静かな世界だった。何も聞こえなかった。
暗闇の世界だった。何も見えなかった。

……これが死の世界?
……多分違うと思う。
だって、痛いもの。全身が痛いもの。焼け付く様に痛いもの。

……涙が出る位……痛いもの……。


Tomi's EVA vol.27
Series『Zweigbahn』

その4


私が戦闘を放棄してからどの位経ったのかは判らない。
唯、記憶が途切れる直前に感じていたのとほぼ同等の痛覚と、その痛覚にかき消されそうになりながらも感じる”座っている”という感触、
この二点によって電源が切れたままの弐号機のプラグ内に居ると言う事を認識出来た。
プラグ内は異様に静かだった。起動中に聞こえるバックノイズも無く、あれほど五月蝿く轟いていた地響きの様な轟音も聞こえなくなっていた。
ハッキリ言って、訳が解らなかった。

暫くして、規則的な地響き‥‥エヴァの足音らしきものが聞こえてきた。それはすぐ近くで止んだ様に聞こえた……どうやら止めを刺すつもりらしい。
エヴァに止めを刺す時に狙うべき場所‥‥第一にコア、第二にエントリープラグ‥‥どちらにしろ、私が生きてここから出られる事は無いだろう。
とうとう最後の時が来たかと思った。でも、特に恐いとか何とかしようと焦るとか言う事はなかった。逆に、どうせ死ぬなら気を失ったあのままで
逝きたかったと、少し不満を覚える程落ち着いていた。
暫しの沈黙、それがどの位続いたのかは判らない。機体が軽く揺すられ始めた。一体どう言うつもりかと訝しんだ瞬間、信じられない事が起こった。なんと弐号機が再起動したのだ。私は唯々驚いた。電源が尽きた筈の弐号機の何処にこんな事を起こす力が在るのかと思った。
ふと、もしかしたら、これが暴走と言うものなのかも知れないと思った。しかし、活動限界の表示を見たところ、そうではないと思えた。
なぜなら、再び五分間のカウントダウンが始まっていたから。本当に暴走した状態のエヴァ内部の様子はシンジから少し聞いた事が有るけど、
こんな極普通の状態ではなかった筈。と言う事は、いつの間にか再充電された事になる……?

『……ゴメン、アスカ……最後の最後まで、迷惑掛けっぱなしみたいだね……本当に、ゴメン……
 ……少し待っててくれないかな?……僕にはやる事が残ってるんだ……約束を果たさないと……。』

突然聞こえてきたシンジの声。そう、目の前に居たのはエヴァ初号機だった。
咆哮を聞いた覚えは有った。だから、ここに初号機が居ておかしくはない。しかし、戦闘はどうなったのだろう?いくらアイツがバカとは言っても、
戦闘中にこんな事をする余裕を持ちえる筈が無い。
私には、全く訳が解らなかった。
その内、初号機は側を離れると、せっせと何かを運び始めた。残骸を集めている様だ。戦後処理か……もう終わったのね、何かも……。

ふと、視線をモニターの残表示に向ける。何時もの通り減っていく残り時間。私は残り時間で状況を出来るだけ掴んでおこうと思い立った。
モニターを切り替えようとして、初めて身体の異変に気が付いた。全身が引き攣れた様になって言う事を聞いてくれなくなっていたのだ。

「くっ……なん、で、よ……こ、この!……。」

どうして腕一本を動かすのにこんなに苦労しなければならないのかと恨めしく思いながらも、やっとの事でパネルに手を伸ばし、
慎重にコマンドを入力した。

……Luge ! (ウソ!)……。」

そうして切り替わった機体状況を示すグラフィックに、私は驚愕せざるを得なかった。
‥‥損傷率約80%、欠損箇所9箇所‥‥これじゃあ、あの参号機までとは行かなくても、スクラップ同然じゃない。
よく起動出来たものだと半ば飽きれた。
そうか、身体の変調もこれで納得が行く。弐号機のダメージとシンクロしてしまってるんだわ。
下手をすると、突然スプラッター映画を実演、なんて事も有りうる訳ね。

