……シンクロ率、ゼロ……セカンド・チルドレンたる資格無し……。
……もう私には何も無いわ……。
……もう、私がいる理由もない……だって、誰も私を見てくれないもの……。
……もう、生きてく理由もないわ……。

大きな音がした、暫くして男の声がする。

「惣流・アスカ・ラングレーだな?」

……今更何の用よ……何に価値も無いのに……もう、どうでも良いわ……好きにすれば……良いじゃない……。
何処かに運ばれるのを感じながらそう思っていた。
……もう、どうでも、良いわ……。


Tomi's EVA vol.22-2
Series『Zweigbahn』

その1〜ASUKA〜


今、自分が何処に居るのか判らない、何をしているのか判らない。
周りは白い靄が掛かった様な……いや、暗やみの中か?……まあそんな事はどうでも良いわ。
そこで私は何をしているのか……立っているのか?横になっているのか?歩いているのか?走っているのか?
……やっぱりそんな事はどうでも良い。

私が何処に居ようが何をしていようが関係無いわ。だって、私にはもう一片の価値も無いから。
ここにいる理由が無いから。でも、何でここに居るんだろう……追い出されないから、只居るだけ。
そう、何も無いから、誰も見てくれてないから……。

もう、死んだも同然ね……でも、何で死ななかったのかしら?……その気になれば、出来た筈よね、自殺……。
……そうよ、死にたくないのよ、まだ私は生きていたいのよ、惣流・アスカ・ラングレーと言う人間を止めたくなかったのよ……。
……だからって、足掻いた揚げ句がこのザマか……バカね、私は……。
私は深く沈む事にした。誰にも邪魔されない、深い深い所へ……もう独りにしておいて……もう……放っといて……。

ふと、私は少し浮かんでしまった。誰かが近くに居た。何時も感じていた気配がした。でも、何かが違っていた。
何かが漂っていた……これは欲望?それとも悲しみ?……
でも、私にはどうでも良い事、関係無いわ。
また私は沈んでいった。

****************************************

再び私は浮かんだ。でも、今迄と何かが違っていた。それは、何者かに全身を殴り付けられている様な感覚を覚えたから。
あまりにも強烈だったのだろう、私はそのまま目を覚ました。
私は何処かに蹲っていた。どうやらエントリープラグ、弐号機の中の様だった。
そして、さっきから感じていた感覚の正体がハッキリと理解出来た。爆発の衝撃波、しかも至近距離……攻撃されている!
プラグの中は真っ暗な闇、起動していない……当たり前じゃないの、シンクロ出来ないんだから……
でも、じゃあ、何故こんなに衝撃をハッキリと??……どうして!?
混乱する頭で理由を推理するなんて出来る訳がなかった。でも、ハッキリと悟った、『このままじゃ私は殺されてしまう』と。
そんなのはイヤ、まだ死ぬ訳には行かない。でも、エヴァは動けない。このままじゃ……。
迫り来る死の恐怖、これほどハッキリと感じた事は無かった。それを撥ね除ける事が出来ず、
押し潰されそうになった私は、只念じるしかなかった『死ぬのはイヤ』と。
すると、段々と、周りに人の気配がしてきた。とても懐かしい感じ、とても温かい感じ。私はそれに必死に縋ろうとした。
その人は言う、『私はここに居ます』『死なせないわ』『生きなければ駄目』と。
突如、視界が開けて、目の前に……ママが居た……ママが手を差し伸べていた。私は躊躇することなく、その手を取った……。
そして、弐号機は再び息を吹き返した。

私は理解した、何故エヴァがATフィールドを持っているのかを、エレベータでファーストの言った言葉の意味を。
ママは私を置いて行ったのではなかった。ずっと側に居てくれていた、ずっと私を見ていてくれた、ずっと私を護っていてくれた。
私は嬉しかった、まだ全てを無くした訳ではなかったと言う事が。エヴァがある限り、私は私で居られる。もう沈まなくても良い。
もう、死を恐れなくても良い。それが堪らなく嬉しかった。
そんな私に、弐号機に群がってくる敵。使徒だろうが人間だろうが関係無い、降り掛かる火の粉は振り払って当然。
私は思いのままに弐号機を操り、思う存分暴れた。しかし、敵も然る者、唯一の弱点であるアンビリカル・ケーブルを切断してしまった。
これで残り五分、それでも奴等を黙らせるには充分の時間よ。有利な事に変わりはないわ。

突如、上空から九個の物体が降下してきた。それは、翼を持つ白いエヴァ、”エヴァ・シリーズ”だった。
私を取り囲む様に着地するエヴァ。
……趣味悪いデザインねぇ、顔面なんか口だけじゃない。しかもご丁寧に唇付きと来たもんだ、あんな奴に迫られたらと思うとぞっとするわ。
でも、性能はかなりの物の様ね。空が飛べるって事は動力内蔵型か、苦労させられそう。
何だか、弐号機を制式タイプだって自慢していたのがバカらしく思えるわ……これが私の感想だった。
その時ミサトから通信があった、手短に状況説明を受けて、『”エヴァ・シリーズ”を殲滅して。』と命令された。
病み上がりに軽く言ってくれちゃってぇ。何時もの私なら、『今迄放ったらかしにしておいて、今更何よ!』って怒ったと思う。
でも今の私には、漸くミサトも私の実力を認める気になったのね、と、エヴァあってこその私なんだと言う事を再確認する事で、
喜びを新たにする力となっていた。
シンジも上がって来るらしいけど、私にはそんな事に構っている余裕は無い。一気に決着を付けてやる。私は猛然と攻撃を開始した。

