「え〜!!・・・・・・この私と、シンジとで二人っきりでしばらくすごせとでもいうのぉ。」
「まっ・・・・・・そういう事になるわね。でもアスカ、チャンスじゃない。」
「なっ・・・・・・なにがよ?」
「こういう二人っきりのチャンスを充分に活かさなきゃ・・・・・・そりゃぁ赤ちゃんは不味いけど、その前ぐらいまではいっといた方が・・・・・・
「な・・・何をゆうのよぉ、ミサト!・・・・・・わ・・・私がバカシンジなんかとぉ」
「そうやって、耳まで真っ赤になっちゃってぇ・・・・・・かぁわいんだからぁアスカったら。」
「からかわないでよ・・・・・・私は別に・・・・・・」
「言っとくけど、この事はリツコを通して、レイにも伝わっている筈よ。あの子、ここは手段を選ばないとみたわ。
アスカもそうやってつまらない意地はっていると、大事なシンちゃんを取られちゃうわよ。」
「ファーストが・・・・・・」
「そう。リツコは何かレイに策を授けるとか言ってたからね。そうなったら私としても妹分のアスカには負けて欲しくはないのよ。」
「ファーストには・・・・・・負けたくない・・・・・・」
「やっと素直になったようね。ここは、美貌の作戦部長に任せなさい。マッド科学者とは違うから。アスカ、作戦を練るわよ。」
「そういう事だから、レイ・・・・・・ここはあなたにとって正念場だと私は思うの・・・・・・」
「はい、博士・・・・・・私・・・・・・碇くんの側に行きたい。」
「ミサトがいなくなって、あのマンションには、シンジくんとアスカの二人っきりに。ほっといたらシンジくんの操は・・・・・・」
「そんなの嫌です・・・・・・耐えられません・・・・・・」
「ミサトはああいう性格だから、アスカをたきつけているに決まっているわ。一刻の猶予もないわよ。」
「博士・・・・・・私、やります!・・・・・・弐号機パイロットに碇くんを渡さない!」
「よく言ったわ、レイ。あなたは私にとって妹みたいなものよね。レイには幸せを勝ちとって欲しい。
幸いな事に私に良いアイディアがあるわ。ぐーたら作戦部長には負けないわよ。私に任せなさい。」
「お願いします。私に力をかしてください。」
「にゃんこ88号起動・・・・・・さぁレイ、このモニターを御覧なさい。マギが判断した最良の策は・・・・・・」
VACATION
Can't seem
to get my mind off of you
Back here at home there's nothin' to do
Now that I'm away I wish I'd stayed
Tomorrows a day of mine that you won't be in
When you looked at me I should've run
But I thought it was just for run
I see I was wrong and I'm not so strong
I should've known all along that time would tell
A week without you
Thought I'd forget two weeks without you
And I still haven't gotten over you yet
Vacation ・・・ all I ever wanted
Vacation ・・・ had to get away
Vacation ・・・ meant to be spent alone
Vacation ・・・ all I ever wanted
Vacation ・・・ had to get away
Vacation ・・・ meant to be spent alone
A week without you
Thought I'd forget two weeks without you
