引き分け

画面の表示がそう告げると共に、僕とミサトさんは互いに顔を見合わせて、ふうっ、と息を漏らした。

「結構やり込んでますね?ミサトさん。」
「まーねー。やっぱ判るぅ?」
「ええ。かなりの手だれですよ。」
「シンちゃんもね。」

互いにニヤリと笑いあう。

「……そんなの……ずるい……。」

そんな僕の側で、アスカはブチブチと文句を言っていた。
そのアスカは僕の側で僕の使っている毛布を身に巻き付けてうずくまっている。
で、アスカがさっきまで着ていた筈の何時もの服は、下着も含めて、ミサトさんの側に置かれている。
この状況の意味する事とは……解るよね?

「あらぁ?そんな酷い言い方って無いんじゃな〜い?あたしはズルもイカサマもな〜んにもしてないんだからねぇ……。」
「そうだよアスカ。ちょっと考えれば解る事じゃないか。大体、ミサトさんが何の勝算も無しに勝負を挑んでくると思う?……昔はともかく。」
「……くっ……騙されてたって言うのね……。」
「あのぉ……二人してさりげなくコケにしてない?」


Tomi's EVA vol.26
アスカ様誕生日記念SS

ちょっと考えて


事の始まりは、アスカの誕生パーティーが終わった直後に遡るみたいだ。
夕方からみんなで祝う為に集まっていたんだけど、夜遅くまで騒ぐと言う事はしないで、
21時頃にお開きとなってしまっていた。と言うのも、丁度期末試験の時期と重なる為であって、
『誠に運が悪い。』としか言いようが無かった。

パーティの終盤は、みんなでテレビゲームをやっていた。みんなが帰ってからもそのまま置いてあったゲームを、
僕が後片づけをしている間に、ほろ酔い加減のミサトさんがやり始めたそうだ。
それをお風呂から上がってきたアスカが見つけて、その様子を珍しそうに見ていたらしい。それで、それを認めたミサトさんが一言。

「何ぃ〜アスカァ。あたしがゲームするのがそんなに珍しいのぉ?」
「思いっきりね。」
「ふぅ〜ん……じゃあアスカ、あたしと一勝負してみない?」
「え?勝負!?……もしか、それで?」
「そう、これで。」

アスカの問いにコントローラーをヒラヒラさせて答えるミサトさん。
アスカは一瞬考えたような表情を見せた後……

「……勝ったら、何くれる?」
「あらら!?報酬を要求するかね?普通。」
「ただやるだけじゃあスリルも何もあったもんじゃないでしょ?それに、アタシが勝つに決まってるじゃない。」
「ふ〜ん……良いわ。じゃ、アスカが勝ったらアスカの欲しいものを何でも買ってあげるわ。で、あたしが勝ったら何くれるの?」
「ミサトが?そうねぇ……。」
「う〜ん……こうして考えてみると不公平ねぇ。何にも取れないじゃな……あ、アスカ有ったわ。取るものが。」
「へ?な、何!?」
「それ。」
「それって??」

疑問符を顔に貼り付けたアスカに、ミサトさんはアスカを指さしてこう言った。

「服。」
「へ??」
「このゲーム、二本先取でワンステージなのよ。だから、ワンステージ毎の勝敗でカウントしましょ。
 アスカが勝てば購入限度額を1万円上げる。あたしが勝てばアスカが一枚脱ぐ。
だから、アスカが全部脱いだ時点での”アスカの勝ち星×1万円”が賞金・購入限度額って事で、どう?
勿論、途中棄権はOK。その時点で賞金は計算するわよ。」
「うっ……わ、分かった。それで良いわ。」
「それで、今着てる服は何枚?」
「……3枚。」
「3本ゲットで終わりか、結構結構……ああっと、アスカ、脱いだら日付が変わるまでそのままで居てもらうからね。」
「ええっ!!」
「さぁどうするのぉ、アスカさぁん?」
「う〜っ……やったろうじゃない。日付が変わるまで勝ち続けてやる……。」
「おおっ♪その意気その意気!……じゃ、始めるわよ。」
「よしっ!いつでも来なさい!」
ちょ!ちょっと待ってよ!!