エヴァ同士の戦闘、”ATフィールド無し”の戦いを強いられる。
でも、ユラユラと闘争本能だけで動いてる奴等なんかに、この私が負ける筈が無いわ。
今迄の私達のやられ方から言って、一定のダメージ‥‥自己修復不能な損傷‥‥を与える事が出来ればそれで万事OK、
止めを刺す必要は無かった筈。実際その通りで、何処かしらを捻り潰すだけで呆気なく沈黙したのだった。
もうシンジなんか当てにする必要は無い、ママが居てくれるから、ママが護ってくれるから。私は一匹ずつ確実に仕留めていった。

そして、活動限界ぎりぎりで最後の一匹に止めを刺そうとした矢先、何処からともなく私めがけて、あの大きなブレードが飛んできた。
まだ動ける奴が居たかと、寸でのところでフィールドで止めた、筈だった。
突然、そのブレードは、ロンギヌスの槍に姿を変えてフィールドをあっさりと突き破ってきた……。
視界が暗転すると共に、顔面に激痛が走る。思わず悲鳴を上げてしまった。が、そうもしていられない。
急いで反撃に出ようとした、けど……弐号機は応えてくれなかった。電源が尽きたのだ。
だからと言って諦める訳には行かない。再び暗闇に包まれたプラグの中で、私は必死で弐号機を動かそうとした。
でも、全く応えてくれなかった。
どうして動いてくれないのよ!!初号機がだけが動けて、他はダメだなんて、そんなの絶対に許せない!!
まだ私は負ける訳には行かないのよ!今度負けたら、今度こそ……お願い!動いてよ!!

沈黙を守る弐号機。半狂乱でレバーを動かすだけになっていた私の耳に地鳴りの様な振動が伝わってきたのを感じた。
そして全身を貫く激痛が私を襲った。身体が反射的にのけ反る。あまりに強烈な痛覚の為に、声を上げる事すら出来なかった。
攻撃されている、弐号機が、ママが嬲り者にされている!……何とかしようとするものの、弐号機がそれに応えてくれる様子はなかった。
そこで、私は異変に気付いた。電源が落ちているのにどうして神経接続が切れないの!?
まだ電源が残っているのかと、やっとの思いでモニターを見てみたけど、無情にも活動限界をとっくに越えている事を示していた。
どうして……切れないのよ……。
その時、私の脳裏に、さっきプラグ内に鳴り響いていた人の声‥‥ママの声に混じっていた言葉を思い出した
……『一緒に死んで頂戴……』
……そう……ママは私を……そう、そうなのね……良いわ、
もう私には何も無くなったから……ママだけだから……一緒に死んであげるわ……ママ、もう独りにしないでね……。

私は、レバーから手を離すと、そのまま痛みで薄らぐ意識の流れに身を任せた。
最後まで勝てなかったのが心残りね……でも、気分は悪くないわ……。
もう、痛みも何も感じなかった。ママに抱かれていると言う感覚だけを感じ取っていた。
私が最後に聞いたのは、プラグ内に轟く地鳴りと、そして、何時しか聞いた事のある、エヴァの咆哮だった。
……これは……初号機?……シンジ……。


<後書き>

えっと、こん**は、跡見です。

最初に、ここまで読まれた方に、厚く御礼申し上げます。

本シリーズの題名の意味は”分かれ道・分岐線”です。
もうお判りの通り、補完物であります。で、今回はどの辺りから分かれ出ているのかと言う事をハッキリさせる為に、辛いのを承知で書きました。
このシリーズの終着点は『箱根温泉』の冒頭であります。既に結末は知れている訳ですね。某格闘ゲームに準えれば、”ZERO”って事になりますか。

ここのチャットで私が抜かした『自己願望』の実体化がいよいよ始まったのであります。でも、アスカ様には自力で復活を願わねばならん訳ですし、シンジ君に至ってはあまり立ち直って貰っても困ると言う、匙加減の難しいシリーズとなってしまう事受け合いですね。
このシリーズはこの程度の長さで、こぢんまりと行くつもりでいます。

今回は、冒頭と言う事もありまして、同時並行的に書きました。次回からは一つに纏めるようにします。
また、セリフを少なくしてモノローグ的にしたのは、”痛いなぁ”と思ったからです。ちょっとオブラートに包んでしまいました。
次回は、どうしても喋って貰わなくてはならないので、今回より辛くなりますよ、と予告しておきます。

では、また御会い出来ます様に……。(え!?したくないって??)


跡見さん、本当にありがとうございました!!

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