……それも悪くないかな?ママと同じ傷を負って死ぬって言うのも……。

****************************************

『誰か……誰か居ますか?』
『し、シンジ君!?』
『マヤさんですね。他に誰か居ますか?』
『ええ、発令所のみんなは無事よ……只、今は赤木博士と葛城さん……それと碇司令が居ないけど……。』
『……そうですか……じゃあ、聞いて下さい。誰がやったのかは判りません、が”エヴァ・シリーズ”は全部倒しました。』
『ええ、みんなで状況は見ていたわ。倒したのは初号機よ、シンジ君。』
『……そうですか……で』

突然聞こえてきた、シンジと発令所とのやり取り。再び電源が尽きてしまったらしく、それは途中で切れてしまった。
でも、それだけで、私にはハッキリとある事実が認識出来た。

私はまた、シンジに負けてしまったと言う事を……。

「……畜生!……」

怒りと悔しさと悲しみが一緒くたになって私の中で渦巻いていた。そして私は、それをどうする事も出来ずに、
唯歯を食いしばって打ち震える事しか出来ないで居るのだった。

どうしてアイツに勝てないのよ!?私の何処がアイツに劣っていると言うのよ!?……どうしてアイツは私を消そうとするのよ!?……

……そんなの解りきってるじゃない。私の行動で、私の言動で、アイツはかなり傷ついた筈だから。
でも、私は、唯その時に思った事を口にしただけ、思った通りに行動しただけ。悪いのはシンジの方であって、私には何の落ち度もない。
こんな形で仕返しされて良い訳が無い。
畜生!……私は諦めない、絶対に諦めない、必ずアイツに勝ってやる。このままで終わって堪るか!

……でも……どうやって……。

気持ちが通じたのだろうか?突然、弐号機は再起動した。
そして、再び役目を果たし始めたスクリーンには弐号機の両肩を掴んでいる初号機の姿が映っていた。
シンジに肩を掴まれている、そう認識した途端、強烈な嫌悪感が込み上げてきた。
そして、そのまま引き起こされて体勢が変わってしまった為に、血の気が引いて気分が悪くなってしまった事もそれに拍車を掛ける事になった。

「……気持ち悪い……。」
!?……アスカ?』
「……気持ち悪いって言ってんのよ!触るな!放せっ!!

ズズンッ!

……くっ……。」

初号機の手を振り払って地面に倒れた衝撃で出来た苦痛に顔をしかめる。
目の前には何時もと変わらぬ姿でたたずむ初号機。それが普段の情けないアイツの姿とダブって、一層イライラが募ってきた。
私がこんな姿になって苦しんでいるのに、どうしてこいつはそんなにのほほんとして居られるの!?

『何しに来たのよ……。』
『笑いに来たの?ボロボロに負けたこの私を。』
『……聞いてたのよ、さっきの通信。初号機が倒したって、アンタがやったって言ってたでしょ!!』
『アンタがどう思っていようとも、アンタがやった事になるのよ!全部アンタの手柄になるのよ!!
『……結局私って何なのよ……人まで殺したのに……。』
『アンタが捺したんじゃない!”用済み”の烙印を!!』
『……アンタは私の全てを否定したのよ!いとも簡単にね!!

私は、有りったけの憎悪と今し方抱いた嫌悪を込めて、シンジを思いきり罵った。
普段ならば平手何発かも織り交ぜて、それで気は晴れたかも知れない。でも、今はエヴァの中。手の届くところにシンジは居ない。
この弐号機さえ自由に動かす事が出来れば初号機をねじ伏せる事も出来たろう。でも、この損傷では立ち上がる事すら出来ないだろう。
何も出来ない今の私には、沸き上がる黒い感情をぶつける事しか出来なかった。

『……そう……僕が全部悪いんだね……。』

シンジがそう返してきたのは、私が声を張り上げ続けた為に息が上がってしまい、逆に何も喋れなくなってから少し経ってからの事だった。
勝ったと思った。口だけとは言え、シンジを打ち負かす事が出来たと言う事に、私は少しだけ自信を取り戻す事が出来、そして、
少しだけ心の余裕が出来た。
だから、シンジと少しだけ言葉を交わす余裕が出来たんだと思う。

