「ちっ!全然切りがないじゃないか!」
パンッ!パンッ!
「鉄砲二丁で持ち堪えてるだけましじゃないのか?」
パンッ!
銃声と爆音が轟き、硝煙と血腥い臭いが立ちこめる第弐発令所。
発令所最下層をほぼ占領した戦略自衛隊と発令所オペレーターとの銃撃戦は膠着状態を維持したままであった。
圧倒的火力と百戦錬磨の兵士を擁する戦自を相手にここまで持ち堪えられていると言う事は、喩え地形的条件やMAGIを無傷て手に入れたいと考えている戦自の事情が有利に作用しているとは言え、奇跡と言っても過言では無かった。
「おいおい、本当に二丁なのか!?」
「下の分まで数える余裕が有ったら、奴等を二・三人黙らせてるよ!」
「御もっとも!」
パンッ!パンッ!
「……どうやら、もうすぐ奴等は黙ってくれそうだよ。」
「え!?」
「ど、どう言う事ですか!?」
突然の冬月の言葉に、応戦を続けながらも疑問の声を上げる日向と青葉。
しかし、冬月がそれに答える間もなく、二人は即座に撤退していく兵士達の姿を目の当たりにする事となった。
「……どうなってるんだ!?……」
「自分で自分の首を絞めた、と言う事だよ。」
「??」
戦闘に全神経を傾注していた二人には状況が掴める筈は無く、全ての状況をつぶさに観察していた冬月のみが容易に達し得た結論だった。
NERV本部施設占領とエヴァの接収、これが戦自の目的だった。しかし、相手は通常兵器では歯が立たないエヴァを擁するNERVである。一個師団もの戦力投入と言う大袈裟とも言える体制で作戦遂行に望んだ。
そして、恐怖の産物とも言える無差別発砲命令。更に、エヴァの起動を阻止する為に、輸送・補給施設を中心に徹底的に破壊した。但し、NERVの全機能を司る発令所とエヴァを格納するケージ、そして、必要最小限の突入・脱出のための経路は占領するに留めていた。
余談ではあるが、同時に出されていたパイロット抹殺命令は、NERV作戦部長の迅速な行動によって達成される事は無かったと言う。
NERV側の予想外の抵抗に遭い、攻めあぐねている間に、N2弾道弾の投下、エヴァ弐号機の起動、”エヴァ・シリーズ”の降臨と弐号機との激闘、と言った事態が立て続けに起きた為に、戦自は作戦続行を断念せざる終えなくなった。事実上の”作戦失敗”である。
エヴァ弐号機との直接戦闘と、エヴァ弐号機VS”エヴァ・シリーズ”戦の巻き添えにより、ジオフロント地表に展開している部隊はほぼ戦闘不能の状態に陥りつつあった。そして、その影響は施設内部との経路断絶と言う形で、施設占領部隊にも襲い掛かって来ていた。
複雑さ故に迷宮、いや、魔宮と化していたNERV本部。戦自は作戦行動を有利に進める為に通路の大部分を破壊していた。そして、N2弾道弾の影響により、確保していた通路の約35%が使用不能となったが、ここまでは計算の内であった。
だが、ジオフロント地表でエヴァ同士の戦闘が始まると、更に50%もの通路が使用不能となった。あまりの振動に、度重なる爆破の衝撃で脆くなっていた壁面が持たなかったのだ。
『今の内に撤退しないと、退路を断たれて部隊は全滅する。』
脱出不能となった兵士達からの救助の急報が増えるに連れ、そう恐怖した占領部隊指揮官は、遂に上層部に無断で『全部隊、NERV本部施設内部より撤退せよ。』と命令を発するに至った。