And I still haven't gotten over you yet
Vacation ・・・ all I ever wanted
Vacation ・・・ had to get away
Vacation ・・・ meant to be spent alone
Vacation ・・・ all I ever wanted
Vacation ・・・ had to get away
Vacation ・・・ meant to be spent alone
常夏の第三新東京市から、北へ離れる事、数百キロ。
大雪山を遠くに見ながら、地平線まで真っ直ぐのびた道路を時速60マイルでぶっ飛ばす、黄色いオープンカーがあった。
ハンドルを操るのは、自慢の金髪をラリーキャップで覆い、レイバンのサングラスが良く似合う、
世間では今世紀最高の天才(天災)科学者と唄われた、なかなかの美女であった。
その美女の隣には、長く魅力的な足を組み、少し紫がかった長髪を風になびかせながら、左手を折り曲げドアの縁に置き、
右手で空のビール缶を弄ぶ、これまた魅力的な女性が同乗していた。
前方に陸橋の様な物が運転席の彼女の目に写った。すると彼女は、ベタ踏みだったアクセルから右足を離す。
車はエンジンの抵抗を受け、スピードを示す針が半時計回りに動き出す。
しかしそれは緩慢であり、陸橋とその上に取りつけてある四角いレンズの様な物が怪しく光る準備を始め様としていた。
彼女は、おもむろにクラッチを踏みこむと同時に左手で、すばやくギアを落とした。
今度は急激に、正面からの抵抗を受け車は減速し、まさに陸橋を潜ろうかとした時には、スピードメーターの針は、
40マイルよりも左にまで移動していた。四角いレンズは反応しない。するとそれまで黙っていた隣の女性が、
突然左手を天に差し上げ、中指だけを立てた拳骨を握り、大きな声で叫んだ。激しく鳴るエンジン音に負けないくらいに・・・・・・
「ファッ○ン・ア○・ホール!」
運転席の女性は、速やかにシフトアップを済ませると再びアクセルを力強く踏みつつ、隣の相棒に向けて声を発した。
「みっともない声を出さないでよ。人に聞かれたら私が恥ずかしいんだからね。」
「だあれも聞いちゃいないわよ。こんなに空気の美味しい、素敵な場所にまで来てお小言はやめてよん。」
相棒は、ふざけた感じで言葉を返した。やはり言うだけ無駄だったのかと今更ながらに悟らされたドライバーは、
軽く溜息をついた後、せっかく再加速したアクセルを緩めだし、ブレーキを静かに踏みしめつつ、左ウインカーを出す。
前方には、今度は『道の駅』と表示された看板が、魅力的な二人を出迎え様としていたからであった。
運転席の彼女が、車を左に進路変更すると同時に、いつのまにか煙草を口にしながら相棒に声をかけた。
すると相棒もタイミング良く声を同時に発した。言ってる言葉は全然違うのだが、何故だか不思議と二人の声がハモっていた。
「ここらで少し休憩するわよ、ミサト。」
「ナイス!リツコ!ちょっち助かったわぁ。」
北海道の大平原を、道東にむかって疾走していたロータス・エランが、静かに『道の駅』停止し、
車を離れてレストルームに向かう二人を、柔らかい日差しを黄色い車体に反射させつつ見送っていた。
使徒の脅威はほとんど過去の物になろうとしていた。
使徒殲滅を主な活動としてきたネルフは、やがて人類の明るい未来を導き出す為の様々な試みを、
最先端の科学と装備を持って実行する組織へと変貌しつつあった。
そして過去の戦闘状態の時と同様に、組織の実働部分の舵取りを行っていたのは、今だ花の独身を謳歌する、
作戦部長葛城ミサト司令代行と、科学研究班総責任者赤木リツコ博士であった。
そんな極めて多忙なる激務をこなしていた二人が、ある日突然一週間の休暇を求めたのである。
そしてこの申請は、碇司令に一時預かりとなったのだが、二人はそんなこともお構いなく予定通りに休暇に入った。