シンジは、私の前から消え去ると言う事を約束した。そして、二度と現れないと言う事も。
私は、その言葉に少なからず満足した。コイツさえ居なければみんな私に注目してくれると思ったから。
唯、『見せたくても見せられなくなるから……。』と言う言葉に少し引っ掛かりを覚えた。
そして、それをきょうちょうするかの様な行動をシンジは取ってきた。それを実行する為の条件を突きつけてきたからだ。

『だから……だからお願いだ、元のアスカに……あの元気で明るい、何時も周りを楽しくしてくれる、
ちょっと我侭な……あの頃のアスカに戻って欲しいんだ。』
「……出来無い相談じゃないわね……。」
『そう、良かった……これが一点目だよ。』
「一点目!?」

呆れた!コイツこんなに図々しい奴だとは思わなかったわ!

『うん……ゴメン、悪いとは思ってるんだけど……。』
「……ま、良いわ。聞くだけ聞いてあげる。でも、受けるかどうかは別よ!」
『うん。そんな難しい要求って訳じゃないから……二点目は……僕の事は忘れて欲しい、奇麗に忘れて欲しいんだ。』
「はぁ!?……そんな事、言われなくったって忘れてやるわよ!これが終わったらこんな所、さっさとオサラバしてやる!」
『……そう……なら話が早いよ。じゃ、早くここから脱出して。これが最後のお願いだよ……。』
「え?……」
『僕が機体を引き起こすから、プラグを強制射出するんだ。早く怪我の手当てをして貰った方が良いよ。機体は僕が運ぶから。』

私は、シンジの言葉に違和感が増大して行くのを感じていた。これから逃げ出そうと言う奴の言葉にしては、
ヤケに芯が通った感じ‥‥秘めた決意‥‥見たいなものを感じ取ったからだ。

逃げ出すんじゃないの?……あれ?じゃあどうやって消えるって言うの……?

私は、初号機の背後に有る”エヴァ・シリーズ”のむくろに目が行った。

……そうだ、あれを殲滅しろってミサトに言われてたわね。もう活動停止してるんだから良いんじゃないの?
……あ、私、さっきやっつけた筈のアイツ等にやられたんだ。と言う事は、奇麗に消し飛ばさないとまた復活しかねないって事ね…
……消し飛ばす……まさか!

私が辿り着いた結論、それは、シンジがファーストと同じ様に初号機で自爆しようとしているのではないか?
それも”エヴァ・シリーズ”のみならず、弐号機も道連れに……と、言う事だった。
私は、弐号機にママが居ると言う事を漸く知った。今の私にとって、弐号機を降りると言う事、
弐号機を失うと言う事はママと永遠に別れると言う事と同義だ。
私にとって、シンジのしようとしている事は到底認められる訳が無かった。
折角ママに会えたのに、すぐに別れるなんて……そんな事、絶対にさせるもんか!!

****************************************

気が付いたら、目の前で初号機が倒れていた。
一瞬何が起こったか解らなかったけど、弐号機の体勢が変わっていた事ですぐに理解できた。
そう、弐号機が初号機を蹴り飛ばしていたのだ。
と言う事は……行ける!!

私は即座に弐号機を立ち上がらせようとした。
だけど、そう簡単には行かなかった。弐号機が一挙一動をする度に私の身体を言い様のない激痛が貫いていき、
その度に体勢が崩れてしまうからだった。

ぐぅっ!……い、言う事聞きなさ……ぐっ!……お願い……ママァ……。」

お願いママ、私に力を貸して。もう一度アイツと渡り合える力を!アイツに勝つ力を!
もう私にはママしか居ないの!独りはイヤなの!独りにはなりたくないの!だからお願い!!