しかし、実際に撤退出来たのは本部施設に突入した部隊の内の約1/4、第弐発令所周辺に居た部隊のみであった。
残り1/4は交戦中に死亡または移動不能となった者であり、残りはエヴァ初号機起動確認後、消息不明となった者達であったとされる……。
****************************************
戦自の部隊が撤退し、平静を取り戻した第弐発令所。だがしかし、誰も安堵の感情を覚える者は居なかった。何故なら、メインスクリーン上に展開されていた光景に、全員が釘付けとなってしまったからであった。
Tomi's EVA vol.24
Series『Zweigbahn』
その1.5
その時ジオフロント地表では、丁度エヴァ弐号機と”エヴァ・シリーズ”との戦いが終盤に差し掛かりつつあった。
エヴァ伍号機からエヴァ拾参号機の計九機からなる”エヴァ・シリーズ”。最大の特徴は『S2機関』と呼ばれる永久機関を実装した事。これにより、アンビリカル・ケーブルの束縛を受ける事が無くなり、翼を装備した事とも相まって、作戦行動可能時間、範囲共に飛躍的に増大した。
しかし、肝心要のパイロットがそれに付いて行ける訳が無い。そこで、ダミーシステムに拠る遠隔操作を実現する事によってその問題を解決した。しかし、本当に操縦が出来ていたのかは甚だ疑問ではあるが。
アスカが駆るエヴァ弐号機と”エヴァ・シリーズ”との戦闘は、活動限界まで残り三分を切っていた弐号機の方が有利に進めていた。
『機体の一部分を捻り潰す』
自分達の戦闘経験を基にしたアスカの戦法は、至極簡単でありながら、確実に”エヴァ・シリーズ”を活動停止に追い込んでいた。
誰の目にも、エヴァ弐号機=アスカの勝利は確実と思え、それを疑う者は居なかった。
しかし、アスカは忘れていた、碇シンジの初陣の時の事を。
そして、アスカは知らなかった、ダミープラグで起動したエヴァがどう言う状態にあるのかを。
そして、アスカは知らなかった、S2機関が持つ無限の脅威を。
****************************************
「弐号機、活動限界まで後一分!!」
「ギリギリだな。」
「大丈夫よ。アスカならきっと、大丈夫。」
パニック状態から何とか脱した伊吹が、ノートパソコンでエヴァ弐号機の状態を逐次報告している。日向と青葉も側に陣取ってモニタを見詰めていた。
戦自が何時また突入して来るか判らないので、三人ともコンソールの陰に隠れて床に直接座り込んでいる。
「それにしても、初号機はまだ出ないのか?」
「シンジ君は何とかケージに辿り着いたみたいだ。只、ケージに居るのはシンジ君、一人だけの様だ。」
「……じゃあ、葛城さんは……。」
「……ケージからじゃ指揮は出来ないからな……。」
「……そうだな。」
落胆の色を滲ませる日向に、青葉が希望的観測で励ました。
「弐号機、活動限界まで後三十秒!!……あ、ちょっと待って……初号機起動を確認!」
「よっしゃあ!!」
「何とか間に合う!」
伊吹の報告に喜色が混じる。残る二人も釣られて気勢を上げたが……。
「……そう言えば、射出経路は?」
「「……!、不味い!!」」
ふと伊吹が漏らした疑問に、弾かれる様にコンソールに飛び付いた日向と青葉。二人は急いで射出経路を探したが……。
「……全部やられてる。」
「こんな時に!……クソッ!!」
ダンッ!!
