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……到頭、僕は一番してはいけない事をしてしまったんだ!!
僕は泣いていた。弐号機の傍らで、声を押し殺して泣いていた。
アスカに対してしてしまった事に対する痛烈な後悔と、これで本当に独りぼっちになってしまった
と言う猛烈な寂しさに、僕は押し潰されていた。
僕は思った、ミサトさんに見送られた時に気付いた『失ったと思ったのは思い込みだったんだ』と言う事、
それはアスカに対しても同じ事なんだと。そして、アスカがそれに気付いてくれれば、
多分、エヴァが無くなった世界でも生きていける筈だと。でも、僕がその事に気付いたのは、
自分の居場所を自分で壊してしまった後……余りにも遅すぎた。
アスカなら大丈夫。『何もかも無くしてしまった。』って言ってたけど、彼女なら新しく居場所を作れる力が有ると思う。
そうでなければ、何も無かった筈のこの国で居られる筈が無いと思うから。
僕ならとっくにホームシックになって……どうなってたかな……。
僕には、最初から勝ち負けなんて言うのは関係無かった。唯、アスカには生き残って欲しかっただけだった。
それなのに……僕は取り返しがつかない事をしてしまった。もう二度と、アスカのあの笑顔は見る事が出来なくなってしまった。
みんな僕の所為だ……。
……もう嫌だ!こんなの嫌だ!……こんな事しか出来ない僕なんて……大嫌いだ!!
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……そうだ、弐号機のプラグを何処か遠くへ飛ばそう。
そうすれば、アスカがこの世に存在したという証が残せるに違いない。このままだと何もかも蒸発してしまう。
僕みたいな何もない人間のクズにはふさわしい最後だろうけど、アスカはそうじゃない。
僕とアスカの間には、それぐらいの差は必要、いや、無い方がおかしいと思うよ……良し、そうしよう。
僕は泣きながら、アスカのエントリープラグを取りだす為に、弐号機に手を掛けた。
だけど、ある事を思い出して、そこで手が止まってしまった。それは、弐号機の機能全てが失われてしまってる今、
プラグは機体を破壊しないと取り出せないのでは?と言う事だった。
もしかしたら、その事でアスカの身体を大きく傷付けてしまうかも知れないからだ。
シンクロしていなければ大丈夫だと思うんだけど、さっきまでのアスカの事を思い出してみると、
どうもそうではないらしいと思えてきたからだ。エヴァに関わってる以上、何があってもおかしくないと考えた方が自然だと思う。
それに、単に僕の勘違い、と言う事も十分に考えられるし……。
散々迷った揚げ句、僕は再び手に力を込めた。もう僕に残された時間は殆ど無い。
このままでは何も出来ないまま全てが終わってしまう。アスカは何とか五体満足で残したかった……けど……最後の最後まで……。
「ううっ……ゴメンよ……アスカぁ……。」
『……五月蝿いわね……ピーピー泣くんじゃないわよ……。』
「!?……あ……あ、アスカ!?」
突然スピーカーから流れてきたのは、もう二度と聞けないと思っていた声だった。そう、アスカはまだ無事だったんだ!!
Tomi's EVA vol.29
Series『Zweigbahn』
その6
「……アスカぁ……良かった……本当に良かった……。」
僕は素直に嬉しく思えた。まだ終わっちゃいないんだと思えて、嬉しかった。
『……ふん……何処が良かったってぇのよ……こんな負け方し……ごほっ!ごほっ!』
「あ、アスカ!大丈夫!?」
『……な訳無いでしょ……。』
「……ゴメン……。」
アスカの声がさっきよりも弱々しく聞こえた。ダメージがかなり来ていると思った。早く何とかしなければと思ったけど……。
『……そんな事より……さっさと……抜きなさいよ……アンタの……勝ちなんだから……決め、なさいよ……。』
「……駄目、だと思う……。」
『……どうして……。』
「……そっちで出せなきゃ……多分……壊さないと……。」
『……そう……分かった……。』
「……ゴメン……。」
そう、もう僕一人じゃどうしようもなくなっていた。だからアスカに協力して貰うしかなかった。
でも、アスカから返ってきた答えは、僕の予想の中での最悪のものと同じだった。
『……じゃ……このままやって……。』
「え?」
『……ホントは……イヤだけど……信号……受け付けない、みたいだし……仕方ないから……一緒に、死んでやるって……言ってんのよ……。』
