「どうだった?」
何度も繰り返される質問。
「……駄目でした……。」
「やっぱり駄目か……。」
そして、何度も繰り返される答え。
第弐発令所では、ここから脱出するためのルートの探索と復旧が必死に行われていた。
だが、判った事は、全てのルートが塞がっている事、そして、それらの復旧が不可能である事、それだけだった。
「……これで……万事休すだな……。」
発令所の全員は悟った、もはや、特務機関『NERV』に生き残る道は無いのだと言う事を……。
「……俺達には地獄しか行き先は無いみたいだな。」
「そうだな……あんなモノ見せられながら、何も出来やしない……助けに行くって言ったのに……。」
「助けに行くどころか、俺達が助けを乞う立場なんだよな。」
「……どうして……どうしてよ……あたし達が何をしたって言うのよ……どうしてこんな目に遭わなきゃいけないのよ!!」
「……『何もしなかったから』、ではないのかね?」
「「「!?」」」
Tomi's EVA vol.30
Series『Zweigbahn』
その6.5.1
回線のダメージなのか?電力供給が滞ってきているのか?、モニターは完全に作動せず、
ノイズ交じりの映像と判読不可能な音声が流れているだけであった。
だが、発令所の誰もが、そのモニターが何を伝えているのかを知っていた。
唯消えゆく、そんな絶望に向かう為だけの、余りにも哀しい争いの一部始終を伝えていると言う事を。
それを、直立したまま見つめていた副司令・冬月は、さっきの発言はどう言う事かと疑問の眼差しで見上げているオペレーター達に、
そのままの姿勢で再び語り始めた。
「……我々は、使徒から人類を守るのが使命だった。
君達‥‥赤木君や葛城君を含めてだな‥‥君達はその使命を果たす為に邁進していた。」
「「「……。」」」
「ところが、それがNERVの全てではなかった。
薄々感づいているとは思うが、実際は一部の人間の野望を果たす為の実行部隊の役目を担っていたのだ。
君達はそれに翻弄され、何時しか自分を護るだけで精一杯になっていた。
お蔭で周りの変化に目を配る事が出来なくなっていた……幾つかは見逃していたのだよ、終局への兆候を。」
「必死になってて、全然気が付かなかったって事か……。」
「いや、気が付いても、何も出来なかったろうな……どうすれば良いのか、解らないんだからよ……。」
「!……そうか……。」
「その、見逃していた故の結果がNERV壊滅の今この時……そして、あの子達だよ。
野望を果たす為には、初号機パイロットの精神を”壊す”必要が有る様だ。だから、彼を追い詰める様に事態が動いていった。恣意が有ったかどうかは別にしてな。
そして、弐号機パイロットは、恐らく、彼の心に止めを刺す為の”生け贄”とされる筈だ。
彼の最も近しい存在となっている彼女を、彼の目の前で……。」
「……そ……そんな……そんな事って……。」
「……そうか、それで奴等……。」
「弐号機ばかり狙ってたんだ……。」
「……尤も、気付いていたところで、何か策を講じる事が出来たかは、甚だ疑問では有るがな。」
「何とかしたいと思った時にはもう何も出来ない……。」
「……”何もしなかった罪”……これがその報いか……。」
「もう、何もさせてはくれないのね……。」
それからは、誰も口を開こうとせず、唯呆然とモニターを眺めているだけだった。
盛大なノイズ音が飛び交う発令所。そのノイズに埋もれるかの様に小さく鳴ったノートパソコンのアラーム音に、
何故か伊吹は気が付いた。そして、表示されていた内容にショックを受けた。
「そ、そんな……”エヴァ・シリーズ”……再、起動……。」
「ええっ!?」
「何だって!?」
「あ……ちょ、ちょっと待って……確認は一機だけね。それも反応はかなり微弱だけど、確かに動いてるわ。」
「……嫌な予感がするな。」
「ああ、そうだな。」
その予感は的中した。”エヴァ・シリーズ”が放ったロンギヌスの槍は初号機に命中。暫くして、シンジのものと取れる絶叫が響いた。