結局、射出経路は全て使用不能となっている事が判り、日向がやり場の無い怒りをコンソールに叩き付けた。
「初号機、ATフィールドの展開を確認!!」
「!、いかん!!全員衝撃に備えろ!!」
伊吹の報告に、何が起ころうとしているのかを一早く察知した冬月が号令を飛ばした。
しかし、それに全員が従う間も無く、巨大な衝撃が発令所を襲った。
「……収まったか……。」
「ってぇ〜!こんな仕返ししなくったってよぉ……。」
「いたたた……。」
「ふぅ……これは堪えたわい……。」
青葉と冬月は何とか持ち堪えたが、日向は堪え切れずに額をコンソールに打ち付けてしまい、床に居た伊吹はそのまま床面を2m程投げ出される様に滑ってしまい、足と肘を擦り剥いてしまった。
その他のオペレーター達も一様にダメージを受けている様だった。それでも、動ける青葉を始めとした何人かは衝撃の原因と被害状況を探る為に作業を開始した。
しかし、それを遮るかの様にアスカの悲鳴が響き渡った。伊吹は慌ててノートパソコンに駆け戻ったが、画面を一目見るなり愕然としてしまった。
「……エヴァ弐号機……活動、停止……頭部、破損……。」
「頭部だって?」
「どうしてなんだ!?」
やっとの事で、伊吹は声を絞り出した。それに日向と青葉は疑問を感じずにはいられなかった。
活動停止の原因は判っている、もう内部電源が切れておかしくなかったからである。しかし、それだけではさっきの悲鳴と『頭部破損』の理由が判らないのだ。
しかし、メインスクリーンは、さっきの衝撃の影響からか、沈黙してしまっていて使い物にならなくなっており、ノートパソコンのモニター表示だけが頼りとなっていた。三人で食い入るように覗き込む。
「これは……”ロンギヌスの槍”か!?どうして!?……。」
「!……そ、そんな……”エヴァ・シリーズ”、活動、再開……。」
「……そんな、馬鹿な……。」
「全部倒した筈じゃ……。」
「……まさか……あんな状態で……どうして動けるのよ……。」
手足が砕け、千切れたままの者。胴体が脊椎だけで辛うじて繋がっている者。頭部が砕け、体液が吹き出たままの者……本来なら、起動は不可能な筈の損傷を負った”エヴァ・シリーズ”達。彼らは何事も無かったかの様にユラリと立ち上がると、既に沈黙したエヴァ弐号機の方を見て口を開いた。それはあたかも獲物を見つけて薄ら笑いを浮かべている様に見えた。
それを見た三人は戦慄を覚えた。
「不味い!」
「止めを刺すつもりか!?」
「アスカ!早く逃げて!!」
三人が口々にそう叫んだ瞬間、ノートパソコンのモニターがブラックアウトした。まるで、叫びを拒否するかの様に。三人は、只呆然とするしかなかった。
と、その時、シンジの絶叫が発令所内に響き渡った。そして、一寸遅れて復帰したメインモニターには、弐号機に飛び掛かる”エヴァ・シリーズ”と、同じ様に”エヴァ・シリーズ”に飛び掛かるエヴァ初号機の姿が映し出されていた。
「初号機……暴走しています……。」
「シンジ君!」
****************************************
まるで、死体に群がるカラスの如く、翼をばたつかせながら弐号機に群がる”エヴァ・シリーズ”。
距離のハンデにより到達が遅れた初号機は、両手を”エヴァ・シリーズ”達の内の二機(=八号機・拾号機)の背中、胸椎の辺りに、飛び込んだ勢いのまま突き立てた。一瞬身体をのけ反らせる二機の”エヴァ・シリーズ”。
初号機は低い唸り声を上げながら、手を抜こうともがく二機共そのまま高々と持ち上げ、そのまま両手を握り締めた。
何かが砕ける鈍い音と共に沈黙するエヴァ二機。彼らは、初号機によって椎骨ごとダミープラグを破壊されたのだ。
初号機は雄叫びを上げると共に、両手のエヴァを事態に全く気付いていない傍らのエヴァに叩き付けた。二機の仲間(=伍号機・六号機)の腰を砕いて、地面に叩き付けられる二機のエヴァ。
この時の轟音で、漸く他の”エヴァ・シリーズ”達も事態を知った様だ。即座に弐号機から離れて飛び立つと、初号機を取り囲む様に布陣し直した。
しかし、その間の初号機の動きは速かった。腰を砕かれ、動きがままならなくなっている二機のダミープラグを先の二機と同じ様に握り潰し、弐号機に刺さっていた槍を引き抜くと、振り向き様に、今将に着地しようとしていた一機に投げつけた。