引継ぎは十分に出来ていた。それぞれの片腕である日向一尉と伊吹一尉が、そつなく作業を滞り無くこなしていたからである。
もちろん、その二人を脇からサポートする、青葉三佐の存在も大きかったのは言うまでも無い事であった。
「日向君、上手くやっているかしら・・・・・・」
「あら?ミサト。全然心にも無い事を言ったりして・・・・・・私以外は誰も聞いていないのよ。」
自動販売機からダイエットコーラの500mlペットボトルを購入しつつ、不意に呟いたミサトに対し、
リツコはまるで小馬鹿にした笑みを浮かべながら親友の呟きに返答を返した。
ミサトは、それをプクーと頬を膨らます事によって不機嫌な態度を示すと、早くも半分空けたペットボトルを
リツコの前に差しだし、まるで乾杯するかの様に軽く上下させた後、半目を空けて笑いながら
「あったりまえじゃない、私は日向君の事を信じてはいるわ。でもね責任ある立場上、片時も仕事の事を忘れられないのよ。
リツコだってマヤちゃんの事が心配なんでしょ。いつだってさりげな〜く、可愛い後輩の面倒をみてきたあなたにはね。」
ミサトの反撃であったが、リツコは同じく自販機で買ったブラックコーヒーを少し口に含んだ後、
「マヤはもう、私から卒業できるわ。今回の事は良い機会だと思っているの。あの子が一人前になる。
それよりも、あなたから責任という単語を聞けるとは思わなかったわ。ミサトの辞書には絶対無いと思っていたのにね。」
ミサトが「なな・・・・・・なによぉ・・・・・・」と言いかけたが、リツコはミサトにまったく隙をあたえようとはせず、
「私の北海道旅行の目的は、そのマヤの事もあるんだけど・・・・・・確かに研究が一息つくタイミングだったしね。
でもあなたの場合は、加持君のドイツ行きが決まったからでしょ。夜の酒の量が増えて・・・・・・シンジ君ではなく、
あのアスカが心配してたくらいだったからね。そりゃ気持ちは分かるけど・・・・・・本当は軽い気持ちで誘ったのに、
間髪いれずに快諾するんだから、シンジ君やアスカの事をあの時は、すっかり忘れていたんでしょ。」
ぐうの音もでないのか、ミサトは下をむいてしまった。表情は髪の毛で伺えなかったが、おそらく縦線が入っていた事だろう。
リツコは更に言葉を用意していたのだが、相棒の予想外の落ち込み様にそれを中断させることに決め、
二人を待ちうける、エランにむかって歩き出した。ミサトも静かに後に続く。
そして二人が乗りこんだ後、暫しエンジンをアイドリングした後に、東に向けて発進した。
鼻歌を歌いながら、心地よさそうにハンドルを握るリツコ。しかし隣のミサトは先程とはうってかわって大人しいままであった。
リツコはレイバンを顔から外すと、左手でミサトの顔の目の付近にひらひらさせる。
ミサトはそれに気づくとそれを手に取り、自分の顔にかけた。そしてリツコの方を向かず、正面の景色を見つめながら、
「あなたの言う通りね・・・・・・そう私、加持の側から逃げ出したかったのよ・・・・・・あいつ、ドイツに向かうまでまだ二週間程あるから、
どこか遊びに行かないかって言ってくれたんだけど・・・・・・多分二人っきりになって飲んでしまったら・・・・・・
ベッドであいつの腕に頭を乗せちゃったら、イヤミな事ばっかり言って情けない姿を見せてしまいそうだから。
わかってんのよ。私は加持の事を愛しているし、加持だって私の事を・・・・・・でもね、それでも私達はどうしてもお互いに、
絶対譲れない壁を持っているの。人としての生き方において、相容れない物を抱えているのよ。
そんな事は大人として割りきってつきあって、そして結婚すべきだと他人には思うんでしょうけど、
それを出来ないままにお互いがここまで年を重ねてしまったのよ。一時の快楽がそれを忘れさせてくれると信じた時もあったわ。
でもね、お互いが心を開かないままに身体を重ねて絶頂を迎えてしまうと、その後に待っているのは、例え様のないくらいの・・・・・・」