「そ、そんな……。」
『……出られないんだから……仕方ないわよ……ごほっ!……そ、それとも何?……この私を……生きたまま……引き裂こうってぇの?……』
「違うよっ……嫌だ……嫌なんだ……絶対に嫌なんだ……。」
『……何が?……』
「……嫌なんだ……アスカの居ない世界なんて……僕には考えられない……。」
『……アンタバカ?……これから死ぬ奴が……先の事考えて……どうなるって言うのよ……。』
アスカの言う事は至極もっともだった。でも、僕は……。
「……そうだね……でも……アスカには生き残って欲しいんだ……。」
『……負け犬のまま……生き恥を晒せって?……容赦しないのね……。』
「違うよ……アスカなら……これからもっと良い事が……。」
『無理ね……エヴァが……無くなるのに……生きてる意味なんて、無いのに……そんな事……ある訳無い……。』
「……ねぇアスカ……もし僕が……エヴァのパイロットで、なかったとして……口聞いてくれた……?」
『……さあね……。』
「……多分……相手にして……貰えなかったろうと……でも……アスカは……違うだろ……。」
『……何が……。』
「一杯人が集まってきてたろ……そりゃあ……アスカは奇麗だから……男子達は……でもね……
それだけじゃないと……アスカは……性格キツイし……我が儘だし……口も容赦なかったけど……
でもね……明るくて……前向きで……強くて……賢くて……ちょっとだけ優しくて……僕にはとても眩しかった……。」
『……。』
「鈍感バカの……僕にだって……これだけ見えるんだ……大丈夫……加持さんみたいな……もしかしたら……。」
『……シンジ……。』
「……でも……生きてなきゃ……無理だろ……だから……。」
『……ダメよ……無理だわ……。』
「ど……どうしてさ……。」
『……もう……アタシは……ダメ……。』
「駄目って……まさか……嘘だろ……。」
『……しょうがないわね……。』
アスカは一体何が言いたいんだろう……もしかして!?……いや、そうじゃないだろ!……。
嫌な予感がした僕は、ひたすらに外れていてくれと願った。でも、”SOUND
ONLY”と表示されていた通信モニターに
アスカの姿が映し出された時、その願いが空しい物だった事を知った。
「!!」
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モニターには、シートに凭れ掛かっているアスカが映っていた。辛うじてうっすらと目を開けた状態で顔面は蒼白、
如何にも瀕死の状態よと言わんばかりの様子が見て取れた。
しかも、両肩の調整弁から一定の(恐らくは呼吸の)間隔で、血が吹き出ているのがハッキリと分かった。
かなりの重傷を負っているのだろう。もし、その怪我が僕が飛び出した時点で既に負っていたものだったとしたら……。
多分、僕の顔から血の気が引いていくのが判ったのだろう、アスカはニヤリと笑った。
でも、動いたのは口だけ、もはや表情と呼べるものは作れない状態だった。
『……驚いたでしょ……こんな状態で……アンタと……やり合ってたのよ……。』
「……う……嘘、だろ……。」
『……嘘に見える?……フフフッ……スーツの中……凄いでしょうね……今脱いでも……裸とは……判らないかも、ね……。』
「……そ、そんな……事って……。」
『現実よ……あ……もしか……解剖学の……授業、出来るかも……。』
「……そんな……。」
『……分かった?……』
「……そう、か……ふふふっ……こんなアスカとやり合って……勝てない上に……ははっ……
馬鹿だよ……最低だよ……あはははっ……。」
僕は、瀕死のアスカと勝負をして、簡単に決着を付けられなかったばかりか、更にアスカを深く傷付けてしまっていたんだ……こんな奴を『最低』と言わずして何と言おうか?……
僕は悔しくて悔しくて仕方がなかった。このまま狂ってしまいたくなった。
『……バカシンジ……。』
それを見ていたアスカの表情が、口元から目に移ってきた。僕はそれを見て少し驚いた。
アスカの瞳に批難の色が見えたから。多分、僕の気の所為じゃないと思う。
『……じゃ……そのバカに負けた……私は何?……”人間以下”?……それとも……”畜生”って奴かしら?……』
「……な……何言ってるんだよ……勝ったじゃないか……僕を倒した……”エヴァ・シリーズ”を……。」
『……え?……何、言ってんのよ?……。』
「……その……持ってる槍で……そいつを……倒したんだよ……。」
『……あ……これ……え?……』
