前略

 

お久しぶりです。お元気でしょうか?僕は元気です。

僕たちが離れて、六年が経ちますね。

僕は、ようやくウィーンの生活にも慣れて、充実した毎日を過ごしています。

まるで、あのころの僕ではないようです。

人とのつきあいもうまくなりました。

貴女はどうですか?

貴女はあの頃みたいに、強くて、そして優しいままですか?

みんなを明るく出来る、貴女の魅力は変わってないでしょうか?

きっと、変わっているでしょうね。

人は、みんな変わっていくものだと、僕はあの頃の経験で知りました。

今の貴女は、どんな風になっていますでしょうか?

 

突然ですが、このたび、日本に帰ることが決まりました。

日本での公演が決まって、僕がそのメンバーに抜擢されたのです。

また、逢えますね。

楽しみに待っています。逢える時を。

貴女の誕生日には、逢えると思います。

 

僕は一足先に、少年時代と別れを告げました。

何故か嬉しく、その反面、悲しい気持ちです。

もうあの頃に戻れないのか、と考えると、ものすごく悲しくなります。

でも、僕の心の中では、あの頃の僕と貴女は、いつまでもあのままでいます。

出来れば、あのままでいたかった。

でも、それもかなわないんでしょうね。

だから、僕は変わっていきます。

これまでも。そして、これからも。

 

今でも、貴女のことを思い浮かべると、貴女の声が聞こえてきそうです。

いつも、僕をしかっていてくれた貴女の声。

時には、励ましてくれた貴女の声。

全てが、今も鮮明に聞こえてきそうです。

 

また、逢える日を楽しみにしています。

 

親愛なる、惣流・アスカ・ラングレー様

 

碇シンジ

 

 

 

 

 

 

「シンジ…戻って来るんだ」

「そうみたいね。どうすんの?アスカ」

「どうするって…何を?」

「何をって、返事を書くかどうかよ」

「そうね…ミサトはどう思う?」

「私に振らないでよ。手紙は、あなたに来てるんだから」

「そうね…返さなくてもいいかな」

「なんで??」

「別に、書くことないじゃない。それに、戻って来るんでしょ?それなら、その時に話せばいいことだし」

「へぇ…心で繋がりあってるのね。うらやましいわぁ」

「ミサト…加持さんとはどうなのよ?」

「加持??ダメダメ。あれからちっとも変わらないんだもの。とても、家庭持ちなんて出来る人じゃないから」

「ミサトも、なんだかんだ言って、ちゃんと分かり合ってるじゃないのよ」

「う…うっさいわね!大人をからかうんじゃないわよ!!」

「私だって、もう大人よ」

「そうねぇ…もう、二十歳だもんねぇ…まったく、私も歳とったわ」

「もう立派な、お・ば・さ・ん・ね♪」

「おばさんって言わないでよ!!心はいつでも、二十代なんだから!!」

「はん、いくら強がっても、おばさんはおばさんよ」

「…アスカ。その言葉、いつかお返しして上げるわね」

 

 

その晩、机に向かう一つの影。

 

 

前略

 

久しぶり。

アタシは元気よ。あの頃から、ちっとも変わってないってよく言われるわ。

でも、少しは変わってるつもり。

もう、大人になるんだもんね。

でも、ちょっと怖いの。

今までの自分が、なくなりそうで。

だから、アタシが大人になるときは、シンジにそばにいて欲しいの。

アタシがいなくならないように。

ごめんね。手紙じゃないと、こんな事書けないな。

口で言えるわけないもの。アタシには。

それじゃ、楽しみに待ってるわね。

シンジがどんなに変わったか、今からとっても楽しみ。

 

惣流・アスカ・ラングレー

 

碇シンジ様

 

 

 


後書き

今回は、二人の六年後の姿を書いてみました。

手紙という形で書いてみて、自分自身、かなり難しかったです。

シンジとアスカの気持ちが伝わったでしょうか?

おそらく、続きがあります。

その時を楽しみに待っていてくれると、嬉しいです。


GIDAさん、本当にありがとうございました!!

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