片付けが一段落着いたからと、二人の会話を後ろで聞いていた僕は、思わず声を上げた。
その声に、アスカはあからさまに不機嫌な雰囲気で振り返った。

「なぁによぉ、バカシンジぃ。」
「ちょ、ちょっとは、ぼ、僕の事も考えてよ!僕は男だよ!?」
「なあに言ってんのよ!アンタオカマにでもなったってぇ〜の!?……あそっか。良いからさっさと寝なさいよ。
今日は二度と出てくるんじゃないわよ!」
「な、何言ってんだよ!僕にはまだまだやる事残ってるんだ!」
「バカシンジの癖につべこべ言わない!もし覗こうもんなら、命の保証はしないわよっ!!」
「そっ、そんな勝手に!……」
「ほら!とっとと部屋に入ってろ!」

僕は、有無を言わさずアスカに部屋に押し込まれてしまった。
ホント、アスカって言い出したら聞かないからなぁ。

「どうなっても知らないよ……。」

ああ、アスカの目の前でこれが言えたらなぁ……。

「アスカったら、全くもう……お風呂にも入れやしないじゃないか。」

ベッドに横になって、襖の向こうから聞こえてくるアスカの掛け声を聞きながら、そう文句をこぼす。
しかし、そんな事してても埒が明かないので、S-DATを聞きながら時間が経つのを待つ事にした。
心地よく流れる曲を押し退けるかの様に聞こえてくるのは、やっぱりアスカの声だった。最初の第一声は「やったーっ!!」だったと思う。でも、その後に聞こえてきたのは、「うっそ〜っ!?」だとか、
金切り声だとか、どうも旗色が良くない様な感じがする声ばかりだった。
そして、最後に「そ、そんなぁ〜っ!!」と叫んだのが聞こえたきり、静かになってしまった。

「だから言わんこっちゃ無いのに……。」

僕は、ベッドから毛布を剥がすと、殴られるのを承知の上で、そっと部屋の外へ顔を出した。

アスカは、画面を呆然と見たまま動かなくなっていた。幸い、服はまだ着たままだった。どうやら立て続けに勝負したらしい。
血筋の所為だろうと思う、アスカは周りが羨む程肌が白い。本当に透き通る様で奇麗なんだけど、
その所為でちょっとした感情の変化ですぐに顔色が変わる。この辺が”猿”と揶揄される原因の一つだと思うんだけど……
おっと、今はそんな事関係無いね。
表情は本当に呆然としていてどんな感情なのかは読み取れなかったけど、顔色はまさに”真っ青”だった。
ミサトさんは、僕が覗いているのに気が付くと、「あちゃ〜っ。」という表情で僕の方に顔を向けてきた。
ミサトさんにも予想出来なかった事態になってしまってたみたいだね。
何はともあれ、これで僕の命は保証された事になる。僕は部屋から出て、アスカの側まで歩み寄った。

「アスカ……。」
「ふふっ……無様ね、アタシって……こんな簡単に負けちゃうなんて……。」

そう言って、アスカは膝の間に顔を埋めてしまった。
困ったな。こういう時どう声を掛けたら良いのか解んないよ。でも、何か言わないと駄目だって言う気がしていたから……。

「アスカ……元気出して。」
「うるさい!放っといてよ!!」

そう叫んで僕を睨み付けるアスカ。たちまち僕は怯んでしまった。やっぱり、こう言う時は何をやっても駄目みたいだ。
しかし、アスカの目の端がキラリと光ったのを見た瞬間。僕の中で何かが変わった様な気がした。
このままじゃいけないと言う気持ちと共に……。
僕は、持っていた毛布をアスカに掛けると、静かに語りかけた。