堰をきった様に、喋り出すミサト。リツコは黙ってそれを聞いていた。
「何度も別れ様と思った・・・・・・実際しばらくの間、離れていた時期もあったしね。
だけどすっかり元に戻っちゃった。八年たっても二人の間の問題は全然解決していなかったわぁ・・・・・・
使徒と戦っていた頃は、明日をもしれない命だと思っていたから刹那的になる事によって精神を安定させていたけど、
最近すっかり平和になっちゃって、そしたら今まで逃げる事が出来ていた事がいきなり二人の前に突きつけられたのよ。
でも、わたし達は・・・・・・」
「わたし達ではなくてあなたが・・・・・・ではないの。」
「そうね・・・・・・その通りだわ・・・・・・そうよ私が勇気を持てなかったのよ。
もう一人になる事なんて・・・・・・でもそれじゃぁわたし達はいつまでも・・・・・・
加持は、そんなわたしの為に・・・・・・・・・・・・」
ミサトのすすり泣く声が聞こえてきた。風を切る音に紛れて聞きづらかったが、
涙が浮かんでいた筈だが、レイバンのサングラスがそれを覆い隠していた。
前方の信号が赤を示していた。リツコは静かに減速しながら、ミサトの感情が徐々に収まるのを見計らってオーディオのスイッチを押す。
Go-Go'sの『ヴァケーション』が流れてきた。信号はエランが止まる寸前で青に変わり、リツコは再びアクセルを踏みこんだ。
そしてスムーズにギアをトップまで持っていくと、ギアに添えていた左手をミサトの肩に回しつつ
「今度は何年かしらね、あんたたちは。リョウちゃんもしょうがないわね、気が済むまで別れたりくっついたりを繰り返したら。
ミサト、前にあなたに言わなかったっけ?・・・・・・恋愛はロジックじゃないのよって。どうしてそう難しい理屈をつけたがるの。
男と女なんて論理的に説明がつくもんじゃないんだから。要はどれだけお互いを愛しあえるか?・・・・・・それだけではなくて。
そうやってつまらない理由をあげつらって別れ様なんて言っている内は、まだまだ子供ね。そんなことばっかりしていると、
あの子達に先を越されちゃうわよ・・・・・・・・・・・・ふふふ、人の事は言えないんだけどね、私には。」
「そうねぇわたし達、あの子達の親代りのつもりだったけど、それこそ自分たちが結婚する前にお婆さん代りになりかねないわね。」
ミサトの言葉には明るさが大分戻ってきていた。思いの丈を吐き出してふっきれた感じだった。
リツコはミサトの肩に乗せていた左手を上に上げると、ポンと叩いて
「レイとアスカを、わたし達二人して煽っちゃったけど、今頃どうなってるのかしらね。仕事よりもそっちの方が心配だわ。」
「アスカったら可愛いんだからぁ。思わず悪戯心を起こしちゃって、危ない誘惑の方法を教えちゃったしなぁ。」
「怖い事言うわねぇミサト・・・・・・でもそういう私もレイに余計なことまで喋っちゃったような。」
ミサトとリツコが二人して第三新東京市を離れるという事は、ネルフの実務についてはそれぞれの部下の頑張りもあって、
支障が無い事は予測された事だったが、むしろ問題なのは安全弁を外した事によってシンジを挟んで対峙する、レイとアスカの
微妙な関係が待った無しの状態になった事だろう。余談だが、自称保護者の二人が北海道に向かって二日後に、シンジの姿が
第三新東京市から忽然と姿を消すという事件が発生していた。レイとアスカが学校もそっちのけで血眼になって探しまわった様だったが、
どうしても見つけ出す事は出来なかった。そして二人が第三新東京市に帰ってきた頃に諜報二課によって、
かつてアスカがダイエットに励んだ事のある、廃屋の水の枯れたバスルームで発見された。
発見当初、シンジは「女の子は怖いや・・・・・・カヲルく〜ん・・・・・・」と消耗しきった声で呟いていたらしい。
もちろんそんな事は、笑っていたり、突然すすり泣いたりしながら日が暮れる前に摩周湖に辿り着いた二人には、知る由もなかった。
