『……気持ち悪い……。』
!?……アスカ?」
『……気持ち悪いって言ってんのよ!触るな!放せっ!!
!!

それはアスカの声、しかも怒声だった。突然の大声に、僕は驚いてビクッと身体を竦めてしまっていた。
更に、驚くべき事に、突然動かない筈の弐号機が動き出し、初号機の手を払い除けてしまったのだ。
僕は支えを失ってそのまま倒れていく弐号機を呆然と見ている事しか出来なかった。


Tomi's EVA vol.26
Series『Zweigbahn』

その3


払い除けられた手を下ろす事も無く、僕は只、呆然と弐号機を見ていた。そんな僕に、アスカは不気味さを感じさせる声で話し掛けてきた。

『何しに来たのよ……。』
「な、何って……。」
『笑いに来たの?ボロボロに負けたこの私を。』
「……そんな事、無いよ。無いに決まってるじゃないか……。」
『無いですって?はっ、冗談じゃないわ!私が解らないとでも思ってんの!?
 ……聞いてたのよ、さっきの通信。初号機が倒したって、アンタがやったって言ってたでしょ!』
「そ、そんな!ぼ、僕は何も……。」
『うるさいっ!!シラ切るんじゃないわよ!!どうせ暴走してたとか何とか言うんでしょ!?そんな事関係無いわ!
アンタがやってもやらなくても、結局初号機がやった事に変わり無いでしょ!
アンタがどう思っていようとも、アンタがやった事になるのよ!全部アンタの手柄になるのよ!!
……」
『……結局私って何なのよ……人まで殺したのに……袋叩きに遭ってズダボロにされただけじゃない!
負ける為だけに出て来ただけじゃない!!……。
 ……フフッ、当然か……”用済み”の私がどう足掻いたって無駄だったのね。それに気付かないなんて……。』
「よ、『用済み』って、一体何言ってるんだよ!?一体、アスカの何処が用済みだって言うんだよ!?」
『……解らないって言うの!?……アンタが捺したんじゃない!”用済み”の烙印を!!』
!!
『私にとって『チルドレン』の資格は『誇り』、いや、『私の全て』だった!エヴァのエースパイロットになる事、それが生きる為、
私が私で居る為のたった一つの方法だった。だから、小さい時から死ぬ思いで、何もかもかなぐり捨てて努力した末に、
やっと手に入れた地位だったのよ。ところがアンタは何!?いきなり目の前に現れて、いやいやエヴァに乗り込んでる癖に、
努力のそぶりも見せない癖に、あっさりと私のシンクロ率を追い越して、私が勝てなかった使徒をあっという間に片付けて……
アンタは私の全てを否定したのよ!
いとも簡単にね!!

僕は少なからず驚いた。僕がアスカをそこまで傷つけていた事が、僕の存在自体がアスカを追い詰めていたと言う事が、
アスカの口から知らされた事に。
『もしかしたら』と思う節は有った。僕が初号機から還ってきた頃から、アスカの様子がが刺々しくなっている様に感じる事が有ったから。
何か悩み事が有るのではと気になった事も有ったけど、アスカはそう言う事に触れられるのを極端に嫌っていたし、
僕もそれどころじゃなくなってしまったから、結局そのままになってしまっていたんだ。
でも、今やっと解った。アスカを酷い目に遭わせた張本人が僕であったと言う事に。アスカに気を使って普通に接しようとしていた事が、
返ってアスカを追い詰めていたと言う事に。

やっぱり、僕は最低だ。
トウジを傷つけ、カヲル君を殺し、アスカを辱め……僕にはそんな事しか出来ないんだ。僕の様な人間は何もしない方が良いと思った。
けど、ミサトさんに見送られ、アスカの叫びを聞いてる内に、
『もしかしたら、あれは僕の思い過ごしじゃないのか?……もしかしたら、昔の様に戻れるかも……』
と思った。今から思えば楽しかった、あの頃を取り戻したいと思った。
だからこそ、僕はエヴァに乗った。でも、やはり駄目なものは駄目だったらしい。僕が知らない間に、アスカをまた傷つけてしまっていた。
僕が故意に危害を加えようとしていたのなら、改心すれば何とかなったかも知れない。でも、無意識のうちに、いや、僕が善かれと思ってしていた事が全て裏目に出てしまっていたのなら……やはり、何もするべきではなかったんだ……。

僕とアスカは通信モニターを介して話をしている。通常なら、相手の顔、つまりアスカの顔が映し出されている筈だけど。
今、そこにアスカの顔はなく、”SOUND ONLY”の文字だけが冷たく映し出されていた。顔も見たく無いと言う事だね……。
『もうこの世界に僕の居場所は無くなった。』
僕は、そう結論を出した。やはり、こうするしかないんだね……。

「……そう……僕が全部悪いんだね……。」
『今頃何悟ってんのよ!……ま、良いわ。解ったんなら、さっさとどっか行きなさいよ。アンタなんか嫌いよ!顔も見たく無いわ!
アンタと同じ空気吸ってんのかと思うと自殺したくなるわ!!』
「……分かったよ。アスカがそう言うなら、消える事にするよ……只、お願いがあるんだ……。」
『誰が!誰がアンタの願いなんか聞いてやるもんか!!』
「……アスカの言う通り、僕は君の目の前から姿を消すよ。もう二度と君の目の前には現れない。これは確実に約束出来るよ。」
『このバカッ!!私の言う事聞かないで勝手にお願いする奴の言う事なんか、信用出来る訳無いでしょ!!』
「いや、確実だよ。見せたくても見せられなくなるから……。」
『!?』
「だから……だからお願いだ、元のアスカに……あの元気で明るい、何時も周りを楽しくしてくれる、ちょっと我侭な……あの頃のアスカに戻って欲しいんだ。」
『……出来無い相談じゃないわね……。』
「そう、良かった……これが一点目だよ。」
『一点目!?』
「うん……ゴメン、悪いとは思ってるんだけど……。」
『……ま、良いわ。聞くだけ聞いてあげる。でも、受けるかどうかは別よ!』
「うん、有り難う。そんな難しい要求って訳じゃないから……二点目は……僕の事は忘れて欲しい、奇麗に忘れて欲しいんだ。」
『はぁ!?……そんな事、言われなくったって忘れてやるわよ!これが終わったらこんな所、さっさとオサラバしてやる!』
「……そう……なら話が早いよ。じゃ、早くここから脱出して。これが最後のお願いだよ……。」
『え?……』
「僕が機体を引き起こすから、プラグを強制射出するんだ。早く怪我の手当てをして貰った方が良いよ。機体は僕が運ぶから。」

