More once
「それじゃ!」
「行って」
「来ます…」
「クエッ??」
全員が、玄関に見送りに来ているペンペンに、声をかけた。
三人は、三用の用事のため、しばらくミサトのマンションをあとにすることになった。
シンジは、ある場所に来ていた。黒い板だけの墓標が、果てしなく地の果てまで並んでいる。
中には、倒れている墓標もある。
「前は…父さんと一緒だったんだよな…今日は、父さん…来るのかな…」
シンジの手には、花があった。母親の墓標に供えるためのものだ。
この、広く無機質な空間を少し歩いて、シンジは、目的の場所で立ち止まった。
そこには、枯れた供え物の花があり、以前シンジが来たときから、誰も来ていないことを物語っていた。
「また来たよ…母さん」
シンジは、そう言うと枯れた花束を持ち上げ、そのかわりに、シンジが持ってきた花束を供えた。
「今日は…父さん、来てないんだね。また、話せると思ったんだけどな…」
シンジはそう言うと、母親の墓標の前に座り、静かに目を閉じて、手を合わせた。
しばらくの間、時が止まった。
そして、シンジがゆっくりと目を開ける。
「今日は…母さんに話がしたかったんだ。僕が今まで覚えたこと、僕が今までしてきたこと。そして、僕にわかったことを…母さん、きっと聞いててくれるよね」
アスカは、病院の一室の前に立ちつくしていた。
周りからは、病院内を急ぐ、看護婦達のざわめきが聞こえる。
病室と、廊下の間は、一枚のガラスによって隔たれていた。
そして、病室の中にあるベッドには、今は誰もいない。
「マ…マ……」
アスカは、病院の廊下に立ちつくして、誰もいないベッドを見つめながら、そう呟いた。
「…ここには、もう来ないと思っていたのに…」
アスカは、少し寂しそうに、そう呟く。その視線は、ベッドの上に、今はない人影をおっていた。
「でも…それは、逃げていただけなのよね…シンジと同じように」
不意に、アスカの後ろを看護婦が通り過ぎる。しかし、アスカはそれに構わず、続けて呟いた。
「今日は、久しぶりに話しに来たのよ。だって、本当のママは、あなたしかいないもの」
アスカは、そう言うと、病室とアスカを隔てているガラスに、そっと触れた。
「アタシは元気よ。あれから…って言っても、かなり経つけどね。本当に、いろんな事があったの。でも、アタシは大丈夫。強がりじゃなくてね。だって、人は一人じゃ生きられないって、わかったもの。そう…人は一人じゃ…」
ミサトは、一隻の戦艦の甲板にいた。戦艦が浮かんでいるその海は、赤く色づいており、
所々に、塩の柱がそびえ立っている。
そして、生き物の存在しない世界。
ここには、ミサトの父親が眠っているのだ。
「こんな所まで墓参りとは…私も、よくやるわね…」
ミサトは、甲板の上でそう呟いた。
ミサトの他には、甲板の上にいるものは、誰一人いない。
「ここで…お父さんが眠ってる…なんか、ピンとこないわね」
ミサトは苦笑いをした。そして、そんな言葉は、実は強がりから来ているものだ、と言うことも、分かっていた。
「はは。逃げてちゃだめよね。なんのために、ここまで来たんだか、わかりゃしない」
ミサトはそう言うと、手に持っていた花束を赤い海に放り投げた。
「全ては、あの時から始まったのよね。でも、あのことを恨んじゃいないわ。だって、お父さんが私を、命を懸けて守ってくれたし、なにより、あの子達に会えたんですもの。いろんな事を教えられたわ…」
赤い海にそびえ立つ、白い塩の柱が、まるで、墓標のように思える。あの時に失われていった、多くの生命の墓標のように…
「だから、なにも悔やむことはないと思うの。何かを失いながら、何かを手に入れていく。それが当たり前だものね」
「もう一度…」
「もう一度だけでも…」
「たった、一度だけでも…」
「母さんに会えるのなら…」
「ママと話せるんだったら…」
「お父さんと話せるのなら…」
「僕はきっと、こう言うよ…」
「アタシは、こう言うと思うわ…」
「私は…こう言うと思うわ」
「ありがとう…そして、さようなら…」
後書き
ども。GIDAです。
お久しぶりです。
スランプあけ、第一作です。どうでしたでしょうか?
またもや、抽象的なSSになってしまいましたが、これを読んで、何か思うところがあれ
ば、何でも言って下さい。
今回は、ま〜くさんの発案で書かせていただきました。
ま〜くさん、本当にありがとうございました。
では。
GIDAさん、本当にありがとうございました!!
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gida@os.xaxon.ne.jp
までお願いします。