私は唯ひたすら念じ続けて、弐号機を立ち上がらせる事に成功した。

その間にも、シンジは私に呼びかけてきた。唯、さっきまでとは打って変わって、何か焦っている様な感じだった。
でも、そんな事は関係無い。私を弐号機から出そうとしている事には変わりないから。それは私には死刑執行と同義だったから。

『アスカ!何してるんだよ!!』
「ウルサイ!!アンタなんかに好きにさせてたまるか!!」
『そう言う問題じゃないだろ!早く脱出するんだ!!』
「ウルサイウルサイ!!アンタなんかに、アンタなんかにぃっ!!」
『つまらない意地張ってる暇は無いんだ!これはミサトさんの命令だよ。”エヴァ・シリーズ”は殲滅させなきゃならない。
これは初号機や弐号機も例外じゃないんだ!!
今、本部は奇襲に遭って殆ど機能していない。今纏めて消さないと他の勢力の手に落ちてしまうかも知れないんだ。だからっ!!』
「だからアンタが纏めて消してやるって!?……はんっ!!冗談じゃない!そりゃアンタにとっちゃあ自殺の大義名分が出来て、
さぞかし御満悦でしょうけどね!」
『そうだよ!折角僕が消えてやるって言ってるんだ!邪魔しないでくれよ!!』
「”Nein!Nein!!(イヤよ!イヤよ!!)”アンタこそ初号機を降りなさいよ!
 その命令、アタシだって受けてるんだからね!!その役目、アタシが引き受けてやるわ!!だから、とっとと降りなさいよっ!!」
『嫌だっ!!僕は全てにケリを着けるんだっ!!降りるもんかっ!!』
「”Geh mir aus den Augen!!(とっとと消え失せろ!)”」

私は初号機に飛び掛かった。こうなったら、意地でもシンジを初号機から引きずり下ろしてやる、そう思ったからだ。
弐号機と初号機はガッチリと手を組み合った。

私は、このまま初号機を組み倒して背後から押さえ込み、エントリープラグを強制排除しようと目論んだ。
しかし、逆に弐号機が組み倒されそうになってしまい、慌てて初号機を巴投げで投げ飛ばした。

ぐぅっ!……くっ!……。」

再び押し寄せてきた激痛に両肩を抱く様に縮こまりながら歯を食いしばって耐える。
そう言えば、こっちは手負いだった。何時もと全く状況が違うのに何時もの様に考えてしまった。こんな時に物忘れするなんて、
やっぱりヤキが回ってた様ね。
再び起き上がりながら、集中力が途切れがちな意識を支えて考える。

普通の戦い方では勝ち目はない、ハンデが大きすぎるわ。どうすれば良いの?どうすれば……。

私は、呻き声が聞こえない様に切っていた音声回路を再び開いた。

「……シンジ、勝負よ。」
『?、勝負?』
「そ。アタシもシンジも、これからすべき事は同じでしょ?でも、それを遂行するにはお互い相手の存在が邪魔なのよ。」
『邪魔……そうだね。』
「だから勝負するの。エヴァのこれからの決定権、まあアンタの場合はこの弐号機を自由にする権利ね、これを賭けるのよ。
 方法は至って簡単、相手の動きを封じる事が出来た時点で勝ちよ。要は相手を押さえ込んでエントリープラグを抜く、これだけの事よ。
後は煮て喰うなり焼いて喰うなり好きにしたら良いわ。」
『……簡単って……。』
「どう?これで良いわね?」
『……アスカ、やっぱり止めよう。』
「どうして?」
『こんな事、言いたくないけど……今のアスカに勝ち目は無いのに、そんな事したって無意味だよ。』
「勝てないって?まあ、確かにこんな状態じゃそう思えても仕方ないわね。
 だからってどうなのよ?そんな事で大人しく引き下がるアタシだとでも思ったの?アンタ相手ならこの位が丁度良いハンデよ!!」
『ハンデって!?そんなアスカ!!』
「問答無用!!どおおりゃぁぁぁっ!!