アスカは、少し目を見開いて、周りをキョロキョロと見回していた。どうやらアスカは、今の自分の状況を全く認識していなかった様だ。
と言う事は、さっきの弐号機は暴走していたのだろうか?そうならば、弐号機の動きがいきなり良くなっていた事にも納得がいく。
アスカは少し困惑している様だった。
『……ちょっ……こんなの……知らないわよ……。』
「……言ったよね……『暴走してても……倒した事には変わりない』って……。」
『……あ……そう来たか……そっかぁ……こう言う……事なのね……。』
「……分かった?……僕が負けた奴を……倒したから……アスカの……勝ち、だよ……。」
『……そ……ま、良いわ……これで……アンタとは……対等の……立場ね……。』
「……”対等”って……そんな訳……ないじゃないか……。」
『……そうなのよ……アタシは……”エヴァ・シリーズ”に……一度負けた……そして……アンタは……それに……勝った……』
「……うん……。」
『……でも……不意を突かれて……次は……負けた……。』
「……うん……。」
『……で……最後は……アタシが……ケリをつけた……違う?……』
「……違わない……その通りだ……。」
『……だから……1対1の……引き分けよ……。』
「……だから……対等だと……?」
『そう、よ……それに……勝負……決まってない、もの……。』
「”勝負”って……。」
『……アンタ、はアンタ……エヴァはエヴァ……別物……よ……。』
「……そう、だったの……?」
『……だから……アタシには……行く末を……決める権利が……アンタには……無いのよ……。』
アスカはそう言って眉間に皴を寄せた。アスカにとって今出来るだけ精一杯の凄みなんだと思った。
その証拠に、僕はドンと気圧されてしまったから。
『……モンク……あるの?……』
「あ……そ、その……無い……かな?……」
『……よろしい……さ……早く、しなさいよ……時間……無いんでしょ?……』
「え……。」
『……シャツ……真っ赤、じゃない……さっきの……あれで……でしょ……。』
「……みたい……だね……。」
『……アタシは……気にしないで……早く……アイツ等……殲滅ごほっ!!』
「あ、アスカッ。」
『……分かってるでしょ?……どう転んだって……アタシの……行く末は……一つなのよ……。』
「ぐすっ……アスカぁ……。」
『……何してるの、よ……。』
「……でも……ぐすっぼ、僕は……ぐすっ……アスカぁ……。」
『……。』
「……ぐすっ……。」
『……シンジ……一つ……言っておくわ……。』
そう言った途端、アスカの顔に苦痛の表情が浮かんだ。さっきまでの弱々しさは何処かへ吹き飛んでしまう程にハッキリと……。
そんなアスカの表情に僕は驚いてしまい、慌ててアスカに呼びかけた。でもアスカは、時々『くっ……』っと息を漏らすだけで、
何も応えてくれようとはしなかった。
暫くして、モニターの視界に別の物が入ってきた。それが、アスカの右手であると判った時に、
僕はアスカの表情の原因が判って安心した反面、動かせない筈の腕を動かしていると言う事に酷く困惑した。
アスカが何故そう言う行動に走ったのかが解らなかったからだ。
アスカは、僕にがくがくと震える指を突き付け、そして、ハッキリと判る程に不敵な笑みを浮かべて言い放った。
『……せ……戦闘、は……確かに……引き分け、たわ……で、でも……勝負……は……こ、これ、から……よ……。』
「う、うん……。」
『……だ、だか、ら……この……しょ、勝負、は……預けて……おくわ……くっ……い、良い、わね……。』
「……うん……分かった、よ……。」
『……こ、今度は……負け、ない……から……ね……。』
アスカははそう言うと、糸が切れた様に右手を下ろすと、眠る様に目を閉じた。
『……今度こそ……。』
「ぐすっ……アスカぁ……。」
『……早く……しなさいよ……アタシ……諦めない……からね……。』
「……ふふっ……アスカ……ぐすっ……。」
『……じゃ……お願いね……。』
さっきまで『もうダメ』って言ってた癖に……。
アスカの言葉に何故か温かい物を感じた僕は、そう言い返したくなったのを抑えて、アスカに微笑んで応えた。
アスカはそれを見て、ちょっと驚いた様な表情を目に浮かべてから、ゆっくりと微笑んでくれた。
それを最後に、通信モニターがまた”SOUND ONLY”の表示に戻った。それを切っ掛けにして、僕は行動を開始した。
自爆操作を行うコンソールは全て一箇所に集めてある。それを操作するには身体を反転させて、