20世紀には北海道の観光名所として有名だった摩周湖であったが、激動の時代を経てきてか、夕方人影はほとんどなかった。
ひんやりとした空気を身体いっぱいに受けとめながら、二人は軽い坂道を登って湖が見渡せる高台に辿りついいた。
昼間はかんかんに照っていた太陽が、ちょうど徐々に沈み行く準備を始め様としていた。透明度に優れ、太陽の日差しによって
なんともいえない水面の美を見せてくれる摩周湖は、恒例の霧もなくその沈む夕日を深緑の湖面と見事に溶け合せ、
この世とも思えないほどの幻想的な色調を見せていた。暫く湖面に見惚れていた二人だったが最初に言葉を発したのはミサトだった。
「きれいねぇ・・・・・・湖面の色がなんというか・・・・・・上手く言えないけど・・・・・・ううん・・・・・・素敵だわぁ。」
リツコも「そうね・・・・・・ホント・・・・・・」と軽く相槌をうつ。
「確か『霧の摩周湖』というナツメロがあったわよね。霧がでているところも見たかったんだけど。」
「ミサト、あんたいくつよ。そんな古い歌の名前がよくすらすら出てくるわねぇ。まさか唄えるって言うんじゃないでしょうね。」
「霧にぃ〜抱かれてぇ〜しぃずかに眠ぅ〜る♪」
すかさずミサトは、リツコの呟きに本人自慢の喉で答える。思わずズルっとなるリツコ。なんとか態勢を整えると
「もう分かったわ、私が無様だったわよ。それにしても随分ご機嫌じゃない。」
と幾分悪戯っぽい口振りで問いかける。ミサトは最初のフレーズ以外は鼻歌でメロディをつないでいたが、それを止めて
「だってさぁ〜摩周湖が霧も無く見れるなんてなかなか無い事なんでしょ。霧が立ち込めていたらそれはそれで神秘的なんでしょうけど、
ここまで素敵な湖面は拝めなかったかもしれないじゃない。そんなに何度も来れるって訳じゃないんだから、超ラッキーて所じゃない。
なんかさぁついているっていうか、ネルフに帰ったら良い事ありそうな気がすんのよ。」
と、然も嬉しそうに呟いた。リツコはそれを聞くと、にまっと怪しい笑みを浮かべて
「知らなかったのか、葛城。晴れた摩周湖を拝めた人間は婚期が遅れるっていう言い伝えがあったんだぞ。」
意地悪に加持の声色を真似て話しかけた。効果はてきめんだった。再びミサトの肩がワナワナと震え出して
「そうよね・・・・・・私は酷い女なんだもんね・・・・・・シンジ君に酷い事をした・・・・・・加持君を捨ててしまった。
優しさの欠片もないずるくて臆病な人間なのよ・・・・・・私は結婚する資格なんてない。」
「どっかで聞いたような気がするわね・・・・・・それ。ごめんごめん、ミサト悪かったわ。」
さっきまで楽しそうに唄っていたと思ったら、まるでジェットコースターの様に感情を上下させるミサトに、
流石のリツコも本当に反省したのか、頭を深々と下げて謝った。暫くその詫びの言葉にも関わらず、たそがれていたミサトだったが、
リツコが数回謝り続けて、そろそろ疲れてきた頃合を見計らった様に、リツ子の方にまだ赤みの残る瞳を向けると、
「牛乳ソフトクリームおごってくれる♪」
再び笑顔を全開にして、おねだりモードに突入した。ミサトの余りの豹変ぶりにリツコはガクっとうなだれて
「もうあなたには敵わないわ。好きにして・・・・・・牛乳でもイカスミでも好きなだけどうぞ。」
と呟くのが精一杯であった。ミサトは「イカスミと聞いたら、うに丼も食べたくなったなぁ♪」と微笑みながら、
閉店の準備をしていた、売店に駆け足でむかっていった。その後姿を見つめながら、リツコは優しく微笑んでいた。
ホイヤーが五時を示していた。二人はエランに乗りこみ、摩周湖のある山を下り始めた。
リツコはハンドルを握りながら、ミサトに問いかけた。
「どお〜今日はもう疲れたかしら。健康ランドにでもいって温泉に入り、大好きなエビチュで乾杯する?」
「う〜ん。摩周湖は・・・・・・牛乳ソフトも腹いっぱい堪能したけど、ちょっちまだ物足りないわね。前にリツコ言って無かったかしら?