そう言って、僕は再び弐号機の両肩を掴もうとした。
僕は、少しでも早くアスカに弐号機から出て貰いたかった。僕がこれからしようとしている事がばれない内に。
アスカはまだ状況を飲み込みきってはいない様子だ。もし解っていたら、抵抗の意思を表している筈。
だって、弐号機は自分の全てだと言い放ったアスカが、そう易々と機体を引き渡すとは思えないから。

『待ちなさいよ。』

『どうも様子がおかしいと思っていたら……そう言う事……。』
「な、何が?」
『やっぱり止めた。誰がアンタなんかに弐号機を渡したりするもんですか。』
「な!?何を言うんだよ!?早く脱出するんだ!」
『イヤよ!!……誰が、誰がアンタの自殺の手助けなんかしてやるもんかあっ!!』

そうアスカが叫んだ瞬間、弐号機の目が輝き出した。そして、両足を揃えて小さく縮こまると、
そのまましゃがみ込んでいた初号機の胸部に蹴りを叩き込んできた。突然の事で、初号機は何も出来ないままもんどり打って倒れ込んだ。
衝撃をまともに伝えられてしまった僕は、胸の痛みと共に、激しく咳き込んだ。
弐号機はそのまま立ち上がった。だけど、元々動ける筈の無い”大破”状態の機体だから、姿勢が定まらない上に、
破損個所から体液がどんどん流れ出てきている。その惨憺たる様に、思わず顔を背けてしまった。

ぐぅっ!……い、言う事聞きなさ……ぐっ!……お願い……ママァ……。』

悲鳴とも受け取れる様な声で聞こえてくるアスカの声。それを聞いた時、俄に脳裏にある心配事が浮かんできた。
それは、弐号機のダメージがアスカに伝わっていると言う事。今は痛覚だけらしいけど、もしかしたら、機体のあの損傷が伝わってしまうかも……
もし、本当にそうなってしまったら……。
それだけは避けなければならない、一刻も早くアスカを弐号機から出さないと!
僕は弐号機を見据えると、アスカに呼びかけた。

「アスカ!何してるんだよ!!」
『ウルサイ!!アンタなんかに好きにさせてたまるか!!』
「そう言う問題じゃないだろ!早く脱出するんだ!!」
『ウルサイ!ウルサイ!!アンタなんかに、アンタなんかにぃっ!!』
「つまらない意地張ってる暇は無いんだ!これはミサトさんの命令だよ。”エヴァ・シリーズ”は殲滅させなきゃならない。これは初号機や弐号機も例外じゃないんだ!!
今、本部は奇襲に遭って殆ど機能していない。今纏めて消さないと他の勢力の手に落ちてしまうかも知れないんだ。だからっ!!」
『だからアンタが纏めて消してやるって!?
……はんっ!!冗談じゃない!そりゃアンタにとっちゃあ自殺の大義名分が出来て、さぞかし御満悦でしょうけどね!』
「そうだよ!折角僕が消えてやるって言ってるんだ!邪魔しないでくれよ!!」
『”Nein!Nein!!(イヤよ!イヤよ!!)”アンタこそ初号機を降りなさいよ!
その命令、アタシだって受けてるんだからね!!その役目、アタシが引き受けてやるわ!!だから、とっとと降りなさいよっ!!』
「嫌だっ!!僕は全てにケリを着けるんだっ!!降りるもんかっ!!」
『”Sie, Geh mir aus den Augen!!(アンタこそ、とっとと消え失せろ!!)”』

弐号機は、咆哮を上げると、初号機に向かって突進してきた。
二機のエヴァは、両手をガッチリ組みあわせて、押しつ押されつの力比べに突入した。


<後書き>

こん**は。跡見です。

……また戦闘描写になっちゃったぁ……(-_-;)

さてさて、どうオチを付けましょうか……まあ、お約束(だと思うんだけど)の展開で締める事になるでしょう。
LASとはほど遠い話になっていますが。まあ、最終的には何とかなるかと……しなきゃいかんですね、ハイ。

未だに手に入れられるエヴァグッズとして、来年のカレンダーを購入。やっぱアスカ様ですよね、ウンウン。
男共はシンジ君とカヲル君だけで、それぞれで最初と最後を締めてますな。NERV女性陣が総出演でなかなかであります。
レイちゃん侮り難し、さりげなく出番多いぞ(笑)

で、先月発売の『少年A』最新号(99年12月号)の表紙のアスカ様、良いですねぇ。さり気なくテレカの絵柄にもなってるし。思わず買っちゃいましたよ。
でもこの絵柄、画集付録のポスターの絵柄やんけ。

では、また御会い出来ます様に……

 2\拡張 インターネットを使用するアプリケーションの設定を共有できるようにします。 さらに詳しい情報は、 をご覧ください。


跡見さん、本当にありがとうございました!!

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