「……悪いけど、それ貸してくれないかな?」
「えっ?……」
「その、コントローラを、さ。」
「う、うん……。」

僕は、真っ青なままで不思議そうな顔をするアスカからコントローラーと受け取り、場所を譲って貰った。

「ミサトさん、僕も一勝負お願いします。」
「え!?……い、良いけど……どうしたの?いきなり。」
「いえ、一度ミサトさんと何か勝負してみたかったんですよ。それだけです。」
「……そう、分かったわ。それで、何を賭けるの?」
「そうですね……『えびちゅ』の一日の割当を賭ける事にしましょうか。ミサトさんの一勝に付き1本です。」
「おおっ(はあと)良いわねぇ!それ乗った!!……あ、それで、シンちゃんが勝ったらどうすんの?」
「そうですね……さっきとカウントを揃える意味で、アスカの服を返して貰いましょうか。」
「……それで良いの?」
「ええ。ホントなら、当番一日分復活とか言いたいところですけど、どうせすぐ元に戻るんですから。」
「たははは……わ、分かったわ。それで受けて立つわ。じゃあアスカ、チャチャッと脱いじゃって。
あ、その毛布羽織ってて良いから。でないとシンちゃんに不利になっちゃうからね。」
「……シンジ、アンタが勝つまで、絶対にこっち向くんじゃないわよ。良いわね?」
「うん。分かってる。」

アスカは、毛布を羽織り直すと、その中でもぞもぞと動き出した。そして、十数秒程で部屋着の上下とパンツの、
合わせて三点の服がミサトさんの前に投げ出された。
そしてアスカは、何故か僕のすぐ右隣に陣取ってうずくまった。

「アンタの戦いぶり、しっかりと見届けてやるからね。負けたら承知しないわよ。」
「解ってる。ボロボロにだけはならないよ。」
「じゃ、良いわね?シンジ君。」
「はいっ!」

ピッ!

勝負

の表示と共に静かな戦いが始まった……。

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そして、今現在に至ると言う訳。

「ふぅ……。」

僕は、一息つく為に一旦コントローラーを手放した。僕の負け星が先行していたからだ。
現在、ミサトさんの手元に有るのは短パンだけ、『えびちゅ』の増量は3本となっていた。

「ミサトさん、正直言って参りました。これほど強いとは思いませんでしたよ。どこで鍛えたんですか?」
「ん〜?……NERVでね、今度アミューズメントに進出しようって話が出てさぁ、それで、あたしが市場調査って事で研究してたのよ。」
「……格闘ゲームを選んだ理由は何よ。」
「ん?『エヴァの思考操縦のノウハウをうまく使えるものを』って事で、あたしが物色したのよ。
処女作ともなると、最初のインパクトが肝心だからね。何と言っても、複雑なレバー操作無しで必殺技が繰り出せる様になると言う
取っ付き易い操作システムが実現するのよ。どう?結構凄いと思わない?」
「確かに初心者には良いかも知れないですね。」
「でも、練習無しで技が出るって言うのも、何かなぁって思う。”鍛えて強くなる楽しみ”ってものもゲームの醍醐味なんじゃないの?」
「ふんふん、それもそうね。それ貰った!
 ま、行く行くはヴァーチャルリアリティやら遠隔操作なんかの分野にも応用するらしいから、期待しててね。
 じゃあシンちゃん、次ぎ行きましょか。」
「あ、はい。」

「……終わった……。」
「”3対3”……結局ドローかぁ……ま、シンジにしては上出来ね。」
「ストレートで負けた人に言われたかぁ無いわよねぇ、シンちゃん?……はい、最後の一枚。」
「ぐっ!……う、うるさいわねぇ。」
「あははは……あ、もうこんな時間だ。さあ、二人とももう寝て下さい。」
「あ、そうね。」
「じゃ、シンちゃん後お願いね〜♪」
「はいはい。」
「じゃあねん(はあと)お休みぃ。」
「”Gute Nacht.”」
「お休みなさい。」

良かった。何とか雰囲気を元に戻す事が出来たみたいだ。
僕は、顔色が戻り、元気な表情で部屋へと戻っていくアスカを、充実した安堵感を感じながら見送った。

****************************************

お風呂から上がって、ベッドに横になろうとした僕は、アスカに毛布を貸したままだった事に気付いた。
取り敢えず、シーツだけをかぶって居たけど、少し寒気がしてきた。でももうアスカは眠っているだろうな。
取り返しに部屋に入ろうもんなら、それこそ命の保障は無いよ。

「参ったなぁ……。」

少し厚着でもしようかと思った矢先、突然襖が音もなく開いた。

「だ、誰?」
「……起きてたんだ……。」
「……アスカ?」

アスカは無言のままベッドの側までやって来て、羽織っていた毛布を僕に掛けると、そのままベッドの端に腰を下ろした。
部屋は最低限の視界が確保出来る程度まで落としてある。だから、俯いているアスカの顔は見えていても、
その表情を伺い知る事は出来なかった。