私は弐号機を突進させた。全身がマグマの海にでも叩き込まれた様な強烈な感覚に襲われる。
遠のきそうになる意識を声を張り上げる事で繋ぎ止めながら、初号機を殴り、蹴りつけ、投げ飛ばした。
私がとった戦術は心理戦、シンジの動揺を誘って動きを封じる事だった。機体性能に歴然たる格差が生まれている以上、
それを埋めるのは自分自身、私のパイロットとしての資質‥‥大学の頂点に君臨した頭脳、訓練で鍛え抜いた勘に頼らざるを得なかった。

『シンクロ率が高いだけで嫌々乗ってるアンタなんかに、このアタシが負ける訳無いの!』
『アタシは全てをエヴァに捧げて生きてきたの!アタシにはエヴァしかないの!』
『アタシからエヴァを取ったら何もなくなるのよ!ここに居る理由が無くなるのよ!』
『ここで負けると生きてる意味が無くなるのよ!死んだも同然なのよ!』
『アタシは負けない!アンタなんかに殺されて堪るか!』

そんな事を怒鳴りながらひたすら初号機を殴り続けた。他にも色々言ったと思うけど、おおむね意味合いは変わらないし、
何が言いたいのか解らない事を口走っていただけの様な気もした。
それだけギリギリのところで私は戦っていたのだ、碇シンジと死の影に……。

初号機‥‥シンジの攻撃はとても攻撃と呼べるものではなかった。
何故なら、唯単に弐号機‥‥私を捕まえようと突進して来るだけだったからだ。
私はそれを躱して殴り付け、素早く距離を離す、これを繰り返していた。
その内シンジが疲れ切り、隙を見つけたところで組み付いて片を付ける、私はその機を伺っていた。
しかし、シンジは打たれ強いのか、中々突進の手を弛めようとしない。
短期決戦の為に選んだ戦術で、長期戦へと縺れ込む事になってしまった。

その内、或る一点の疑問が沸き起こった。随分長い間戦っている筈なのに、どうして活動限界にならないのだろうか?
ふと目を見やったモニタの表示に私は驚愕せざるを得なかった。
何故か、初号機を攻撃する度にカウントがクリアされていたのに気付いたからだ。
更に驚くべき事に、弐号機の損傷率がジリジリとではあったが低下していたのだ。
電源が繰り返し、しかも急速に充電される事など有り得ない。しかも、内蔵電源では自己修復出来る様なパワーは取り出せない筈。
これは一体どう言う事なの!?
戦闘を支えながら考えるものの、納得のいく答えは出なかった。けれど、初号機を投げ飛ばした時に突然ある仮定が閃いた。
その仮説ならば全てに説明がつく。唯、今の私にはとても納得出来ない、絶対に認めたくないものでもあった。
それは、『初号機から活動エネルギーを貰っている』と言う事だった。
そう、今の私は初号機の援助の元に初号機と戦っている。初号機無しでは何も出来ない状態になってしまっていると言う事だった。

畜生!こんな事までアイツに頼ってるなんて!……こんな事?……そうね、そうだった。
私は、あの葛城家に強制的に住まされる事になって以来、食事と風呂の用意は全てアイツにやらせていたっけ。
その内部屋の掃除やら下着以外の洗濯までやらせるようになって……。
!?、どうしてこんな時にこんな事思い出すのよ!何でアイツのことで懐かしまなきゃいけないのよ!?アイツは私の敵なのよ!?
私は頭を振って戦闘に集中しようとした。
でも逆に、あの頃の思い出‥‥何だかんだ言って楽しかったあの頃の事‥‥が次々と蘇ってくるのだった。

「……どうして……どうしてよぉ……。」

段々と視界がぼやけてきた。でも、別に意識が遠のいているんじゃなくて、
涙が溢れてきているからだと理解するのに大した時間は掛からなかった。
そして、その事が私にとって命取りとなってしまった事に気付くのも……。

ガシッ!