釧路の方に下ると凄い湿原があるよって。それも見てみたいなぁ〜」
「もう直ぐ夜じゃない、湿原はどっちかというと早朝の方がいいわよ。せっかく行くんだったら。
それじゃぁねぇ〜まだ満足できない欲張りなミサトの為に、とっておきの所へ連れて行ってあげるわ。」
リツコはそう答えると、エランをいったん止めて帆を張った後、ハンドルをきって更に道東へ向かってアクセルを踏みこんだ。
そのうちにすっかり辺りも暗くなり始め、道路は対向車の影も無く、エランが心地よいエンジン音を鳴らせながら軽快に進んで行った。
走る事約一時間余り、国道も外れ、田舎の一本道を走り、坂を少し上るとやがて展望台の様な円柱状の建物が見えてきた。
エランが静かに停止する。リツコが「着いたわよ。」と一声かけてドアを空けた。
ミサトは坂を登る途中に『開陽台』という看板を見かけたのを覚えていた。彼女もリツコに続いて外に出た。
かなり薄暗くなってきていたが、リツコは急ぎ足で正面の展望台の階段を登って行った。ミサトも続く。
展望台はたいして大きい建物ではなかった。階段を二階分くらい登ると、直ぐに円柱状の建物の屋上に出た。
階段を登りきったミサトにむかって先に屋上に到着していたリツコが突然大きな声でミサトにむかって叫んだ。
「見てごらんなさい。この円状の屋上のどこからでもいいから・・・・・・下の景色をそして・・・・・・輝き始める星達を・・・・・・」
「!!!」
ミサトは声も出なかった。ただただ見惚れていることしか出来なかった。
彼女の目に写ったのは、360度に広がる圧倒的な景色であった。かなり薄暗くなっていたが、それでも地平線が自分を中心にして
円状に広がっている様子が。まるで地球の中心・・・・・・臍の場所に来ているような、なんともいえない壮大な景観であった。
そして上空を見上げると・・・・・・
雲一つ無く晴れ渡った空が、どんどん濃いグレー色に変わりだし、星達が瞬き始め・・・・・・それは段々と数を増し・・・・・・
天然のプラネタリウムが二人を包みこんでいった。
何時間そこにいたのだろう、すっかり真っ暗になり。数え切れないほどの星達を、二人は屋上にねそべりながら見つめていた。
お互いずっと声は発していなかったが、ミサトがようやく口を開いた。
「12時をまわっちゃったんじゃない・・・・・・リツコ・・・・・・寒くない・・・・・・」
「私は平気よ・・・・・・寒さなんて忘れていたわ。あなたもでしょ・・・・・・」
「そうね。エビチュの事もすっかり忘れていたわぁ・・・・・・なんかさぁ、今日の私は笑ったり泣いたり喚いてばっかりだったけど、
ここに来て、360度のパノラマを見て、そしてこの星達を眺めていたら、今までウジウジしてた事がどうでも良くなっちゃった。」
「それはよかったわね。」
「今度は加持と見に来たいなぁ。ドイツから帰ってきたら必ず誘おう。もし、ここでプロポーズしてもらったら、嬉しいだろうなぁ・・・・・・」
「・・・・・・」
「シンちゃんにも見せてあげたいな・・・・・・アスカにも・・・・・・レイにも・・・・・・みんなにも・・・・・・」
「ありがとう・・・・・・ミサト・・・・・・」
「リツコ・・・・・・ありがとう・・・・・・あなたは私にとって生涯かけがえの無い親友だわ・・・・・・」
「私も同じよ・・・・・・あなたとここに来れて、いっしょに夜空を眺める事が出来て・・・・・・」
一方その頃、第三新東京市を展望できる小高い丘には、二人して必死にシンジを探したものの、
今日も叶わなかったレイとアスカが、北海道の二人の様に寝そべって夜空を眺めていた。
第三新東京市も、昼はかんかん照りで夜になっても気温は下がらず、雲一つ無い夜空に星達が瞬いていた。
「バカシンジは、どこに逃げたのかしら・・・・・・・あんたと二人で第三新東京市の夜空を見上げたってね・・・・・・」
「碇君もどこかで私達と同じ様に夜空を見上げているのかしら・・・・・・三人で眺めたかった・・・・・・こんなにきれいなのに・・・・・・」
「レイ・・・・・・」
「何・・・・・・アスカ・・・・・・」
「ミサトとリツコが帰ってきたら、今度は私達三人で北海道に行かない。」
「赤木博士の部屋に北海道観光ガイドが置いてあったわ・・・・・・後で二人で見てみましょう・・・・・・」
「ホントにぃ・・・・・・シンジはどこに行っちゃったのよぉ・・・・・・」
「きれいねリツコ・・・・・・本当にありがとう・・・・・・」
「帰ってくるわ・・・・・・必ず・・・・・・碇君は・・・・・・アスカ!見てっ」
「ミサト!見てっ」
「流星だ!」
******後書き******
この作品を北海道で大変お世話になった、ま〜くさんに捧げます。
柴レイ
柴レイさん、本当にありがとうございました!!
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