「……シンジ……。」
「……な、何?」
「……どうして、あんな事したのよ……。」
「”あんな事”って?」
「……どうして、アタシの服だったのよ……アンタにだって欲しいものの一つぐらい、有るでしょ……。」
「……怒ってる?」
「……返答次第。」
「そ、そう……。」

僕にはアスカの問いの真意が解らなかった。
どうして要求を自分の欲求ではなくアスカの服を取り返す事にしたのか?を聞きたいと言うのは解る。でも、そんな事を聞いてどうすると言うのだろうか……。

僕は、さっきの事を思い起こした。僕がミサトさんと勝負する決心を固めた、あの時の事を。
あの時のアスカは泣いている様に思えた。僕は泣くアスカはもう見たくなかった。
アスカには何時も笑っていて欲しかった。だから僕は、その笑顔を取り戻したくて……。
でも、どうしてアスカなのだろうか?……そんな事は解ってるじゃないか。あの時の安堵感が教えてくれてる。僕はアスカが……。
でも、アスカは僕の事をそうは思っていない筈だ。でなければ、何時もあんなに辛く当たって来る訳が無いよ。

僕は、何時もの様に誤魔化そうと思った。でも、ふと考えた。
アスカも今日で16歳。法令では結婚出来る歳だそうだ。そこまでは行かなくても、そろそろ人間関係を拡げていくべき歳だと思う。
どうして、アスカは僕が居るこの家に居るんだろう?多分、生活に困らないから、と言う理由でだと思う。
でも、アスカのこれからを考えると、それでは駄目だと思う。『碇シンジ』という呪縛から解き放たれなくては駄目だと思う。
でも、アスカはこの家から出るつもりは無いだろう。この国で他に身寄りは居ない筈だから。だったら、僕が出ていけば良い。
そうしたら、アスカももっと外の世界を見てくれる筈だ。
僕は心を決めた、『思い切って本心を語ろう』と……そうすれば、アスカは僕に愛想が尽きるだろう。それで僕も出て行き易くなる……。

「……。」
「……答えて。」
「……もう、見たくなかったんだ……アスカの泣き顔を……僕が部屋から覗いた時に、アスカが泣いてる様に見えたんだ。」
「……アタシ……泣いてなんかない……。」
「でも、僕にはそう見えた……それでだと思う。僕は、アスカには何時も笑っていて欲しいんだ。だから……。」
「……どうしてアタシに構うのよ……放っといてよ……。」
「僕だって、厄介事には関わりたくないよ。でも、アスカは放って置けないんだ……アスカだけは……。」
「……どうしてよ……。」
「……。」
「言いなさいよ……。」
「……好きだから……アスカの事が好きだから……それだけだよ。」

その時、アスカが驚いた様に振り返った。
でも、僕は構わず話し続けた。

「多分、一緒に暮らし始めてからそれほど経たない内に好きになっていたんだと思う。何時の間にか、
アスカにだけ感じる気持ちがあったんだ。でも、その時の僕には、それが何なのかが解らなくて……
結局、それが『好き』って感情なんだって気付いたのが、つい最近……一年程前かな?そのくらいだったんだ。
 もし、もっと早くに気付いていたら、あんな事にはならなかったのかも知れない……そう思うと、とても悔しかったよ。
だから、『僕はそんな気持ちを持っちゃいけない』、そう思って、今までずっと心の奥に封じ込めてきたんだ。

 僕、この家を出ようと思ってるんだ……何時までもミサトさんの世話になってる訳に行かないからね。
それに……アスカ、僕なんかみたいな人間に関わっていたら、人生棒に振っちゃうよ?
……今日で16歳だろ?そろそろ、良い彼氏探しでも始めた方が良いよ。だから、邪魔な僕は……!!

僕の独白はそこで途切れてしまった。なぜなら、いきなりアスカに胸ぐらを掴まれて、引き起こされてしまったからだ。
表情がはっきりと判るぐらい近くにアスカの顔が迫る……アスカは泣いていた……。

「……アア、アンタって……このぉバカァーッ!!

バチンッ!!

何で!何でアンタは何時もそうなのよっ!!

バチンッ!!

何時も何時もっ!!

バチンッ!!

自分一人で勝手にっ!!

