・ってこれ・・・。
本物だったのか、あの短剣って・・・。(汗)
身の危険を感じるのでこのへんで。(笑)
「ま〜くの落書き部屋」のますますのご発展をお祈り申し上げます。
LynXでした。
感想お待ちしています。
LynXさん、本当にありがとうございました!!
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