体勢を整える隙を突かれた格好となったそのエヴァ(=九号機)は、何も防御手段を講ずる事も出来ずに、槍に胸部を貫かれた。
しかし槍の勢いはそれだけでは止まらず、辛うじて脊椎で繋がっていた下半身をその場に残し、上半身だけをそのまま持ち去った。
そして、槍は上半身だけを大地に縫い付け、下半身は体液を噴き上げ、そのまま崩れ落ちた。
その間も、初号機の動きが止まる事は無かった。
そのまま一番距離の近いところに居たエヴァ(=拾参号機)に突進し、右手を胸部に突き立てる。その衝撃で拾参号機の胸部装甲は砕け散り、初号機に握られた状態のコアが露出した。初号機の手を引き剥がそうとする拾参号機。しかし初号機が再び咆哮を上げると、そのコアに亀裂が走り、拾参号機は一瞬ビクッと痙攣した後、動きを止めてしまった。
しかし、初号機が弐号機の側から離れたこの隙を突いて、残りの”エヴァ・シリーズ”達は再び弐号機に食らい付いた。それに気付いた初号機は、振り向きながら右手を振り回す。それによって生じた、A.T.フィールドの壁が”エヴァ・シリーズ”達を吹き飛ばし、地面に叩き付けた。初号機は吹き飛ばした”エヴァ・シリーズ”達を睨み付けながら、弐号機の下に駆け戻った。
”エヴァ・シリーズ”達は、体勢を素早く立て直すと、めいめい、側に有ったロンギヌスの槍を手にした。それを見た初号機は、右手の掌を天にかざすと、三度咆哮を上げる。数瞬の後、初号機に右手には月面から戻ってきたロンギヌスの槍が握られていた。
残り三体となった”エヴァ・シリーズ”達は、初号機に向かって一斉に槍を投てきした。A.T.フィールドで防御する初号機。
槍はあっさりとフィールドを突破してきたが、その一瞬の余裕を使って体勢を整えていた初号機は手に持つ槍で、苦もなく槍を払い除ける。軌道を変えた槍はそのまま地面に突き刺さると、木っ端微塵に砕け散ってしまった。所詮はコピーと言う事だったのか!?……
初号機は、槍を構え直すと、また一番近いエヴァ(拾壱号機)に突進する。只、初号機は一直線にではなく、何故か大きく回り込む様に走っていた。
ロンギヌスの槍を失った拾壱号機はA.T.フィールドで防御を試みるが、初号機は槍の力で簡単にフィールドを突破し、拾壱号機の胸部に槍を突き立てた。
槍は、拾壱号機のコアを貫き、先端が背中から飛び出している。
初号機はそのまま槍を押し続け、拾壱号機を地面に押し倒す。そして初号機は、槍を杖代わりにして、地面を蹴って飛び上がった。
飛び上がった初号機の行く先は、三度弐号機に襲い掛かろうとしていた残りの二機(=七号機・拾弐号機)であった。
完全に不意を突かれた二機は、上空から襲い掛かってきた初号機に対して為す術もなく押し倒され、機体は少しばかり地面にめり込んでしまった。
暫くして、初号機は立ち上がって、弐号機の下に歩いて戻っていった。明らかに戦闘態勢を解いていたが、その後に残された二機のエヴァはそのまま沈黙してしまっていた。
初号機が二機に到達したと同時に、両手でそれぞれのコアを完全に打ち砕いていたのだ。
初号機は弐号機の下に戻ると、両目の輝きが消え、そのまま糸の切れたマリオネットみたいにその場に崩れ落ちた。
こうして、戦いは終局を迎えたのだった。
<後書き>
こん**は。
今回は、話の筋を補う為に用意した話であります。
このシリーズにおいて、小数点以下がつく話は、こう言った、言わば外伝的な要素の話(シンジもアスカも出て来ない話)になります。
今回の最大の目玉は、初めてエヴァを出した事(笑)と、戦闘描写に挑戦した事です。
でも、書いてて思いました。
『もう戦いを書くのは止めよう』
全然ダメダメです。お蔭で調子が狂っちゃって他の事に手が付けられなくなっちゃいましたから。(苦笑)
さて、お次はちょいと痛くしますよ。ここでやらなきゃ後が続かないので。
お隣さんとは偉い違いだ(笑)。
では、また御会い出来ます様に……
跡見さん、本当にありがとうございました!!
跡見さんへの感想メールを!
tomi-yoshina@mba.nifty.ne.jp
までお願いします。