バチンッ!!

アタシを放ったらかしにしてっ!!

バチンッ!!

アンタはああっ!!

バチンッ!!

どうして解ってくれないのよぉっ!!

どんっ!

「ぐっ!……。」

アスカは泣きながら僕の頬を繰り返し叩き、最後に僕を突き放した。僕は叩き付けられる様に、再びベッドに転がった。

「……さっきはあんなにカッコ良かったのに……ちょっとだけ見直したのに……なんて落差、最っ低!」

アスカがそう吐き捨てるのを聞きながら、僕は、今話した事がどれだけアスカを傷つけてしまったのかを、
頬の痛みと共にひしひしと感じていた。やっぱり僕は馬鹿だった……僕にはアスカを傷付ける事しか出来ないのか?
……やっぱり何も言わずに出て行った方が良かったのか?
しかし、その思考もすぐに遮られてしまった。暖かい感触に包まれている事に気が付いたからだ。
アスカが僕の胸に縋り付く様に抱き付いていた。
アスカの表情は、僕の胸に隠れてしまい、再び見えなくなっていた。

「……出て行ったら良いじゃない。止めはしないわ……でも……アタシも一緒に行く……一人でなんか行かせないから……。」
「そ、そんな、アスカ……。」
「……もう手遅れなのよ……とっくに棒に振っちゃってるんだから……勿論アンタの所為、責任取りなさいよ……逃げてもムダよ、
どこまでも追い掛けてやるから……逃がしはしないから……。」

言葉だけを聞いていたら”執念深い女”と言った感じに受け取られかねないアスカの態度。
でも、僕にはアスカが小さく震えているのがはっきりと判った。
僕は、衝動に駆られて、アスカの背中に手を回した。一瞬ビクッとするアスカ。

「……ゴメン、本当にゴメン……やっぱり僕は……。」
「……そうよ、アンタはどうしようも無い程救い難い大バカよ……
 ……さっきは本当にカッコ良かった。あんな真剣に戦う姿を見るのは初めて……アタシ、アンタの事……惚れ直したわ……。」
「え!?『惚れ直す』って……まさか!?」
「……そうよ。アタシもアンタの事想ってた。シンジの事が好きなのよ。その事に気付いたのは最後の戦いが終わってから……
でも、シンジと同じ、そのずっと前からこの気持ちを持ってたわ。」
「……そ、そんな事って……アスカは僕が嫌いなんじゃ?……」
「ホントバカね……ちょっと考えて見なさいよ……
 どこの世界に嫌いな男と一緒に暮らす女がいるの?
 どこの世界に嫌いな男の作った料理を喜んで食べる女がいるの?
 どこの世界に嫌いな男に自分の部屋の出入りを自由にさせる女がいるの?
 どこの世界に嫌いな男に自分の下着洗わせる女がいるの?
 どこの世界に嫌いな男の目の前で裸同然で居られる女がいるの?
 どこの世界に嫌いな男の部屋に夜中に来る女がいるの?
 どこの世界に嫌いな男に抱き付いて泣く女がいるの?
 どこの世界に嫌いな男に『好きよ』って言う女がいるの?……
 そりゃあ世界は広いから、絶対に居ないとは言えないけどさ、アタシがそんな女じゃないって、シンジは解ってくれてるわよね?」
「う、うん……そうだよ。」
「どうしてそこでどもるかなぁ?」
「ゴ、ゴメ……有り難う、アスカ……。」
「そうよ、このアスカ様が好きだって言ってやったんだから、最大級の感謝が要求されて然るべきなのよ。謝罪なんか要らないわ。」
「うん……有り難う。」
「……ホントよ……ありがとう……。」

暫くの間、僕とアスカは抱き合った体勢のまま動こうとはしなかった。
アスカは何を思いながらこうしてくれているのかは判らない。でも、僕は嬉しさで胸が一杯になっていた。
『アスカが僕を好きだって言ってくれた!』
今の僕にとって、この事は何物にも替え難い喜びだった。

唯、アスカが突然ブルッ!っと震えた事によって、僕の意識はたちまち現実に呼び戻されてしまった。

「!?どうしたの?」
「……寒い。」
「え!?……そっかな??……」
「そうよ。寒いのよ。」
「じゃあ、そろそろ部屋に戻って、ってアスカァ!?