コンソールを殴り付ける青葉、歯ぎしりをしてモニターを睨み付ける日向、
蹲って耳を塞ぐ伊吹、険しい表情で直立する冬月。
それぞれが、傍観者以外に選択肢が無い自分達を腹立たしく思っていた。
そして、アスカの殺気に満ちた叫びと共に突進する弐号機、それを止めようと必死に追い縋ろうとするシンジの初号機。
その時、青葉が声を上げた。
「ターミナルドグマより正体不明の高エネルギー体が急速に上昇中!」
「ATフィールドも確認!パターン青です!!」
「まさか、使徒!?」
「違う!これは!……人間!?」
その日向の声とほぼ同時に、白い人型の巨大な物体が、まるで幽霊の様に障害物を通り抜けながら上昇していった。
恐怖に狩られた表情でそれを見ていた伊吹はポツリと呟いた。
「……綾波……レイ……。」
モニターの中では、初号機が咆哮を上げていた。弐号機の傍らに立ち、まるで泣き叫ぶ様に、繰り返し吼えていた。
さっきのショックが抜けきれず、動けなくなっていた伊吹に変わって、青葉がノートパソコンを操作する。
「弐号機、活動停止……良くこんなダメージで動いてたな……初号機は……!、
コアのエネルギーレベル上昇中!このままだと臨界まであと4分!!」
「……うむ、そうか。」
「初号機と”エヴァ・シリーズ”のS2機関が纏めて爆発したら……。」
「ああ……それこそ、”終わり”だな……。」
「そんな……あたし達……一体何の為に今迄……あたし達って一体何だったのよぉ!!」
「……解るもんか、誰にも!」
「そうだよ……まだ答えは出ちゃいないし、まだ出せないんだ……。」
「……諸君。」
唐突に冬月が口を開いた。手にはマイク。どうやら、本部施設全館に呼びかけている様だ。
「私は特務機関NERV副司令の冬月だ。本部施設内の諸君、どうか聞いて欲しい。
いよいよ選択の時が迫ってきた。これから起こる事が、人類を滅ぼす『サード・インパクト』となるか、
それとも唯の自然災害となるか。それは、一人の少年に委ねられる事となるだろう。
だが、忘れないで欲しい。喩え何が起こっても、自分の行く先を決めるのは自分自身だと言う事を。君達が望めば、その通りに事は進む筈だ。
もし、君達に”生きる”意志が有るのなら、君達に世界を建て直したいという意志が有るなら、私に付いて来て欲しい。
……松代で会おう。以上だ。」
「初号機、臨界突破!!」
モニターには、火球へと姿を変えた初号機と、それを包み込む様に両手をかざす”綾波レイ”が映し出されていた。
火球は弐号機を飲み込み、”エヴァ・シリーズ”を飲み込むと、更に加速を付けて膨らみ続ける。
そして箱根山を完全に飲み込み、なおも膨らみ続けていった。
それを映し出しながら、モニターは強烈な光の中に消えていった。第弐発令所共々……。
<後書き>
こん**は。
今回は、『デシマル5(ファイブ)』シリーズのお話です。
一話完結を目指す意味で”.5”の数字を付けたのですが、今回ばかりは途轍も無く伸びそうな気がしたので、
やむなく更に”.1”を追加しました。
つまり、次は”6.5.2”。まるで、プログラムのヴァージョンナンバーみたいだ(苦笑)
次の話から、戦後編に入ります。舞台は箱根から長野・松代へとテレポート!
このために皆消し飛ばした様なもんです(笑)
もう少し厳しい話が続くと思います。その辺を了解しておいて下さい。
又、夏が過ぎていきます。コミケ&オフ会もワンフェスも終わりました。
今はそれらの収穫物に刺激を受けながら進行中と言った按配(あんばい)です。
この秋は、今までみたくマイペースと言う訳には行かない様です。そろそろ掛からなイカンのやなぁ。
そろそろ(精神的に)追い込んでいかなきゃね……。
では、また御会い出来ます様に……。
跡見さん、本当にありがとうございました!!
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