シートの上に膝立ちになる必要が有った。けれど、今の僕には身体を捻る事すら困難な状態だった。
お腹の傷が相当深いらしい。痛みは余り感じないけど、力が入れられないのだ。
それでも必死に体勢を反転させ、コンソールに手を伸ばす。背後からは、時々アスカの声が飛んでくる。
それは、叱咤の言葉であったり、力が抜ける様な茶々だったり……。
僕は、アスカが側に居てくれている事に心地よい嬉しさを感じ、アスカを巻き込んでしまうと言う最悪の結果に
終わろうとしている事に深い悲しみを感じ、こんな結果を招いた自分自身をひたすらに呪っていた。
朦朧とする頭をフル回転し、力が入らずに唯震えているだけの手をやっとの思いで制御しながら、コードナンバーを打ち込む。
何とか上手くいったらしく、自爆装置のレバーが出てきた。僕はそれを見て、
『本当にこれで最後なんだ……』と言う思いが沸き起こってきた。
やっぱり、僕一人だけの都合じゃ……何とか僕だけで……。
「……アスカ……。」
『……何よ……。』
「……シンクロ……切れないの?……」
『……ムダね……最初ね……アンタが、出る前ね……電源、落ちてたのに……凄く……痛くてさ……フフッ……何、言ってんだか……。』
「……切れ、ない?……」
『……御名答……。』
「……ゴメン……。」
『……何が、よ?……』
これで最後の糸が切れた、僕はそう思った。何もかも終わりだと思った。
だから、こんな事が言えたんだと思う。
「……出来れば……こんな風に……ならない……出会いが……したかったね……。」
喩え、最悪の言葉が返ってきても、今となっては、僕にはどうでも良い事になってしまったから……。
『……同感……。』
少し長めの間を置いて返ってきたその言葉は、僕の心を大きく揺さぶった……僕は……僕は……。
「ぐすっ……有り難う……ぐすっ……アスカ……。」
僕は泣きながらそう呟くと、一気にレバーを引いた。でも、レバーはビクとしなかった。
どうやら力尽きてしまった様だ、一歩遅かったか……。
僕は、自分の身体がレバーを握ったままの体勢で崩れ落ちていくのを感じながら、『最後の最後まで……情けない奴だなぁ』と思った。
「……ははっ……。」
もう目も開けていられずに、唯ひたすらに自分を呪った。
「……ち・く・しょ……。」
その時、暗くなっていた視界が急に白く輝きだし、温かな感じが身体を包み込んでいくのを感じた。
その感覚は、段々と自分が広がっていく様な、自分が溶けていく様な、そんな感覚に変わっていった。
薄れていく意識の中で、ふと、誰かが側に立っている様な気がした。
『……もう良いの?』
その誰かはそう聞いてきた。
『……もう良いの?』
「……良いんだ……もう……良いんだ……嫌だから……こんな……嫌いだ……こんな……なんか……。」
『……そう……。』
……そうさ……嫌いだ……何もかも……
<後書き>
Guten Morgen ! Guten Tag ! Guten Abend !
いや、何となく……(苦笑)
えっと、今回の話と前の話とは元々一つの話だったんです。つまりは、膨らみすぎたから真っ二つ、と言う訳ですな。
キツイ内容の話だと思います。こう言うのを”痛い系”って言うんでしたっけ?
EOEの反発としてこの世界に足を踏み入れた儂としましては、こう言う状況から果たして立ち直らせる事が出来るのか!?と言う事に全霊を傾けなければならぬ!等と思い込んでいましてね……。
まぁ、付いてこれる人は少ないでしょうね。
次回は時計の針を思いきり進めたいと思います。
でも、戦闘もそうだけど、交渉も下手ッピなのにねぇ……上手く押し切ってくれるかのう……(苦笑)
やっぱり、エヴァは夏が良いらしいです。この時期になると進行ペースが速くなって、12月ごろまで維持するようです。
ふむ、休み期間の方が長いのぉ(苦笑)
ところで、「メールの返事貰ってないっ!」って人、いますか?
そう言う類いの事故には遭遇した事がないもので……最近「もしかしたら?」と不安になってきました。(^_^;)
もしいらしたら、お手数ですけど再送信願えればと思います。
「コミケ」だ「ワンフェス」だと、何だか年を重ねていくに連れて、限定品狙いの強行行動が目立ってきましてね……ま、大丈夫でしょう(笑)
では、また御会い出来ます様に……。
跡見さん、本当にありがとうございました!!
跡見さんへの感想メールを!
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