何を思ったのか、アスカは突然僕の隣に潜り込んできたのだ。そして、そのまま僕に寄り添う様にピッタリと抱き付いてきたのだった。
女の子が抱き付いてくると言う初めての感覚に、僕は体中を電撃が走ったような感覚を覚えて、一気に硬直してしまった。

「……シンジって、温かいね……。」
「ああ、あの……。」
「……寒いのはイヤなの……一人で寝るのは寒いの……昔は平気だったけど、シンジが温かいって気付いてからは、
それが欲しくて仕方が無くなったの。」
「……アスカ……。」
「さっきミサトに剥かれた時が決定打になったわねぇ。シンジの温かさが直に伝わってきて……もう耐えきれなくなっちゃった。
だから、ここに来たの。
 もしかしたら、シンジに引導を渡されるかもって思って怖かったわ。アタシ、シンジに嫌われたら、もう生きていけないと思ってるから……でも、来て良かった……。」

そう言って、アスカは少し抱く力を強めてきた。

「そ、そうなの……え?じ、じゃあ、こ、これからも?」
「そ!これから毎日ねっ♪」
「そ、それは困るよっ!僕寝られないじゃないかっ!」
「大丈夫よ。すぐに慣れるって。それに、アタシもお年頃だしぃ……その気にさせれば何だって出来るわよ?」
「うっ!……う〜ん……。」
「ま、とにかく、今日は罰として寝不足になって貰うからねっ!」
「な、何でだよ!?」
「アタシの夢をぶち壊すマイナス思考バリバリの告白!アタシを捨てて出て行こうとした事!あまつさえアタシを泣かせた事!!
……これらの罰よ!良いわね?」
「そ、そんな『捨てる』だなんて!……」
良・い・わ・ね!?
「は、はい……。」
「じゃ、お休みぃ〜。」

アスカは、僕が逃げない様にだろう、両手でしっかりと抱き付き、足まで絡めて、文字通りの”密着”状態で寝入ってしまった。
女の子って、神経太いよなぁ……はぁ……。

でも、僕はこれで良かったんだって思う。だって、こうしてアスカが僕にだけ寝顔を見せてくれてる。月並みだけど、
『天使の様な』って形容がピッタリだと思う。
これからも頑張ろう。この笑顔を見る為になら、何だって出来るよ……。
その時、僕はそう思った。

****************************************

翌朝、何時もの様に三人揃っての朝食。唯一つ、ミサトさんが魂が抜けた様に涙を流していると言う事だけを除いては。
そんなミサトさんを横目に見ながら、アスカがご飯を頬張ったまま、こう言い放った。

「ミサトも案外バカねぇ〜。ちょっと考えりゃ済む事じゃない。大体、この天下の専業主夫であるシンジが、
何の引き換えも無しに『えびちゅ』の増量を許す訳が無いじゃない。」
「しょ、しょんなぁ!……」
「ビールって、案外お腹膨れるんだってねぇ。それで我慢しなさいよ。」
「うえ〜ん!こんなんで足りる訳無いじゃな〜い!!シンちゃ〜ん!ひもじいよぉ〜っ!!」
「……御馳走様。大丈夫ですよ。ちゃんとバランスは考えてありますから。死ぬ事は無いですよ。」
「……シンジって、案外怖い性格してるのよねぇ。」
「そんな冷たい事言わないでぇ!!……そうか!アスカの泣き顔は見たくなくて、あたしのは見たいって言うのねぇ〜っ!!」
「「げっ!!何でそれをっ!?」」


<終>


<後書き>

こん**は。

この話のネタの発端は、まあ判ると思います。
なかなか勝てないんですよ、麻雀。

儂はMacユーザーなので、「VIRTUAL PC」なるエミュレーターでWin環境を使っています。
ところが、ガイナのゲームは麻雀だけ動作保障外で動かせなかったんです。
ですが、この前の新ヴァージョンから動かせる様になって喜んでいます。

ところで、儂は前作も持ってるんですけど、15禁と18禁の違いって、何なんでしょうかねぇ?

では、また御会い出来ます様に……。


跡見さん、本当にありがとうございました!!

跡見さんへの感想メールを!
tomi-yoshina@mba.nifty.ne.jp
までお願いします。


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