、しまった!!」

私‥‥弐号機は初号機に羽交い締めにされてしまっていた。そう、涙の所為で初号機の動きが見えなくなってしまっていたから、
隙を突かれて背後に回り込まれてしまったのだ。
慌てて振りほどこうとして必死にもがいたけど、パワーのハンデが大きすぎた。初号機を振り切る事などもはや出来ない相談だった。
これで万事休すとなった……。

「くそっ!このっ!離せっ!離しなさいよっ!!」
『そうは行かないよっ!さあアスカ、約束通りプラグを抜かせてもらうよ!』
「イヤッ!離してっ!離して……離してよぉ……。
『?、アスカ?』

そんな……こんな呆気なく終わってしまうなんて……。
……これで私は何もかも無くして独りになる。エヴァしか無かった私には、全てがエヴァを通じて得られたものだから。
エヴァが無くなると、全てが私の元から消え去るのよ……。
でも……。

……イヤだよぉ、こんな終わり方なんてぇ……イヤよぉ、独りはイヤぁ、イヤよぉ……グスッ……。
『!?、アスカっ!?』
独りにしないでよぉ……殺さないでよぉ……死ぬのはイヤなのよぉ……。
『……そんな……。』
もうイヤ……こんなのイヤだよぉ……助けてよぉ……帰りたいよぉ……ママぁ……加持さぁん……ヒカリぃ…………シンジぃ……。
『……そんな……どうすれば良いんだよ、どうすれば……誰か、誰か教えてくれよ……ミサトさん……加持さん…………父さん……。

私は、間近に迫ってきたであろう”最後の瞬間”に恐れおののき、唯うずくまって泣きじゃくっていた。
私は、楽しかったあの頃に帰りたかった。ママが生きていた頃、加持さんに戯れついていた頃、ヒカリと本音で語り合っていた頃、
そしてシンジをからかって笑い転げていた頃に……。

突然、グラリと傾く感覚を感じ取った。顔を上げると、段々と倒れて行く様が涙でぼける視界で解った。
どうやらシンジが私を開放したらしい。もう立つ気力さえ無くなっていた私は、そのまま右の方へと倒れていった。
重力に任せたまま倒れ込んでしまった為に、衝撃でまたしても全身を激痛が走る。
でも、もう痛覚に対してかなりの耐性が出来てしまっていたから、顔をしかめる程度にしか感じられなかったけど。

しかし突然、そう、地面に倒れて顔をしかめたのと同時だったから、本当に突然だった。
私の視界を何かが遮る様に通り過ぎた様な気がした。そして、

……あ、あれ?』

そんなシンジの間の抜けた声と共に、初号機が仰向けになって派手に倒れ込んでしまったのが視界に入った。
不思議に思って初号機見てみると、胴体に何か……ロンギヌスの槍が突き立っていた。

「?……シンジ?……シンジ!?」


少し焦ってシンジに呼びかけたけど、返事は無かった。そして、少し間を置いて、シンジの絶叫が響き渡った。

シンジが……やられた……私に勝ったまま……負けた……。

そう認識した瞬間、私の中で何かが壊れた様な気がした。そして、目の前が真っ暗になって、意識が急速に薄れていった。
でも、何か強烈な違和感を感じていた。意識が消えると言うより、何か別の意志によって私の意識が封じ込められる様な感じがした。
そして、その意志はこう叫んでいた様に思う。

”殺してやる”

と……。


<後書き>

みなさん、お久し振りです。

冬眠期間を経て(職場の毎年の恒例なもので)漸く復帰できました。
でも、リハビリなんぞに供する事の出来るネタが無かったもので、いきなりのこれですね。
さてと、次はメールの処理に係ろう、溜めすぎやからねぇ(おいおい)

エヴァが過去の一ページに加わって随分経ちます。まあ、まだまだ元気な分野(同人やらガレキやら)もあって、儂としては安堵の限りですが。
飽きっぽい儂が、何だかんだ言って頑張っていられるこの分野。本当にはまっているんだなぁと感じています。
まあ、最後の一人にはならないと思います。まだ目覚ましい活躍している人も居るし、新しく入ってくる人も居ます。だからそう思えるのですが。

と言う訳で、まだまだ続ける所存ですので、まあ、お付き合いいただけると嬉しいですね。

では、またお会い出来ます様に……

 2\拡張 インターネットを使用するアプリケーションの設定を共有できるようにします。 さらに詳しい情報は、 をご覧ください。インターネット設定'&Internet preference 情報を管理します。


跡見さん、本当にありがとうございました!!

跡見さんへの感想メールを!
tomi-yoshina@mba.nifty.ne.jp
までお願いします。


「ステンショ跡見」へ戻ります。